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タイムリミット

コーヒーショップの赤いランプを眺めながらぼんやり考える。
いや、正しくは考えているフリをしているだけかもしれない。
結局のところ、私の頭の中には何も無いのだ。

現在、12時27分。
オフィス街にあるこの店が混みだすのはもう少し経ってからだ。
それまでしばし空っぽの頭の中から何かが出てこないか待ってみようか。

詳しくは話せない。隠したいわけではない。話せるほどのものが無いのだ。
それほどに私の頭の中が空っぽであるということをお察しいただきたい。
それでも私には、何かが出てきそうな気がしているので困ったものだ。

残念ながら、今日も目ぼしい収穫は無さそうなので私の思い過ごしに過ぎなかった。
何となくイヤホンから流していた音楽も、気付けば1曲目に戻っている。
そろそろタイムオーバーだ。

特にこの店は、食後のコーヒーを求めるOLやサラリーマンでこのあと一気に混む。
皆、昼からの仕事に戻っていくので波が引くのも一瞬だが、混み合うレジを見ているとぼんやり座っている自分が居た堪れなくなる。追い出されるような気持ちでは無いのでご安心いただきたい。

むしろ、立ち上がるタイミングを与えてくれて感謝したいくらいだ。
タイミングが無いといつまでも空っぽの頭の中から何かが出てくるのを待ち続けてしまう。
時間は有限だから楽しい。有限の中にある無限の可能性を知っている。明日は出会えるだろうか。
そう思いながら最後の一口を飲み干して席を立った。

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