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ザクロの苦い思い出

私が好きな笑い話に、ザクロの話があります。姉の失敗談なんです。

私たちが通っていた小学校には、ザクロの木がありました。正門を入ってすぐ右手の散歩道。そこにザクロはひっそりと植えられていました。

真っ赤なルビーのような果実。太陽の光が当たってキラキラ輝いていても、子どもたちは、これが何なのかわからず?みんな無関心で枯葉の掃除なんかしているのでした。

ある日、姉が友達と遊んでいると、用務員のおじさんが、

「これ食べられるんだよ」

とザクロの実を1つもぎ取って、食べて見せました。

「うわぁー!食べられるんだね!」

まさかこの実が食べられるなんて!姉と友達は、すっかり興奮して喜びました。そして、用務員のおじさんが立ち去った後も、

「ねぇー!これザクロっていって、食べられるんだってー!」

と友だちを呼んで、次から次へと実をもいで食べてしまいましたとさ。

翌日ー

その日は全校朝礼でした。校長先生の話になりました。校長先生はマイクを取ると、次のように話し出しました。

「みんな、あそこにザクロの木がなっているのを知っているかな?あのザクロの木はね、校長先生が大事に大事に育ててきた木なんだ。そのザクロの実を、みーんな食べてしまった人がいるんだ

あのとき一緒にいた友人は、居心地が悪そうに下を向いていたそうです。姉も目も合わせられず、ただただじっと俯いていたんだと。

用務員のおじさんは「これはザクロといって、食べられる実なんだよ」と、単純に事実を伝えたくて、食べて見せたのでしょうけれど、子どもたちは「食べていい」という都合のいい部分しか受け取らなかったのですね。うーん、誰が悪いというわけでもない。これぞまさに言葉の綾(あや)!!

しかも姉は、お土産にとザクロを1つ持ち帰ってきて、私たち家族も、おいしい、おいしいと食べたのでした。もちろん私も食べました。校長先生が大事に大事に育てたザクロの実を.......。(おしまい)

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