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「出会い」で人は変わる。ソウル留学で得た大切なもの

「私を変えたあの時、あの場所」

~Vol.11 韓国 / ソウル大学大学院

本コーナーでは、東京大学にゆかりのある先生方から海外経験談をお聞きし、紹介していきます。

今回は、河崎 啓剛先生に韓国で留学されていた当時のご体験をお伺いしました。取り上げた場所については こちら から。

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将来が見通せず、不安も。決意とともに留学に臨む

―2008年から2016年にかけて、ソウル大学大学院に留学されています。留学のきっかけなど教えてください。

河崎先生: 留学を決意した頃は、いろいろ将来のことが見通せず不安な時期でした。動機は正直に白状すれば、研究上の必要というよりは、「言語に関する仕事がしたければせめて修士号くらいは必要そうだ。どうせなら交換留学で行ったソウル大学で、もう一度本格的に留学してみたい」というような、あまり学術的とは言えない部分が大きかったように思います。

言語学専攻で、特にアジアの諸言語や言語の歴史的変化に興味を持っていましたので、「よし、自分は韓国語でメシを食っていくぞ!」という決意とともに、ソウル大学大学院 国語国文学科で韓国語の古語を専攻することを決めました。


「先生をとても敬う」文化に驚く

―韓国は日本と文化的・地理的に近い国ですが、カルチャーショックなどありましたか。

河崎先生: 私の場合、すでにソウル大学の言語学科で交換留学経験があったにもかかわらず、最初とても驚いたのは、「先生にものすごく敬意を払う」文化でした。

例えば、学科の行事などで先生がいらっしゃると、座って談笑していた学生たちは一斉に起立し、挨拶をします。カラオケに行けば(韓国人は歌が上手)、弟子たちは先生のお好きな歌も熟知しており、先生のためにテキパキとお膳立てします。長幼や師弟関係を重んずる儒教文化とは言いますが、最初は少々面食らって「すごいところに来てしまったなあ」と思ったものです。

―それほどまでとは! 驚きです。

河崎先生: もちろん、そういった文化は、学術の世界では権威主義につながるとして批判もされます。この話を先輩たちにすると、みんな、「以前はもっとすごかった」と言います。今はグローバル化の潮流の中で、そういった文化もどんどん薄れて行く傾向にあるようです。

しかし、その中で適応し、本気で勉強し始めるようになると、自分の学部生時代には周囲の先生方に対してずいぶんいい加減な態度をとっていたように思われ、とても恥ずかしく、申し訳ない気持ちになりました。権威主義や盲目的従順には抗いたいと思う一方、「敬意を払うべきこと」がきちんとわかる人間になりたいと思うようになりました。


善き「出会い」と、その種を育てること

―韓国文化に触れ、新たな視点を得られたのですね。ほかにもご自身が「変わった」と感じた経験はありますか?

河崎先生: 最初に申し上げた通り、私の留学の始まりの動機は、学術的というよりは自己都合的な部分が大きかったように思います。

しかし、特に恩師を始めとする善き先生方、善き学友たちとの「出会い」が私を変えてくれました。最初は「まずはここでちゃんと認めてもらいたい」というほどのモチベーションでしたが、修士論文を書き終え、博士課程に進学した頃でしょうか、いつしか私は「本気」になって、研究者の道が自分のライフワークだと信じるようになりました。

「出会い」は本当にお陰さまとめぐり合わせだと思いますが、私も純粋に一生懸命でしたので、本気で誠心誠意取り組むことが、「出会い」を実らせてくれたのかもしれないと思っています。

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▲2009年、留学していた当時の河崎先生。授業の合間にご友人がポラロイドカメラで撮影してくれたとのこと。


外国人というマイノリティを経験して得た気づき

―海外体験が帰国後も活きていると感じることはありますか?

河崎先生: 海外にある程度長く住んで、自分が「外国人」として生活するという経験は結構大きいと思います。「外国人」というマイノリティとして、良いことも悪いこともいろいろ経験します。

自国だけで生活していたうちは、何か「外国人」という属性を持つ人々がいるかのような変な錯覚があったかもしれません。でも、当たり前のことですが、彼ら/彼女らの本国に行けば、自分の方が「外国人」なのであって、それだけのことなんですよね。自然と「違い」に対して寛容になり、むしろその「違い」こそが魅力で、面白いと思える感覚が染み付いた気がします。


異文化体験は、人を変えてくれる

―まさに海外に出て得られた気づきですね。最後に、学生たちにメッセージをお願いします!

河崎先生: 私は、数度の海外経験によって本当に大きく人生が変わったと思います。そもそも最初、理Ⅰの学生だった私が言語学を専攻することになった経緯からして、夏休みに二カ月間オーストラリアに行ってみた海外経験が大きな転機となっています。異文化体験というのは、それだけ人を変える力があるのだと思います。

どこに落ち着くかは、最初はよくわからなくても良いんだと思います。「何かをやりたい」という気持ちを大切にして、ぜひ「本気で」挑戦してみてください。

―ありがとうございました!

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