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兎がほざく

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ショート•エッセイ、140字以内。毎日投稿、どこまで続く?
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2022年11月の記事一覧

🐇兎がほざく608

🐇兎がほざく608

食べた西瓜が美味しければ自分の畑に成った西瓜でなくても悲しまなくていいのです。

誰もが今というゼロの地点に立っています。

だから誰が傑作を産み出してもおかしくないと思います。

傑作に遭遇したらその作品が傑作と自分にわかったことだけで今日は良い日だったのです。

🐇兎がほざく607

🐇兎がほざく607

切った髪が自分を離れ世の中のものになるように、作品は自分を離れ世の中のものになります。

作品への感想や評価は現在の自分とは本当は関係があるようでないのです。

現在の自分は感謝しながらもう次の全然異なる趣向を考えたりしています。

だからいつも手ぶらです。

🐇兎がほざく606

🐇兎がほざく606

アジアの渾沌という言い方があります。

日本はアジアという言い方は一般にはあまり好まれないようです。

しかし日本はとてもアジアらしい国です。
それがここ数年で久しぶりにはっきり見えるようになりました。

縁故も非合理も同調圧力も地金なのです。

地金から再出発です。

🐇兎がほざく605

🐇兎がほざく605

人生を諦めて消化試合に早々入るよりも、運を天に任せて欲に生きる方がぼくには幸せに見えます。

欲が小さければ自分の手に負えるかというとそうも行きません。

少欲でも足るを知らないのが世の常で、大欲とはあまり変わりません。

人に迷惑をかけず独り煩悩と戦う道です。

🐇兎がほざく604

🐇兎がほざく604

昔から桂冠詩人とか歌合せとか、詩には競争がつきものなのは不思議です。

そして勝った詩が人の心に残るとも限らないのは不思議です。

異性を求めて鳴き声を競う鳥のようです。

ぼくは異性にありつけなかった鳥の方でしょう。

だからこそ歌うことを忘れられません。

🐇兎がほざく603

🐇兎がほざく603

クリームソーダ。
あんなきれいなものを飲んでもいいのでしょうか?

グラスに熱帯植物のように鮮やかな色の液体が気泡をあげています。

そこに何が起きるかも知らず卵色の楕円の玉が飛び込みます。

ストローで混ぜられるとソーダは慌てて白く濁ってクリームの姿を晦まします。

🐇兎がほざく602

🐇兎がほざく602

ぼくは自分だけが読者のつもりの小説を書きました。

高校生が主人公のベタな青春小説のたぐいで、男子校しか知らないのに精一杯背伸びして共学の高校生を書いています。

人生は特急で旅行するようなわけにいかなかったです。

飛ばした駅に戻って来てしまったようです。

🐇兎がほざく601

🐇兎がほざく601

ぼくは会社勤めをしていて、商品のマーケティングも勉強しました。

想定顧客、市場規模、広告効果、地域店頭カバー率......

自分の出した詩集に応用するとどうでしょう?

読んでくれそうな少数の人の目に触れるように努めるほか、たぶんできることはないのです。

🐇兎がほざく600

🐇兎がほざく600

中島みゆきの歌「悪女」は時々思い出します。

悪女のフリをして彼氏が自分から離れやすくするという歌詞です。

初めて聞いた時はこんなことってあるかなと思いました。

その頃ぼくは子供で、素の自分が嫌われたのではないと思いたい気持ちがわからなかったのです。

🐇兎がほざく599

🐇兎がほざく599

能では唐の玄宗皇帝の御世を泰平の例に引くことがあり、吹く風の枝も鳴らさぬ御世、と謡います。

しかし安禄山の乱もその御世にあったことです。

有史以来みんなが満足する世の中は一度もなかったでしょう。

誰かすごい人が世の中を良くするというのは幻想だと思うのです。

🐇兎がほざく598

🐇兎がほざく598

型を壊すことが創造だという考えが流行した時代もありました。

壊さないで逃げ切る考えが流行した時代もありました。

型からは逃れられないと諦める考えが流行した時代もありました。

今度は型の中に逃げ込む考えが流行するのかな?

また振り出しに戻るのかもしれません。

🐇兎がほざく597

🐇兎がほざく597

ぼくは小説を書くのですが今は寄り道で自分だけが読者の作品を書いています。

それなのに話の辻褄や会話の自然さを意識しています。

登場人物は無茶してもいいはずなのに結構合理的です。

自分だけが見る夢なのに。

われながら苦労性なのか不思議なことをしています。

🐇兎がほざく596

🐇兎がほざく596

たぶん。

自分の言ったりしたりしていることが本当にはよくわからないで、周りの喜ぶようにしていたのです。

おじいちゃんは尊敬していて学校の先生は嫌いだったのです。

たぶん。

人形のようにぱったり地面に倒れて太く濃い眉が悲しそうに止まりました。
かれは人間です。

🐇兎がほざく595

🐇兎がほざく595

街で働く女の人を見るのが好きです。

宅配便を配達したり飲食店で働いたり工事していたり。

おしゃれな通行人よりもつい目が行きます。

制服萌えというのとは違います。

キビキビ真剣に働く姿が純粋にきれいだと思います。

真夏の汗はぼくには眩しいぐらいでした。