【CAST@NET vol. 004】食べ物を長持ちさせよう!先人たちの工夫!
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私たち東大CASTは、「科学の面白さを、多くの人に伝えたい。」をモットーに、実験教室やサイエンスショーなどのイベントを実施している東京大学の学生サークルです。
この科学コラムでは身の回りの不思議から数学まで、科学にまつわる幅広いテーマを楽しんでもらえるように書いています。
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今回のテーマは「身近な食べ物」です。
9月といえば…?
突然ですが、みなさんは9月と言ったら何を思い浮かべますか?
筆者は甘いものと美味しいものが大好きなので、9月といえばお月見団子を思い浮かべます。このお月見団子は豊穣を感謝して月を眺める日本の伝統行事「十五夜」のお供として知られています。実はこのお月見団子のメインメンバー、お餅、あんこ、みたらしには、食べ物を長持ちさせようという先人たちの科学的な工夫が詰まっているのです!
ということで、今回は科学の視点からお月見団子を見ていきましょう!
お餅の科学
お正月、十五夜など、ハレの日によく食される餅。諸説ありますが、平安時代にはすでに朝廷にて振る舞われていたというほど、歴史のある食べ物です。さて、今回この長い歴史の中でも特にピックアップするのは江戸時代!飢饉が起きてしまったときのための備蓄食として活躍したのが、東北や信州地方の名物「凍み餅」(しみもち)です。普通のお餅と何が違うのかというと、その保存できる期間の長さ!凍み餅は普通のお餅より、長い期間食べることができます。
凍み餅の作り方
では、この凍み餅はどうやって作られているのでしょうか?気になる作り方のヒントはその名前にあります。凍み餅用に味付けをしたお餅を寒い外に干しておくと、気温の上下に応じて冷凍と解凍が繰り返されます。その結果、徐々に乾燥していき、カチカチに固くなったら凍み餅の完成です!カチカチに固くなることで、凍み餅は腐りにくくなるんです。腐りにくいからこそ、長持ちします。私たちの身の回りでも外で冷凍と解凍を繰り返して乾燥させたもの、例えば高野豆腐なんかも腐りにくいことで有名ですよね。でも、中身を入れ替えた訳でもないのに、なんで腐りにくくなるんでしょうか?
腐りにくい理由
その秘密の一つは水分にあります。そもそも、腐るというのは私たちの目には見えないほど小さい生き物「微生物」が食べ物の中で、人間の害になってしまう成分を作ってしまうことを指します。実は、この微生物、水が大好きなんです。そのため、乾燥させることで、食べ物の中の水の量が減り、微生物が働きにくくなって、食べ物が腐りにくくなるのです!
みたらしの科学
みなさんはどんな味のお餅が好きですか?スーパーでよく見かけるみたらし団子が好きな人は多いのではないでしょうか。このみたらしは砂糖や醤油などを温めながら混ぜることで作られています。ここで使われている醤油も保存期間が長いです。どうしてでしょうか。
ヒントは醤油の味にあります。醤油をそのまま少しいただいてみると...しょっぱい!これら、しょっぱいもの、つまり塩分濃度が高いものは腐りにくいとされています。
浸透圧
その理由を読み解くのに重要なのは「浸透圧」。どこかで聞いたことがあるかもしれません。これは簡単に言うと、濃さが違う二つの物質を触れるようにおいておくと、濃さが同じになるように水が移動しようとすることです!なめくじに塩をかけると、なめくじから水が出て萎んでしまうのと同じ原理です。醤油などの塩分の濃度が高いものの中ではこの浸透圧のせいで微生物の体内の水分が出ていってしまいます。
そのため、彼らは活動しにくくなって、食べ物が腐りにくくなっています!
あんこの科学
筆者はお餅を食べるときには必ず一個はあんこをたっぷり乗せたあんこもちを食べます。ご存知の方もいるかもしれませんが、あんこは主に小豆と砂糖からできています。甘くてとっても美味しいですよね。ところで、みなさんはこんなことを聞いたことはありませんか?
「砂糖を加えたものは長持ちする」
例えば、ジャムやキャンディーなんかも他の食品に比べて賞味期限が長いですよね。なんででしょう?
水和
実はこれにも、食べ物の中に入っている水が関係しています。もちろん、先ほど紹介した「浸透圧」も影響するのですが、ここでは砂糖特有の理由をご紹介したいと思います。
砂糖は水に溶ける時に周りの水を引き込む性質があります。これは「水和」という現象の一つです。例えば、砂糖がたくさん溶けた水あめって少しねばねばしていますよね。これは砂糖が溶けるために水を引き込む「水和」を行ったために、自由に動ける水の量が少なくなってしまったから起こる現象です。
同じ様に、砂糖がたくさんある食べ物の中では、砂糖に水を取られちゃうせいで、微生物が取り込める自由な水が少なくなって活動しにくくなっちゃうんですね。このため、糖分の多い食べ物は腐りにくく、長持ちするのです!
今回はお月見団子から、食べ物を長持ちさせる工夫についてお話ししました。身近な食べ物の中にも、工夫がたくさん詰まっていることがお伝えできていれば幸いです!
今回もお読みいただきありがとうございました。
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