見出し画像

帝都の復讐姫は作家先生に殺されたい 浅草十三怪談 (あらすじ・序幕)

あらすじ

大正の世の東京。浅草でその日暮らしをしていた少女・花墨かすみは、高等学校に通う悧月りつきという男と知り合った。二人は数年後、カフエーの女給と、駆け出しの作家として再会する。幼い頃に両親を殺された花墨は、復讐を望みながらもいまだ果たせずにおり、悧月は手を貸すことに。しかし、数々の怪異がうごめく帝都は警視庁の専門部局『憑捜』に取り締まられていて、とある理由から花墨は彼らに追われる身だった。また、悧月にも何か秘密があるようで……。監獄、華族会館、百貨店。クールな女給とお人好しな作家が、謎を追って帝都を駆け巡る。「先生を信じます」「約束だ、花墨ちゃん」二人がたどり着く結末とは?

序幕 消滅した十二月

 明治五(1872)年、十一月。
 ほとんどの日本人にとって、寝耳に水の出来事があった。
 政府が太陽暦を採用し、それまで使っていた太陰暦から切り替えたのである。
 結果、暦が大きくずれて十二月がたった二日で終わり、十二月三日がいきなり明治六年一月一日になった。「天長節」「紀元節」などの聞いたこともない祝祭日ができ、すでに作ってあった来年の暦は? 給料の計算は? と、あちらこちらで大騒動になった。
 そんな混乱のはざま──
 東京市外の小さな神社で、ちょっとした行き違いが起こった。毎年十二月に行われていた儀式の一つが、行われないままになってしまったのだ。
 人々は知らない。その儀式が、とある怨霊を鎮めるためのものだったことを。
 儀式はそのまま忘れられ、それを小さな綻びに、帝都はじわじわと不気味な厄災に蝕まれていくことになる。




#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門


この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?