見出し画像

ピアニストがオーケストラを見る〜Brahms „Ein Deutsches Requiem“mov.4〜

さて、先日の記事で予告しました通り…「みんなでブラレク」こと“Sing in Brahms Requiem” (8/23開催)に向けた、ピアノ(オーケストラ)目線の解説をしていきます!

今回は第一弾。第4楽章から。

上のキャスは、2020年3月20日18:00〜18:30に配信した4楽章の解説(前半)です。

◆歌詞と対訳◆

Wie lieblich sind deine Wohnungen,
Herr Zebaoth !
Meine Seele verlanget und sehnet sich
nach den Vorhöfen des Herrn;
mein Leib und Seele freuen sich
in dem lebendigen Gott.
Wohl denen, die in deinem Hause wohnen,
die loben dich immerdar.

あなたの住まいはなんと麗しいことでしょう、万軍の主よ!
わたしの魂は絶えいるばかりに主の大庭を慕い、わたしの体と魂は神に向かい喜びと共に歌います。
あなたの家に住み、常にあなたを誉め称えるひとは幸いでしょう。

----------

さて、それでは前半から。

先日の記事で述べた通り、リダクションはブライトコップ版全音版オケスコアの3つを参考にしています。
※今回の記事で使用している楽譜は、IMSLPよりダウンロードしたものです(ペータース版)。

画像1

◆オーケストレーションとピアノリダクションの比較《前奏編》

右手の旋律はフルートとクラリネットにより奏でられますが、注目したいのは弦楽器群(とホルン)が奏する左手の部分。
1小節目3拍目裏がへ音譜表第2線にかかるB(シ♭)になっていますが(※黄)、ここの音域のB(シ♭)は、実際には打ち直しはありません(ホルンがこの音域でロングトーンを奏でてはいますが)。
これは恐らく、ピアノで演奏するので低音の補強が必要になる-ピアノの音はどうしても減衰してしまうものですから-ゆえにオクターブ変更されたものだと推察されます。
しかし、実際のオーケストラによる演奏(参考音源:ベルリンフィルハーモニー/指揮:サイモン・ラトル)を聴くと低音はそこまで目立っている訳ではないので、わたしはこのオクターブ変更を取り消し、ヴィオラパートに忠実に(つまり記譜上より1オクターブ上で)弾いています。

----------

画像2

◆合唱の入りからの構成〔〜23小節(練習番号A直前まで)〕◆

合唱入り(※黄)〜19小節のフレーズの終わりまで、弦楽器がメロディをなぞっています。ソプラノとヴァイオリンが同音域を共に奏でることで、全体が安定感のある音色になります。
6〜8小節“deine Wohnungen,“《あなたの住まいは》で全パート及びオーケストラにcresc.が表記され、歌詞として非常に重要な意味を持つ“Herr,Zebaoth,“《万軍の主よ》に向かって盛り上がりを見せます(※青の記号)
そして13小節の合唱の収束と共に、今度はオーケストラが(フルートとオーボエが)冒頭のソプラノと同じメロディで呼応します(※赤の記号)
そしてそこにもう一度“deine Wohnungen,Herr Zebaoth“と合唱が被せて入り、練習番号Aへと向かいます。

----------

ここから先は

4,110字 / 10画像

¥ 400

この記事が参加している募集

おうち時間を工夫で楽しく

宜しければ是非こちらからサポートお願いします! 頂いたサポートは、今後の音楽活動費として活用させていただきます!