【読書】『秋』~美しい光景は悲しみも抱える~
かこさとしさんの未発表作品『秋』です。かこさとしさんというと、だるまちゃんシリーズが印象的で、『だるまちゃんとかみなりちゃん』をよく読みました。
作品数は600を超え、どの作品も、子どもに寄り添ったものです。
今回、紹介する作品は、最初の原稿執筆が1953年、構想68年をかけたオリジナル作品です。
最初の数ページは、かこさとしさんの大好きな秋の風景が続きます。それから、秋が嫌いになってしまった時期があり、そのときのことを絵本で語っていきます。
かこさんが、高校生のころに体験した戦争のお話でした。
絵本の表紙にちょっと驚くかもしれませんね。火のついた飛行機から、ひとが落ちてくる様子です。敵にやられた日本兵が落ちてくるんです。
秋の美しい青空に、似合う風景ではありません。
空を飛ぶのは、モズやヒヨドリ。空を舞うなら、紅葉や銀杏の葉。空をかすめるのは、野焼きの煙。青空に広がるなら、ひつじ雲。
そういったものがうれしいはずです。
あまりに、辛い出来事が起きたので、かこさんは秋が嫌いになってしまいました。そんな秋ですが、戦争が終わった後もめぐってきます。
何度も何度もめぐってきます。
美しいと思える秋が、これからも何度もめぐってきますように。
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