歯医者さんで「大手術」を経験した話。親知らずをなめたらいかんぜよ!
「そうかっ。これがあのときの…」
私の脳裏に30年以上前の記憶が蘇りました。
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あれは20代のとき。虫歯の詰め物がとれてしまったので、近所の歯科医院に駆け込んだのです。
「ほかに悪いところがないか診ておきますね」
詰め物をつけ終えると院長先生らしき男性の歯科医師が、私の奥歯をチェックしながら
「こっちの親知らずは変な方向に生えてるね。治してもいいけど大手術が必要になるよ。今のところ問題はなさそうだし、様子を見た方がいいかも」
というようなことを言ったように記憶します。
「大手術だなんて大袈裟だな」と思いつつ、時間もないからその場での治療はやめておきました。
それは突然やって来た!
私はそんな感じで歯科医院にいくのは、虫歯の詰め物がとれたときくらいです。
時は巡り還暦を迎えようかという頃、また詰め物がとれたので近所の歯科医院を訪れました。約30年前に行った歯科医院とは100キロほど離れた、全く別の歯科医院です。
とれた詰め物を持参したところ、まだ大丈夫だとすぐにつけてくれました。
「ほかに悪いところがないか診ておきますね」
その歯科医院は評判が良く、男性の院長先生をはじめ数名の歯科医師と多くの歯科衛生士が忙しく働いています。
担当してくれたのは、なかでも腕利きらしいベテランの“マザーテレサ”を思わせる女性歯科医師。
私の歯並びを撮ったレントゲン写真を見て「四隅とも親知らずが残ってますね」と説明してくれました。
親知らずは放っておくと口腔がん(こうくうがん)の原因になりやすいそう。
「できれば早いうちに抜いておいた方がいいです」
「じゃあ、お願いします」
虫歯の詰め物をすぐにつけてもらって安心した私は、この際だから親知らずも抜いとくかと思って承諾したのです。
親知らずを抜いた後、数日間頬が腫れることがあるため、数回に分けて抜くことになりました。
最初に取りかかったのが、右下の親知らず。
「ここは親知らずが横向きに生えているんですよね~」
レントゲン写真を見せながら説明すると
「一番やっかいそうだから、この親知らずから抜きましょう。いいですか?」
嫌ですと拒否する理由もないので、歯茎に麻酔注射を打って治療が始まりました。
抜歯は経験があるので、せいぜい20分ほどで終わるかと高をくくっていたところ、どうも様子がおかしい。
「一発では抜けないから、歯を分解しながら、取り出していきますね」
心なしか“マザーテレサ”先生から緊張感が漂ってきたような。
「麻酔が切れるから、もう一本打っときます」
麻酔のおかげで痛みはあまり感じませんが、歯をゴリゴリしたり、ノミみたいなのでゴンゴン削る気配がわかりました。
「かなり時間がかかりそうですが、大丈夫ですか?」
「ふぁい」
口を開けた状態なので、情けない声で返事する私。
「麻酔が切れそうなので追加します」
ギシギシ、ゴリゴリ、ガンガン、グリグリ
ここからは似たような描写が続くため割愛します。
「終わりました。お疲れさまでした」
“マザーテレサ”先生が額の汗を拭いながらホッとした顔で言いました。
「これが抜いた親知らずです」
トレー(?)に乗せたそれを見せられて私は目を疑いました。
とても歯とは思えない、全体が真っ黒なまるで炭のようなカケラが4つ転がっていたからです。
しかも時計を見てみると、4時間半かかったことがわかり、それにも驚きました。
院長先生が、通りすがりに“マザーテレサ”先生の耳元で
「お疲れさん。大手術やったね」
と労ったのを聞いて、一気に時が戻りました。
「これが、あの時言われた『大手術』なんだ」
30年以上前に、100キロ離れた全く別の歯科医院で院長先生から言われたことを思い出したのです。
定期的な歯のメンテナンス
その後、別の日に数回かけてほかの親知らずも抜いてもらったのですが、大手術に比べるとすんなり終わった感じです。
“マザーテレサ”先生からこう言われました。
「定期的に歯をメンテナンスすることをおすすめします」
「はい」
私は大手術をやりとげた腕前を知っているので、素直に受け容れたのです。
今でも一か月に一回程度、歯のメンテナンスに通っています。
私はコーヒー好きなので、ステインをキレイにとってくれるのも助かっています。
何より、先生が最後にチェックして「大丈夫ですね」とOKを出してくれたときはホッとします。
以上、個人的な歯科医院での体験談になってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
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