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短歌集

202
和語だけで旧仮名遣いの和歌と、和語以外も入り現代仮名遣いの短歌との両方を収録しています。
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2021年10月の記事一覧

若紫の 【短歌】

若紫の 【短歌】

京都に寄す

ゆかしきは
 鴨の川風
   触るる髪
  若紫の
    山の背のごと

アイスクリイム 【短歌】

アイスクリイム 【短歌】

夜想曲奏でて漏れる溜息に
溶けてしまうかアイスクリイム

十三夜 【短歌】

十三夜 【短歌】

今宵は十三夜の月です。

狼の瞳光るや十三夜
剣の如く尾を立てしまま

地金真直ぐに 【短歌】

地金真直ぐに 【短歌】

悲しみの果てに、というお題をいただいてできました。

悲しみの果ての傷口露出した
地金真直ぐに被爆地の人

転調のソプラノ 【短歌】

転調のソプラノ 【短歌】

悲しみの果てに、というお題をいただいてできました。

転調のソプラノ澄みて雲上の
レクイエム聴く悲しみの果て

言葉の化石 【短歌】

言葉の化石 【短歌】

今は使われない言葉にもよいものはあります。

古雑誌言葉の化石掘り出して
君に惚れたと呟いてみる

シャツに隠して 【短歌】

シャツに隠して 【短歌】

生傷はシャツに隠して曖昧にニヤリ過ぎ行くやつでありたい

ころり桐下駄 【短歌】

ころり桐下駄 【短歌】

今年の夏の思い出です。

胸高に赤くきりりと帯締めて宵宮参るころり桐下駄

悔ゆるなく七夜の限りつがひしや蝉のむくろをひとつ葬る

炎天の現場の君よ作業着に男女はありや汗通りつつ

胸のうちかなはぬ恋をかこちつつ人窓ごとに同じ月見る

掌でツーブロックを確かめてペダル踏み込む夏のヴィーナス

からっぽの空 【短歌】

からっぽの空 【短歌】

夏の思い出の短歌です。

老成の掌編を書く十八の
ややたち交じる誤字の可愛さ

この時ぞ獲物定めて賭けに出る
ダリアは猛き心臓の色

日も月も星も地球もそのままに
天の裏までからっぽの空

傘 【短歌】

傘 【短歌】

駅を出ると急な雨ということがあります。

この傘を
 どうぞと君に
   渡したら
 濡れて帰ろう
   名乗りしないで

でも恥ずかしくなって渡せませんでした。