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冬に聴きたい!ぺるあんプレイリスト

 「この曲は何だか冬っぽいな」「この曲を聴くと冷たい空気をイメージする」……など、音楽を聴いていて、特にシーズンソングではなくても季節を感じることはありませんか。
 今回はぺるあんの中でも飛び抜けて音楽に詳しい団員が、それぞれの楽曲の構成の面白さや裏話を語りながら、冬にぴったりの曲をご紹介します。コアな音楽好きの方も、新しい音楽の聴き方にチャレンジしたい方も必見・必聴です!



 皆さんこんにちは。先月の駒場祭演奏会を会場まで聴きにきてくださった方、YouTubeの配信で観てくださった方、ありがとうございました。
 駒場祭が終わり12月に入ると本格的な冬の到来です。ぺるあんが過去の演奏会で披露した曲の中から、これからの寒い季節にピッタリな4曲を選んでみました。寒くて外に出たくない……という日は、ぺるあんの動画で心も体も温まってみてはいかがでしょうか。


〜 メニュー 〜

精霊の詩
嶋崎雄斗作曲。マリンバ一台を3人で演奏。2019年駒場祭1曲目。

美星の降る夜に…願い、やがて強靭な心と翼を持った〜
片岡寛晶作曲。マリンバ・ビブラフォン・ティンパニ・スネアドラムなど定番の楽器で演奏される5重奏。2021年駒場祭2曲目。

Coffee Break
Mark Ford、Ewelina Bernacka 作曲。コーヒーカップとその蓋やスリーブを使って演奏。2020年駒場祭4曲目。

エレクトリカルパレード
Perrey & Kingsley 作曲の"Baroque Hoedown"が原曲。ドレミパイプっていうアコースティック楽器を使用。2022年五月祭2曲目。



<精霊の詩>

 雪の降る寒い夜に似合いそうな曲。(曲のコンセプトは冬と関係ないけど。)これは2019年の駒場祭演奏会の時の映像です。早速、埋め込み動画を再生してみましょう。

 森の奥の小屋にふっと現れた精霊…を思わせるような神秘的で可愛いフレーズが聞こえてきます。この"ソファドレドレ〜"という耳馴染みの良いフレーズ、よく聴くと3拍子っぽいフレーズを7拍子や5拍子などの変拍子に乗せて歌っているんですね。人が実際に話す時に息継ぎをするように、"ソファドレドレ"の後に8分休符1つ分の間がある。おかげで"ソファドレドレ"が(馬耳東風にならずに)ちゃんと聴く人の心に届く。この8分休符の説得力、すごくないですか?それに、変拍子のおかげで可愛らしいフレーズに浮遊感フレーバーがついて精霊らしさが溢れているようにも感じます。打音で明確にタイミングを出せる打楽器だからこそ、変拍子の効果が光るのでしょうか。
 打音がはっきり出るという打楽器の特徴を備えつつ、マリンバは叩いた後の豊かな残響が魅力的な楽器でもあります。"ソファドレドレ〜"というフレーズで最初の"ソ"の音がよく響いてベーストーンのような役割を果たし、この"ソ"の上に他の高い音が重なって4度や5度の和音っぽい厳かな響きが作り出されます。曲全体を通してシャープ調やフラット調を行き来して和声が魅力的な曲ですが、マリンバの残響が長すぎず短すぎずちょうど良いところで自然に減衰していくので、聴いていてとても気持ち良いですね。

 一つのフレーズを弾く中でも叩き方によって打音と響きを調節することで、各音がフレーズの中でそれぞれの役割を果たすように演奏できる、というのはマリンバの良さでもあり、マリンバ演奏の難しさでもあると思います。特にマリンバ一台3重奏は意識的に音を使い分けないとぐちゃぐちゃに聞こえがちな気がします。やっぱりこの奏者たち、素敵です。

 ちなみにこの曲、中間部(トロけてしまいそう、コタツのような暖かさ)を経て再現部に至ると、精霊さんは魔法のように姿を消してしまうようです。作曲者のユーモアが感じられてほっこりしますね。(何言ってるか分からない?なら最後まで聴いてみてください、聞けばわかりますよ〜)


<美星の降る夜に>

 冬に聴きたい!ファンタジックな曲2つ目は『美星の降る夜に』です。皆が寝静まった後の夜空で繰り広げられる、星々の壮大な物語へと飛び立ってみませんか?

 冒頭から、何かかましてくれそうな雰囲気。「ある夜、空を見上げていたら、星が降ってきた…」の世界線でしょうか。マリンバやビブラフォンの演奏がまるで星空のようですね。(冒頭〜2:15くらいまでの前半部分のことです。)ちなみに筆者は、0:53あたりで3分クッキングみたいに登場してくる2人目のマリンバ奏者が好きです。待ってましたと言わんばかりの登場っぷり。(動画編集班のおかげかも。)
 後半では太鼓系の楽器が活躍します。動画で奏者の手元をじっくり見るもよし、アンサンブルの躍動に身を任せてリラックスしながら聴くのもよし、タイトルにあるように「強靭な心と翼」を想像しながら聴くもよし。

 このぺるあんの演奏、いろいろと粗があるような気もしますが、全員めちゃくちゃマイペースなのに諸々の辻褄が合ってしまっているような何とも言えない協調性が良いんですよ〜ぺるあんってこういう団体です。(諸説あり・2021年11月時点)


<Coffee Break>

 さて、外が寒くなってくると、温かい飲み物が欲しくなりますよね。寒い日には朝起きて出かけるのも一苦労かもしれません…が、仕事を頑張った後のホットドリンクは体に染みるでしょう。休憩中のオフィスワーカーたちに混じって一服していきましょうか。

 この曲は、コーヒーカップを楽器にして演奏するコーヒーカップ5重奏です。仕事の合間の休み時間という舞台設定で、セリフを交えて曲が進行します。
 コップの大きさによって出る音が違うからなのか、楽譜にはコップのサイズについての指示もあって、とても作曲者のこだわりが強い!そしてこの奏者たちのキャラも強い……!

 この動画は2020年駒場祭のオンライン演奏会で公開したものです。コロナウィルスの感染拡大により、楽器を使って思う存分練習することができなかったので、手軽に練習できる曲で曲数を稼ごうとしたのがそもそものきっかけです。コロナ禍で溜まったストレスを吹き飛ばしてくれそうなくらい、観ていると元気をもらえる演奏ですよ。


<エレクトリカルパレード>

 続いての推しアンサンブルは『エレクトリカルパレード』です。東京ディズニーリゾートに行くと、この曲でパレードをやっていることがあるんだとか。今夜は東大ぺるあんリゾートがお届けする夜のパレードでお別れとしましょう。

 皆さんこの曲はよくご存じだと思うので曲の説明は要らないとして、早速動画を観てみましょう。2019年の駒場祭から毎演奏会やっている、恒例のドレミパイプ企画です。冒頭のイルミネーションがインパクトありますね。これ、スマートフォンの懐中電灯機能を使っているんです。明かりをつけたスマートフォンを机に置いて、その上にドレミパイプを乗せると、この動画みたいにボワっと明かりが広がります(懐中電灯にペットボトル乗せるのと似たような感じ)。スマートフォンに乗せているパイプが不安定極まりないので、収録の時には何度も撮り直しましたね〜

 ちなみに『エレクトリカルパレード』の元になった"Baroque Hoedown"(バロックホーダウン)もめちゃくちゃ良い曲です。ポンポンと変わっていく和声を細かい音符の分散和音で繋いで音を敷き詰めていくような曲の作りになっていますが、1つのコードに割り当てられた2拍とか4拍とかの短い時間でどこまでそのコードを貪り尽くせるか、という戦いを感じますね。

 1940年代〜60年代にかけてアメリカで異文化(ここでは西欧由来のマーチとアフリカ由来のブルースなど)が交わってジャズとかロックとかの大衆音楽が形を成し、「コードを一旦解体して再構築する」というある種バッハ的な手法とともに即興演奏文化が花開いた後、1960年代後半になると電子楽器という新たな道具が現れます。"Baroque Hoedown"がリリースされたのは電子楽器の時代の初期にあたる1967年で、それまでに形成されてきた大衆音楽に電子楽器を組み込んでいく実験の1つとしてこの曲を捉えると、バロック音楽に立ち戻って書かれたこの作品はなかなか面白い。電子楽器でチェンバロっぽい音を出しているところなんかも流石という感じ。



 『冬に聴きたい!ぺるあんプレイリスト』と題して、ぺるあんの過去動画の中から寒い季節に聴きたくなりそうな曲を(筆者の主観で)選んでみました。お気に入りの曲はありましたか?演奏動画を観て感想や質問などあれば、YouTubeでコメントどうぞ。

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