遊森謡子

ライトなファンタジー系小説家 since 2012。貴族令嬢、中華後宮、お仕事系など、…

遊森謡子

ライトなファンタジー系小説家 since 2012。貴族令嬢、中華後宮、お仕事系など、がんばるヒロインのお話を書くのが好きで、約20作品を刊行しています(電子書籍もあります)

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  • 帝都の復讐姫は作家先生に殺されたい

    大正ロマン探索系恋愛小説です。note創作大賞に応募中! 数日に一度更新して締め切りまでに終わらせるぞ!

最近の記事

帝都の復讐姫は作家先生に殺されたい 2-1 カフエーの女給は英語を話す(1)

※散文的に数行、戦争描写が入ります    ひっきりなしに聞こえる砲声。  血まみれの仲間を担いで歩く。  地面には真新しく、何かを埋めた跡。  死んだ軍馬は食料になった。  戦場で『死』に取り巻かれた悧月の中で、何かが変わった。   ※  大正九(1920)年。  第一次世界大戦の戦争景気に沸いた帝都だったが、戦後にヨーロッパの生産物が入ってきたことで、あっという間に不況に陥った。  しかしその一方で人口はぐんぐん増え、家々には二つ以上の明かりが灯るようになり、道には

    • 帝都の復讐姫は作家先生に殺されたい 1-2 浅草十二階下の迷い人(2)

       月日は流れ、河原では涼しい秋の風がススキを揺らすようになった。  その日、悧月は新しい本を手に、十二階下にやってきた。夕暮れ時になって空は曇り、どんよりとしていたが、あちこちに灯りが点って私娼窟は目覚め始めている。  憑捜がいないのを確認してから、彼は花墨の家の引き戸をからりと開けた。 「花墨ちゃん、失礼するよ」  奥の衝立の陰から、花墨が顔を出した。 「お兄さん」 「新しい本を持ってきたよ。あれ、子どもらは?」 「今はちょうどみんな、それぞれねえさんたちのところに行って

      • 帝都の復讐姫は作家先生に殺されたい 1-1 浅草十二階下の迷い人(1)

         改暦から四十年が経った、大正二(1913)年、春。  草履の足音が、暗く入り組んだ路地をパタパタと進む。夜だというのに、まだ十歳、十一歳くらいの少女が一人、急ぎ足で歩いているのだ。  木綿の縞の着物は少し丈が短く、足首がことさら華奢に見える。筒袖の両腕は、布包みを大事そうに抱えている。  路地の電灯の下を通り過ぎる一瞬、彼女の顔が浮かび上がった。頭からぐるりと手ぬぐいを巻いているのが少し風変りではあるものの、少しつり気味の大きな瞳が、利発そうに前を向いている。  どこを曲

        • 帝都の復讐姫は作家先生に殺されたい 浅草十三怪談 (あらすじ・序幕)

          あらすじ 大正の世の東京。浅草でその日暮らしをしていた少女・花墨は、高等学校に通う悧月という男と知り合った。二人は数年後、カフエーの女給と、駆け出しの作家として再会する。幼い頃に両親を殺された花墨は、復讐を望みながらもいまだ果たせずにおり、悧月は手を貸すことに。しかし、数々の怪異がうごめく帝都は警視庁の専門部局『憑捜』に取り締まられていて、とある理由から花墨は彼らに追われる身だった。また、悧月にも何か秘密があるようで……。監獄、華族会館、百貨店。クールな女給とお人好しな作家

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        • 帝都の復讐姫は作家先生に殺されたい
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