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小説:人間vsゴキブリ。逃げ回る人生に終止符を。(4) 〜 戦い 〜

(前回はこちらから)

 陽の当たる場所を好まず、自らが陰となって生きていく人生、いやゴキブリ生も悪くはない。そう、私はゴキブリ。

 今はそんなことを言っている暇はない。
 男に見つかってしまった。しかも急に電気が点いたので、眩しくて動けなくなってしまっている。

「おい! スリッパ! スリッパ!」

 えっ? あの殺虫剤じゃないのかよ? スリッパはまずいぞ!

「タケルくん、ハイ!」
 と言って、若い女は男にスリッパを投げ渡した。

「よし!」
 男は床の上で身動き出来なくなっている私に叩きつけようとスリッパを振り上げた。

 その時、体が動けるようになったのを感じた。

 今だ!

 私は壁をよじ登り羽を大きく広げ、男の顔に目掛けてジャンプした!

「ギャオォォォ!」

 男はベッドの上に後ろ向きに倒れた。

 私は振り払う男の腕に当たり、倒れた男の脇腹近くに倒れてしまった。
 大丈夫だ。まだ動ける。

「キャー! タケルくん、後ろ! 後ろ!」
 女が発狂したように叫ぶ。

 男は一旦立ち上がったが、ベッドの上だったので体勢をぐずしてしまった。
 そして、ベッドの上でよろつく素っ裸の男の立派なお尻が私の方に向かってきた。

「ワォ!」

 男のお尻が倒れてきた。私は瞬時に男のお尻の割れ目に入り込んだ。

「タケルくん! お尻! お尻! 踏んづけたよ!」

「なんだって!?」

 再度男が立ち上がった。私は男のお尻の割れ目に挟まっていた。

「挟まってる! 挟まってる! ゴキブリが挟まってる!」

「なにぃ!」

 男はお尻の割れ目に手をやり、私を握るとドアの方に投げつけた。

 私はなんとか着地ができ無事だった。そして必死にバスルームへ逃げた。
 その時、体が軽くなっていることに気がついた。
 卵鞘を産み落としている。

 男のお尻の割れ目に。

 湿気のある男のお尻の割れ目に。

(つづく)

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