脳汁が出る食べ物を把握していると人生を甘やかせる
このあいだ忙しさを50倍濃縮したような好きちゃんとご飯を食べに行こうとしたら、忙しさを100乗したような友人のおじさんに一瞬時間ができたということで爆速でカレーを食べに行きました。
友達について突っ込んでいる暇はないので、こちらご参照ください。
そもそもなんでこんなことになったかといえば、おじさんがあまりにも忙しいもんで、何とか約束を取り付けようと好きちゃんと躍起になっていたというだけです。
本当はもっとちゃんとご飯を食べましょうという話だったのですが、忙殺されている人間はそんなこと言っても仕事にとらわれたままです。
そんな折、好きちゃんが仕事に使いたい資料をおじさんが持っているということが判明します。
おじさんの仕事部屋があるのは、辺境の地(私の家からアクセスが悪すぎるという意味)ですが、忙しい人たちの特性として、仕事が絡むとものすごいスピードで話が進むというものがあります。
私と好きちゃんが二人ぼっちでご飯を食べる予定だった日、急遽辺境の地へ赴くこととなりました。
友達紹介でも書きましたが、おじさんは自分の仕事部屋にこだわりを持って生きています。
インターホンを押し、資料を探すからちょっと待っててね、と言われさえすればこっちのもの。
こだわりの仕事部屋はいつ何時も人を暖かく出迎え、包み込んでくれます。(仕事部屋も友達なん?)
ちょっと待ってね、の3秒のうちに私と好きちゃんは仕事部屋のソファに深く根付いてしまいました。
一歩も動かん!いや、動けん!居心地がいいのが悪いんだい!と言いたい放題のガキ(私と好きちゃんのことです)を追い出すため、そして自身の健康のため、おじさんは、ごはんに行こうと誘ってくれたのでした。
行きたかった焼き肉屋に負け(火曜日だったのに満員)、しょうがなくおすすめのカレー屋に入りました。
カレー屋というのも、いわゆるインドカレーのお店ではなく、日本人になじみ深いご飯とルーが半分こでお皿に乗ってるカレー屋さんです。
私はエビのカレーを、好きちゃんは牡蠣のカレーを、おじさんは黒豚のカレーを注文しました。
二人は大忙し人類なのですが、私の現状はというと、忙しい3倍希釈といったところでしょうか。
二人の仕事はいったいどういう状況で~という話を聞きながら、私一人浮いた気持ちでカレーのルーを掬ったりしていました。
ふと、おじさんが、
「ふたりがさ、脳汁出る食べ物って何?」
と聞いてきまいた。
「俺はねえ、動物性油なの。」
本当に何言ってんだこの人、と一瞬頭の中でフリーズしましたが、なるほど、カレーの具だな?と察することができたので事なきを得ました。
「やっぱ自分の脳汁出る食べ物把握してるとさ~、脳をジュワッと溶かせるからいいんだよねえ。焼肉とかのお肉もそうだけど、サバとかもいいんだよねえ」
言いたいことはわかります。
サバのジュワッと油を感じるなんて、贅沢以外の何でもないです。
そう考えれば私は生ハムプロシュートとスナックサラミで脳汁が出るようです。
プロシュートは16か月熟成くらいがちょうどよくて、5センチくらいにカットして。
何枚か重なっているのを丁寧にはがしながら食べるプロシュートは格別に脳が溶けます。
さらに最近お世話になっているのが一口スナックサラミ。最近、忙しくはないけど精神的にまいっちゃう、そんなことが職場で多発している私です。
とくによくない日。
低気圧に弱い私にとって、寒暖差がひどくて雨が降りがちなこの季節は敵なのでありますが、そういった日。
25回目の誕生日も迎え、成人としてすごす日々が積み重なってきた私くらいの年齢の方々、どうやって丁寧に暮らしていますか?
私は無理でした。
諦めました。
そんな殺伐とした精神状態の救世主として現れたのが一口スナックサラミ君です。
プロシュートの場合、5センチ四方くらいにカットして、それを一枚ずつにはがしながら味と香りを楽しむ~なんておしゃれぶったりするんですが、スナックサラミ君はもう、あれです。
パッケージびりっ!そのままぱくっ!これだけで脳を溶かせます。
なんとなく、脳汁出るわ~!って食べ物は、好きな食べ物とはちょっと違うというか。
好きな食べ物というカテゴリーの中のまたもう一つ狭い階層にあるというか。
実際私は辛い麺が大好きです。
辛みは中毒性があるというのは置いておいて、いわゆる中本蒙古タンメンだの、プルダックポックンミョンだの、台湾まぜそばだの。
そういうものを食べると、うおおおお!辛い!うまい!すきだ!とはなるものの、別に脳汁じゅわあとはならない気がします。
この話はいったい何かというと、人は少しでも、簡単でも、うわべだけでも、自分を甘やかすすべを持っていた方がいいよねって話です。
しかも、食事を1日3回とるのは妥当でしょうから、食べ物で自身をあまやかすと考えれば、公的に(公的…?)1日3回も自分を甘やかすことができるということなんですね。
食べるの得意じゃないんですよね~とか、好き嫌いが多いんですよね~って人がいると思いますが、それが悪いという話では全くないです。
ただ、丁寧に生きることのできない現代社会人のなんと多いことか、ということです。
そして、ネガティブや忙しさに対して一定対抗できるような「甘やかし」は、多くて手軽ならそれほどいいことはないんじゃないかと思ったのです。
旅行に行ったり、買い物をしたり、自分を甘やかす方法を持っている人たちはとてもすてきだと思います。
問題は、甘やかす方法があるかないか。
そしてそれを気軽に使えるともっといいよねってことです。
小さなネガティブは知らない間に肥大化していくことがあります。
ちょっといやな気持、ちょっとモヤっとした、これだけのことで旅行に行ったりたくさん洋服を買ったりするのは、少し手間がかかりすぎる気がします。
そんな時、脳汁系食べ物で脳と自分を甘やかせれば、少しのネガティブくらいは蹴散らせると思います。
それに、ちょっと行き詰っているときや、ちょっと気分転換したいときなんかにもこれは有効な手だてだと思います。
もちろん大きな壁を突破するには、もしかしたら旅行やショッピングの方が有効な時があるかもしれません。
レベル別に自分を甘やかす方法があると効率的でいいんじゃないかと思ったという話です。
こんなこと考えながらカレーを食べたのち、おじさんは自分の仕事場に帰っていきました。
もしかしたらあのあと、おなか一杯過ぎて寝たかもしれません(仕事がそびえたっていましたが)。
少しの余裕感を持つということは人間らしい生活を送ることができるようになるということのような気がします。
おじさんは少しの余裕感を手に、果たして仕事に向き合えたのでしょうか。
はたまた、現実に目をつぶることにしたのでしょうか。
私と好きちゃんは、1時間半しかしゃべってないぞー!だの、来週もまた押しかけますからー!だの、やんや言いながらおじさんを見送り、満腹すぎるおなかをさすりながら、少しの間腰を下ろすための場所を辺境の地で探すことになったのでした。
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