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「米国株式投資で必須の武器!SEC開示分析講座」第12回

みなさん、こんにちは!

アメリカ株式義塾です。「米国株式投資で必須の武器!SEC開示分析講座」第12回を始めましょう。
前回までは少し寄り道して、有償増資や社債発行など、投資家に襲い掛かりうる”災害”について学んできました。もちろんそれらも重要ですが、今回からは、いよいよ投資家の皆様に本当に役立つ情報をお届けしていきます。

さて…皆さん、このように悩んだことはありませんか?

例えば、クルーズ船会社というテーマがあるとしましょう。クルーズ船業界の世界1、2、3位の会社はそれぞれカーニバル(CCL)、ロイヤル・カリビアン(RCL)、ノルウェージャン・クルーズ・ライン・ホールディングス(NCLH)です。もし、安定したクルーズ船会社に投資したいのであれば、この3つのうちどれかを選ばなければなりません。

いろいろな情報を総合して今後クルーズ船業界が有望だと結論付け、クルーズ船会社に投資することに決めた場合、この3つの会社のうちどこに投資すれば良いでしょうか?どれも同じクルーズ船会社ですが、どのように判断しますか?そしてその判断の根拠はどうやって得られるでしょうか?


白カブ部長:うーん…3つの会社の10-Kや10-Q公示にある財務諸表をそれぞれ分析して比較すれば良いのでしょうか?

そうです。それがすべてではありませんが、最初に行うべきこととしては正しいです。このような問題は、私たちが米国株に投資する際に非常によく直面する問題です。同じ業種で同じ製品を作っている企業がある時、どの企業が最良の選択なのか分からず、選択に迷ってしまうのです。

今回は、まさにこの点に焦点を当てて、同じテーマや同じ技術を持ち、同じ種類の商品を販売している企業が存在するとき、つまり同業界に複数の企業がある場合、その中でどの企業に投資するのが最良かを判断するための基本的な投資指標を得る方法をいくつか説明します。

注意すべき点は、会社への投資は①財務状況、②最新ニュース、③業界動向、④現在の株価などを含むすべての要素を考慮して行わなければならないということです。そのため今回ご説明することは、賢明な投資のために「当然」最初にチェックすべき項目にすぎません。

これまで、SEC公示の財務諸表の見方をシリーズで説明してきました。もし、皆さんがこの「SEC公示分析講座」をしっかりと追ってきたのであれば、英語で書かれた連結貸借対照表(Consolidated balance sheets)連結損益計算書(Consolidated statements of operations)をある程度は理解できるようになっているはずです。同業界の複数の会社を短時間で簡単に比較するためには、まず財務比率(Financial ratio)をチェックする必要があります。


財務比率(Financial ratio)とは?

会社が総売上を上げ、営業費用を支出するなど、会社内で動くすべてのお金の内訳をドルの数値ではなく、パーセンテージで比較して、会社がどれだけ効率的にお金を稼いだり使ったりしているかを知ることができる指標の総称。

この財務比率(Financial ratio)は、大きく分けて収益性比率(Profitability ratios)、短期流動比率(Short-term liquidity ratios)、長期流動比率(Long-term liquidity ratios)に分けられます。この下には、さらに詳細に分けて見る指標が存在します。

私たちが会社の財務状況について必ず確認しておくべきことは、上の写真に示されている指標です。これを作るのも大変でした…。それでは、本格的な説明を始めましょう。まず、簡単に説明すると、このように分けられます。


収益性比率(Profitability ratios)は、会社がどれだけ効率的にお金を稼いでいるか、収益性を測定します。
短期流動比率(Short-term liquidity ratios)は、会社が請求書の支払い、未払い債権の支払いなどの短期の財務約束をどれだけ簡単に果たせるかを測定します。
長期流動比率(Long-term liquidity ratios)は、会社の運営に使われた資本が株主からの投資や借入、長期の金融など、どのように調達されているかを表します。

なんだかとても難しそうに見えますが、それほど複雑ではありません。理解してしまえば簡単です。
私たちアメリカ株式義塾が、今回から2回に分けて関連するすべての内容を完璧にご説明いたします。賢い投資家を目指して、一緒に進みましょう!

収益性比率(Profitability Ratios)

会社がどれだけ効率的にお金を稼いでいるかを見られる最も直感的な指標です。
当期純利益の絶対的な数値はビジネスの規模を示す指標となり得ますが、それ自体で企業の業績を客観的に評価するのは難しいです。大きな企業がより多くのお金を稼ぐのは当然だからです。
当期純利益を正確に評価するためには、利益を、事業に投下した資本の量や売上収益と一緒に比較する必要があります。そのために必要なさまざまな指標の総称が収益性比率(Profitability Ratios)です。同業界の他の企業と比較する際に最初にチェックすべき指標です。
具体的にはどんな指標があるのか見ていきましょう。


総資産利益率(ROA), ROA

Return on total assets

総資産利益率(ROA)は、会社が事業に投資した総資産(Total Asset)に対して生み出された利益を表す尺度であり、その資産がどのように調達されたかは考慮しない、非常に簡単な尺度です。当期純利益は、式ではNet Profitと書かれていますが、Net Incomeに置き換えても構いません。会社の総資産は、会社の規模を測る一つの方法となり得るため、この比率は利益を生み出すために事業の総資産を活用する経営陣の能力を測ることのできる包括的な指標です。ROAが高いほど、より効率的にお金を稼いでいると見なされます。

これを計算する際に重要な点が二つあります。まず第一に、税引前の当期純利益で計算しなければならないことです。税金は外部要因だからです。第二に、分母に該当する総資産を計算する際、単純に前年の10-Kに記載された総資産の値を用いることもできますが、可能であれば最新の四半期の10-Q報告書で更新された総資産と前年の10-K報告書に記載された総資産の平均値を用いることを推奨します。総資産は四半期ごとに変動するからです。


使用資本利益率, ROCE

Return on capital employed

使用資本利益率(ROCE)は、事業に投下された資本に限定して、その成果を測定するために最も広く使用されている比率です。例えば、会社には資産として計上されているけれども、事業に使われていない建物や土地があることもありますよね? そのため、純粋に会社本来の営業活動から発生する収益性を測定する指標としてROCEが用いられます。 ROCEは、総資産に対する利益率を測定するROAとは異なり、事業に投下された資本だけで測定します。 

しかし、会社が持っている資産のうち、どれが事業に使われていてどれが使われていないのか、いったいどうやって知ることができるのでしょうか?

実際、これは少し難しい部分です。まず、似た概念として投下資本利益率(ROIC, Return on Invested Capital)があります。ROCEとROICはどちらも企業の事業収益性を分析するために使用されますが、この二つは基本的に、企業が使用する資本の量に対してどれだけの利益を生み出すかという効率性を測定するという観点では似ています。ただし、ROCEでいう「使用資本」はROICでいう「使用資本」よりも広範で、計算も簡単です。なので、ここではROCEを基準に話します。

一般的に、ROCEの分母値である使用資本は簡単に計算されます。使用資本(Total capital employed) = 総資産(Total assets) – 流動負債(Current liabilities)です。この公式を覚えておけば大丈夫です。


純利益率

Net profit margin

この純利益率は、総売上高と当期純利益(Net income)の比率を測定するものです。非常に簡単です。純利益率は業界によって水準が異なります。一部の産業、特に製造業のような場合は、比較的に低い純利益率を持つ傾向があり、代わりに高い総売上高を上げることでで補われます。反対に、純利益率が高いIT技術産業や高付加価値産業の場合、総売上高自体は少ないかもしれません。分析する企業の純利益率が業界平均より高ければ、良い会社だと言えるでしょう。

しかし、純利益率が高いからといって必ずしも良い会社だとは限りません。より重要なのは、その間の純利益率がゆっくりではあるが安定的に維持されながら高まっているか、急激な変動があったかを必ずチェックすることです。会社の利益構造はそう簡単に一瞬で変えることはできません。もし前四半期や前年度と比べて大きく純利益率に変動があった場合、高い確率で保有資産を売却したなど普段とは違う営業活動をして当期純利益を一時的に大きく増やしただけである場合が多いです。
この純利益率の傾向が持続的にゆっくりと増加していれば最も良い会社であり、増加しないまでも毎年一定の水準を維持しながら安定して当期純利益を生み出している企業が次に良い企業だと言えるでしょう。


総資産回転率(総資本回転率)

Net asset turnover

総資産回転率(総資本回転率)は、経営陣が営業利益を創出するために事業の総資産(総資本)をどれだけ効率よく活用しているかを測定します。上手くいっている飲食店は、絶えることなくお客様が出入りし、料理が提供され続けますよね?同様に、上手く管理されている事業は、機械や設備の稼働時間を最小限に抑え、資産のほとんどを営業活動に投入します。この総資産回転率が高い場合、少ない投資で多くの売上を上げていることを意味しますが、高すぎると、過剰取引を示唆する可能性があります。逆に、総資産回転率が低すぎると、資産管理が非効率である可能性があります。

総資産回転率も同様に、分析したい業界の平均を調べ、その平均に近いか、やや上回る数値であれば最も望ましいです。ここで使用される分母は総資産(Total assets)の場合もありますが、より正確な測定のためには総使用資本(Total capital employed)を使う方が良いでしょう。計算方法は同様で、総使用資本(Total capital employed) = 総資産(Total assets) – 流動負債(Current liabilities)です。


自己資本利益率, ROE

Return on equity

 自己資本利益率(ROE)は、当期純利益を自己資本(Total stockholders' equity)で割って計算する財務成績の指標です。

しかし実際、以前にも紹介したことがありますが、自己資本は会社の総資産(Total assets)から総負債(Total liabilities)を引いたものと同じなので、ROEは結局のところ純資産収益率とみなされることもあります。ROEは価値投資で最もよく使われる指標であり、企業の収益性とその企業がどれだけ効率的に利益を生み出しているかを示す尺度とされています。アメリカの投資家は、S&P500企業の長期平均(14%)に近いROEを許容可能な割合とし、10%未満は良くない企業だと見なすことが多くあります。


クルーズ船会社3社で実習

2019年度のRCL、CCL、NCLHの5つの収益性指標を比較してみましょう!

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