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【読書】『耳なし芳一』~印象に残ったお話~

 昨日、夏至を迎えました。どんどん夏らしさが増えていきます。蚊取り線香、風鈴、打ち水などいろいろありますが、夏らしさのひとつに、怪談話やホラーがあるでしょうか。

 そろそろあちこちで、心身が冷えるような怖いお話が増えていきます。テレビでもラジオでも、本でも、誰かとの会話の中にもまぎれこんでくるでしょう。

 子ども向けのアニメや物語にも怖いお話はあります。

 どんなお話が印象に残っているでしょうか。

 私は、日本昔なら、『耳なし芳一』が、インパクトがありました。知っている方も多いでしょうね。

 下関の阿弥陀寺にひとりの琵琶法師がいました。幼いころより目が見えなかったものの、琵琶の腕前は師匠をしのぐほどでした。琵琶の腕前が良いのであれば、芳一は、琵琶を頼りに暮らしていくことができるでしょう。

 ですが、芳一の琵琶の腕前は、生きている人間にだけ喜ばれるものではありませんでした。

 琵琶の稽古中、使者がやってきて芳一に弾き語りをしてほしいと頼みます。目の見えない芳一は、その使者がすでに亡くなっていることに気がつきません。

 琵琶の弾き語りに関して、誰にも言ってはいけないと言われていましたので、和尚様にも話しませんでした。何も言わずに出かけてしまう芳一を心配した和尚様は、芳一の後をつけていきます。場所が安徳天皇のお墓の前であること、まわりには死者の霊がいることを知りました。

 和尚様は芳一に事実を教え、連れ去られぬよう芳一の身体に経文を書きました。身体中すべてに書いたと言いたいところですが、耳には経文を書きませんでした。

 亡霊は芳一を連れて行こうとしますが、経文が書かれているため芳一の姿が見えません。ただ、耳だけがぼんやりと浮いています。困った使者は、芳一の両耳だけ持ち去ります。

 それ以来、亡霊につきまとわれることはなくなり、両耳を失った芳一は耳なし芳一として琵琶の弾き語りを続けていきます。

 両耳を取られてしまう映像が、子どもながらに怖かったですね。

 ナレーションに雰囲気もあり、平家の落ち武者たちの無念さや辛さも伝わってきます。お墓の暗い雰囲気もまた、物語を盛り上げています。

 安徳天皇、平家の落ち武者、平家物語。幼いころは、『耳なし芳一』の物語にひそむ、哀しい物語を知りませんでしたので、耳を持っていってしまった亡霊を悪い奴だと思っていました。

 成長してからは、源平合戦のことを学びます。幼い安徳天皇が亡くなったことも、失意の中で多くの武者たちが命を落としたことも知ります。

 亡くなっただけでなく、なんとか生き延びようと、山奥の洞窟に隠れ住んだなどのお話も聞きました。実際に、観光地として残っていますね。どうやら、南九州に落ちのびた武者たちが多いようです。

 このような話を聞きますと、物語に対する印象も変わってきます。


 夏草や兵どもが夢の跡

 俳人、松尾芭蕉の有名な俳句ですが、この句がしみじみと思い出されます。

 芳一の琵琶の音に、使者たちの心が鎮められ、慰められると良いですね。日本の夏は、お盆もありますので、鎮魂の意味合いもあるのかもしれませんね。

 


 

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