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GoogleもデスクトップPCを破壊しようとしているのかもしれない

先日、AppleのVision Proについて「デスクトップPCに対する破壊的イノベーションだ」という記事を書きましたが、GoogleはGoogleでデスクトップPCの市場を削り取ろうとしているような情報が入ってきました。

Google「Pixel 8」は〝Windowsの時代〟を終わらせる

「Android Authority」によると、「Pixel 8」と「Pixel 8 Pro」のUSB-Cポートは映像出力規格DisplayPortをサポートするとのこと。

ディスプレイ出力へ対応したスマートフォンはすでに存在していますが、AppleやGoogleはこの機能を搭載してきませんでした。とはいえ、iPhoneのLightningポートはそもそもディスプレイ出力可能な能力がないものの、USB-Cポートはメーカー次第でこの機能を搭載することができます。

~中略~

GoogleはすでにWindowsやMacの競合とも言えるChrome OSを持っており、Pixelスマホのディスプレイ出力への対応とデスクトップ・モードの搭載はかなりインパクトがあるものです。「Pixel 8」のデスクトップ・モードがChrome OSのようなものであれば、スマホがノートPCにとって変わる大きなきっかけとなるかもしれません。

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なかなか大風呂敷を広げた感じのタイトルですが、記事の内容は良い指摘だと思います。GoogleにはChromeOSやAndroidに加えてFuchsia等、OSの開発についてはかなり力を入れている(というか手広くやっている)印象です。そもそもLinuxベースで、Androidリリース当初からウィジェット機能があったりホーム画面の設定がユーザ任意だったりとカスタマイズ性については自由度高めがGoogleのスタンスでした。

これがデスクトップモードの導入に寄与しやすいだろうというのは想像に難くない。それに加えて、カスタマイズ性だけでなく、ChromeOSはかなり完成度の高いOSです。国内ではそこまででもない一方で米国だとmacOSを上回るシェアを実現しているという話もありますし、「デスクトップ」という概念についてのノウハウをしっかり持っているわけです。

WindowsもMacも「古き良き」です。Macはエンジニアやデザイナーにとっては手放しづらいOSの性質だったりしますが、Windowsはどうでしょう。最近だとデフォルトでUbuntuが使えるようになっていたりといった姿勢は、柔軟であると同時にやはりプロダクト提供者としての底が見えつつあるような印象も抱きます。(Microsoftという会社の底、とは言いません、Azureもありますし、柔軟であることは評価できます)

デスクトップPCという概念はまさにレガシーです。デバイスは刷新し続けていますが、ハードウェア的な進化は、キーボードとマウスという入力方式、画面を見るという出力方式からは逸脱していません。Vision Proはそこに対する隙間産業的な破壊的イノベーションを意図しているのだという指摘を別の記事で書きましたが、Pixel8のデスクトップモードは、異なるアプローチでデスクトップPCという概念に一石を投じようとしている印象です。

10年ほど前から破壊的イノベーションの立役者として謳われてきた「コンバージェンス」が、ChromeOSというノウハウを獲得しているGoogleがついに実現してしまうのかもしれません。もともとあった議論なのは間違いないですが、それはARデバイスも同じですから、市場を席巻するのか、という意味での一石が、一石というか一岩が、投じられるかもしれません。

もっと言えば、10年前は今ほどCPUのスペックは高くなかった。リモートワークもここまで浸透していませんでしたし、完全ワイヤレスイヤホンというシームレスなデバイスは充実していませんでした。状況は変わりつつあります。Googleはデバイスの準備はかなり早い段階から行いますが、機が熟さないとリリースしないという特徴があります(機を創るのがApple、じっと待つのがGoogle、という感じがします)。DPモードの搭載は、Pixel8のリリースが機だと解釈したのかもしれません。


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エンジニア/デザイナーが求めるスペックには至らずとも、ドキュメンテーションやミーティングに使う程度のスペックであれば、ハイエンドスマホで十分です。これは、世界中に存在するほとんどのオフィスワーカーの仕事がスマホだけで完結するということを示しています。

オフィスの自席ではデスクトップモードで、移動中はスマホの形で仕事ができるわけです。完全ワイヤレスイヤホンで常に音声が聞けるので、会議中にコーヒーを取りに行くのもラップトップを片手に持つ必要もなくシームレスに。Google Slidesの参照も、自席であれば大画面で、移動中はスマホの画面で。チャットでの会話も、自席であればキーボードで、移動中はフリック入力で。帰宅したら再び自席に繋いで仕事を続けることもできます。

仕事でなく、映画を見るにも同じです。LINEやTwitterも同じ。すべてが一台で、シームレスに実現できます。あれ?これ、パソコン必要ですか?

もっと言うと、GoogleはVision Proとは異なる、外での利用を想定したGoogleレンズを開発していることが明かされています。本当に外で利用できるレベルになるかは分かりませんが、母艦をスマホとしつつ、デスクトップモードならぬレンズモードが実装されたとしたらどうでしょう?移動中でもミーティングに参加したり、映画を見たりすることができる。板状の画面は最強ですが、このシームレス具合をたった一台で実現するというのは、ウェアラブルデバイスの外観云々のハードルをぶち壊しかねないほどの利便性、そのポテンシャルを感じさせてくれます。

(※補足で蛇足ですが、Vision Proの前にOculusがあったことも、Pixelの前にSamsunがデスクトップモードを搭載していることも知っています。知っていてなお、この2社の持つハードウェアとUXに対するノウハウ(Apple)、サービスというものとOSに対する造詣(Google)には全く叶わないだろうという意図で書いています)


Appleはいつもフロンティアです。スマホもタブレットもイヤホンも(ノッチも)。きっとVision Proもそうなるでしょう。デバイスから、生活スタイルそれ自体を刷新するような提案を仕掛けてくる。ワクワクさせてくれます。

Googleは必ずしも先駆者ではありません。検索エンジンも後発ですし、AndroidもSinという意味ではiPhoneより後発です。でも、今の生活で必要なものを最適な形に纏めたり、スマートでシームレスなサービスを提供する形のアプローチはGoogleのほうが上手だと思っています。痒い所に手が届く。

この2社が、全く違う形でですが、デスクトップPCに対する攻撃というか、次のステージへの促しを仕掛けているというのはとても興味深いなと感じます。

Windowsは古き良き、で、OS、Officeソフトウェア、自社製ハードウェアと範囲を広げてきてはいますが、どうしてもAppleとGoogleのイノベーションに追いついているとまでは言えません。近い将来、向こう3年間ほどで、何か大きな革命が起きるかもしれません。

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