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代走               ――画像しりとりはじめました(#124)

(#123) 信じるか信じないかはアナタ次第→「だい」→代走

ヘイヘイヘイ! リーリー! ヘイヘイヘイ!



 体育大会ソフトボール男子決勝。
1点を追う3組の攻撃、最終回の7回表、2死から佐藤くんが四球で出塁。

ここで、快足が自慢の田中くんが満を持して代走として起用される。

「ここは、俺に任せとけ(o^-')b♪」

田中くんは颯爽とベンチを飛び出すと、戻ってくる佐藤くんと元気よくハイタッチを交わして塁上へ。陸上部のエースとして校内では断トツの駿足を誇る田中くんだけに、大事な同点ランナーとしての期待がかかる。

 そして続く打者は大谷くん。この試合もここまで3打数3安打、2ベースヒットが2本。1塁ランナー田中くんの足を考えれば、この日3本目の長打が出たら、それは一気に同点のケースといえる。

 否応なしに期待が高まり、盛り上がる3組ベンチ。この日打たれまくっている大谷くんを打者に迎え、一塁には駿足の田中くん。相手投手も投げづらそうにしていたが、覚悟を決めるようにセットに入った。
 緊張の一瞬である。

 しかし、ここで、思いもかけないことが起こった。
 代走の田中くんが、ピッチャーを挑発するかのようにトリッキーな動きを見せながら大胆にもリードをとり始めたのだ。

「ヘイヘイヘイ! リーリー! ヘイヘイヘイ!」

アウト!

何ッ!

 審判が右手を高く突き上げて田中くんを指差し、試合はあっけなく終わった。

 小学校の頃から陸上ひと筋の田中くん、野球のルールも若干アヤしいところがあったが、ソフトボールのルールはもっとアヤしかった。

 彼は、ソフトボールではランナーがリードをとってはいけないというルールを知らなかったのだ。

◇ ◇ ◇

 ソフトボールは、日本では学校の学習指導要領の【球技】(ベースボール型) に記載があり、学校の体育の授業として取り入れられているため、比較的ポピュラーな球技と言っていいだろう。野球をやったことはなくても、ソフトボールはやったことがある、そういう人も多いのではなかろうか。

 また、ソフトボールは、日本では最もポピュラーなスポーツの一つである野球とも共通点が多いため、その意味でも親しみやすいスポーツともいえる。

 そうはいっても、ボールの違い、グラウンドの大きさの違いといったハード面での違いもさることながら、ソフトボールでは、ルールの面で野球との大きな違いがいくつかある。

  • 投手の投球方法:野球では上手投げ、横手投げ、下手投げとバリエーション豊富だが、ソフトボールでは下手投げオンリーであり、また、投げる時に肘と手首が体から離れてはいけない❌

  • 一塁ベース:ソフトボールは野球に比べ塁間の距離が短く、とりわけ一塁ではクロスプレーが頻発するため、一塁だけはダブルベースという守備側が触塁する白いベースと打者走者が触塁するオレンジ色のベースの2つのベースが設置されている。

ダブルベースでケガ防止♪
  • リード禁止:これも野球と比べ塁間が短いことに起因するルールだと思われるが、ソフトボールではピッチャーの手からボールが離れるまで塁から離れることはできない❌ もし、投球前に離塁した場合はアウトとなる👍 ちなみに、たまに誤解されることがあるが、リードは禁止だが盗塁は禁止されてはいない。投手のリリースまで離塁できないからマトモな捕手なら盗塁の成功率がバクチすぎてやれないだけである( ̄∀ ̄)

  • リエントリー制:野球では一度交代すると、その選手はもうその試合には出ることができないが、ソフトボールではスターティングメンバ―の選手に限り、交替した後も、もう一度だけ👆再出場できる。ただし、交替できるのは、自身の元の打順を受け継いだプレイヤーに限られる。

  • 指名選手:プロ野球のパ・リーグ及び社会人野球では、攻撃時に投手に代わって打席に立つ指名打者(DH、Disignated Hitter) という制度があるが、ソフトボールでは投手に限らず総ての守備位置の選手に適用される指名選手 (DP、Designated Player) という制度が用いられている。詳細については複雑なのでここでは割愛するが、リエントリー制に加え、この指名選手の活用により、戦略的な幅は大きく広がる。


 ソフトボールと野球は、ゲーム進行面でのルーティン (投手が投げ、打者が打つ) が同じため、異種競技間対決というものも、ある種のエンタメとして成り立つ側面がある。

 その一環として、プロ野球のオフシーズンに、さまざまなスポーツバラエティ企画が放送されるが、ソフトボールのプロ投手とプロ野球の打者との対決、という企画も割と定番かつ人気が高い(o^-')b♪。

 ソフトボールの投手が投げるスピードボールは、男子で120km/h前後、女子で100km/h前後であるから、マウンドからホームベースまでの距離の違い(*1)を加味した体感速度の兼ね合いがあるにせよ、プロ同士の対決なら、普段150km/h以上のファストボールを打っているプロ野球の打者が打てそうな気がする。
 ましてや、ファストボールが100km/h前後の女子ソフトボールのプロ投手とプロ野球の打者との対決なら、なおさらプロ野球の打者がなんとかできそうなものに思えるのだが、実際にやってみると、プロ野球の打者がまあ打てない(笑)。👇

*1:マウンドからホームベースまでの距離の違い:野球は18.44mで、ソフトボールは13.11m。

 パッと見、同じように見えて、感覚的には大きな違いなんだろうなぁ…というのが、こうして実際の映像を目の当たりにするとよく分かるというものだ。


 さて、この「感覚の違い」に敢然と挑んだ1人のプロ野球選手がいたことをご存じだろうか。

 彼の名は大嶋匠。早稲田大学から2011年秋のドラフト会議で、北海道日本ハムファイターズから7位指名を受けて入団した選手だ。

 早稲田大学からのプロ野球選手――とりたてて不思議に思えることはない経歴といえそうだが、異質なのは、彼が中学校から大学まで野球は一切プレーせず、10年間ソフトボール選手だったということである。

 小学校までは軟式野球をしていたごくフツーの野球少年、たくみくんは新島学園中学校に進学するが、この学校には野球部がなかったため、ソフトボール部に入部する。
 この新島学園、よくある私立の中高一貫校だが、高等学校は実はソフトボールの全国的強豪校であり、野球部ないからソフトでいいか…で入ったたくみ少年は、気がつけばソフトボールの英才教育をバリバリこなす格好になっていて、新島学園高等学校では高校総体、国体で優勝、早稲田大学進学後もソフトボールを続けると、2008年にはU-19日本代表チームの四番を務め国際大会に出場するようなスラッガーになってしまった(笑)。無論、これはあくまでもソフトボールの世界での話( ̄∀ ̄)。

 大嶋は、早稲田大学4年の4月からソフトボールで10年間培ってきた打撃が野球ではどの程度通用するのか、社会人野球の名門、セガサミー硬式野球部の練習に参加してみた。そして、その手応えが決して悪くなかったのか、流れとノリで10月に鎌ヶ谷で行われたファイターズの入団テストを「記念受験」してみたのだ。
 ――で、その結果がまさかのドラフト7位指名^m^。「異色の経歴」というのが大好物な北海道日本ハムファイターズの真骨頂とも言える。

 こうして入団時には大きな話題となった史上初のソフトボール出身のプロ野球選手

 だが、「異色の経歴」というだけで成功できるほどプロ野球の世界は甘くはない。
 彼が一軍の舞台に上がれたのは、2014年、2016年、2018年の3年間、試合数にしてわずか15試合。

 こうして7年間にわたって必死に野球ボールを追いかけ続けた2018年の秋、球団からの戦力外通告を受ける形で、大嶋匠の挑戦は幕を下ろした。

 彼がプロ野球生活で残した記録は次のとおりだ。

15試合 20打席 打率.167 本塁打0 打点1 OPS.422

 ヒット数はわずかに本。ソフトボールでは大学通算80本という本塁打記録を持つその打棒も、プロ野球ではついに1本のアーチをかけることもできなかった。

 ただ、その3本のヒットを放った相手投手は、東京ヤクルトのストッパー石山泰稚、巨人の大エース菅野智之に、日本での在籍8年間で174ホールドを挙げたセットアッパー、スコット・マシソン、と一流どころのみであり、唯一の打点1は、埼玉西武のエース岸孝之から打った犠牲フライである。
 一流投手から結果を残せたというその打撃に、そこはかとないロマンのかけらを見出したくなるワタクシである。

 現在、彼は公務員試験を経て地元・群馬県の高崎市役所勤務の公務員としてセカンド・キャリアを送っている。鎌ヶ谷のファーム時代には、そのファンサービスに定評があった彼のこと、立派な公務員さんとして地域のために尽力していることと思う。
 また、彼は今、高崎市役所ソフトボール部でバリバリ活躍しているらしい
(o^-')b♪

大嶋匠の第二の人生に大いなる幸あれ♪\(^o^)/♪

 いちファイターズファンとして、一野球ファンとして、私は大嶋匠という選手がいたこと、そして大嶋匠という選手の7年間の挑戦を、たぶん一生忘れない。


 さて、今日の一曲。キーワードは「走」。
今週の3曲目。爆風スランプで『RUNNER

 「挑」をキーワードにしても良かったんだけどねー。
でもまあ、大嶋匠の「挑戦」は、プロ野球選手という未知の道を懸命に「走り」続けた結果でもあるし(o^-')b♪
 

 おっと、今宵ももうこんな時間だ。今日もかなりのギリギリやね(^^ゞ💦


そんなこんなで、
明日も、なるべく多くの人が、時にはがむしゃらに前に向かって走って行けるような一日でありますよう✨


■ おまけ

 今回の画像しりとり列車 (124両目) の前の車両です。タイトル「信じるか信じないかはアナタ次第」と右下のネタ画像で、なにこれ?て引っかかりを覚えた方がおられましたら、時間が許すような時にでも、覗いてみてやってください。




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