どこにもない赤〜失われつつある言葉のなかで〜
【どこにもない赤】
熾火のような深い赤が
赤褐色の大地を染め上げる
それは
ことばのない色
ここは
ことばのない場所
東の空に祈りながら
地球の音に耳を澄ませる
風が吹きぬけて
過去の音楽を聴く
そのなかには
数年前にこの地に置いた
わたしの音もある
ここは
過去と現在
そして未来の交差地点
私だけの秘密の場所
*
書物に踊る文字たちと
馬の蹄や織り機のリズムが
わたしのなかでひとつになり
内側にメロディが生まれた
ときにそれは
記号の体系となり
遠い場所に虹をかけ
ときにそれは
そのままのかたちで
指先から溢れ出す
*
どこにもない赤
どこにもない色
どこにもない場所
わたしは今日も歩く
失われつつある
言葉のなかを
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