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赤ちゃんの探索とは

前回の記事では「赤ちゃんは面白いので、子育てのなかで赤ちゃんが面白いことをしてくれる場(=探索環境)をバンバン作っていこう!」という話を書きました。今回は、その「赤ちゃんの探索」ってなんなの?という話を書きます。

今回の記事で伝えたいこと
・「探索」とはRPGの「レベルあげ」に似ている。
・赤ちゃんの探索にはさまざまな「学び」が埋め込まれている
・「あなたは世界を楽しむために生まれた!」という世界観が重要
・赤ちゃんの体験(BX)と、それを提供する親の体験(PX)の設計も必要

探索とはRPGの「レベルあげ」

まず「探索」とはなにか。生物学、脳科学、発達心理学などで定義がちがいますが、「未知の物事をさぐり、調べること」と言えそうです。

たとえばロールプレイングゲームには「村の若者がじつは伝説の勇者であることがわかり、恐怖の大魔王を倒すべくたちあがる」というストーリーがあります。ラスボスとの決戦に向けて世界を旅し、山をこえ、海をこえ、仲間と出会い、武器や魔法を習得し、レベルをあげて成長していきますよね。

今日の現実世界には、知識や技術を形式通りに教わるのではなく、自分で調べ、やってみて学べる情報環境があります。そのなかで、インターネットを活用する、街をあるく、本を読む、人とはなす、料理をつくる、といった行為も探索の活動です。それらは世界を楽しむための「レベルあげ」だと言えると思います。

赤ちゃんの探索には「学び」が埋め込まれている

では、赤ちゃんにとっての「探索」とはなんでしょう。前回「探索とは、赤ちゃんが世界の意味を知るために自ら働きかけたり観察したりすること」と定義しました。

探索行動のなかには「学び」が埋め込まれています。感覚を働かせることや、身体の運動を調整すること、予測を立てて論理的に考えること、ひとの身振りや言動から推察することといったことです。同じことを繰り返し遊ぶなかでふとしたときに新しいことがわかったり、できるようになったりします。

赤ちゃんの探索は、世界を楽しみ、学ぶことそのものです。

「物と身体」、「心と表現」を探索する

赤ちゃんは周囲の物や人間との関係のなかで、それらを楽しみます。おおきくわけて二つ、「フィジカルの探索」と「メンタルの探索」がありそうです。

フィジカルの探索は、物体や身体について。たとえば、柔らかいファーに触れるとき、そっとなでれば毛のふわふわした感じがしますし、毛をにぎればむしりとれます。自分の動きに対して、物がどんな反応をするかを予測し、確かめ、考えていきます。

メンタルの探索は、人の心と表現について。泣いていたら人がなだめてくれた、ほほえみかけたら人が言葉をたくさんかけてくれた、という経験から、「こうするとあの人はどう思うかな?」ということを探索します。

そのとき、赤ちゃんが「どのような物語のなかにいるか」が重要です。RPGの幕開けのように「あなたは世界を楽しむために生まれてきたのだ!さぁ探索を始めよう」という世界観で周囲の環境ができているか、ということです。

この二種類の探索をいったりきたりして、赤ちゃんは世界の意味を学んでいくのだと考えられます。フィジカルの探索については第3回、メンタルの探索については第4回でご紹介します。

探索環境のつくられ方

では、探索をいつ、どこで行うのか。子育てに直接関わる話です。赤ちゃんにとっての探索の環境とは、たとえば家のリビング、食卓、ベッド、公園、公民館、道端、お店の中です。ひとまず、家の中を想定してみます。

家の間取りやレイアウトは、大人によって作られています。食事も、食べさせ方も、大人によってある程度方向が作られています。赤ちゃんはそうして与えられた環境のなかをガシガシ探索するのです。

突然話が変わりますが、Takramの佐々木康裕さんが、ビジネスを設計するときに「顧客体験(Customer eXperience)と「提供者体験(Backend eXperience)」の両方を考えることが重要だというお話をされています。

この中にあるCXとBXに関する図に、赤ちゃんと親を代入するとぴったり当てはまるなと思い、参照して図をつくらせていただきました…!

ここで特に重要なのは、親がどのように赤ちゃんの体験(BX)を創出しているか。そして世の中のサービスはそのような親の体験(PX)を、親が楽しめるように設計できているのか。この辺りについては、このシリーズの第5回に書こうと思っています。

まとめ

好奇心旺盛でフットワークが軽い人は「探索」が活発です。実は赤ちゃんのころからそれにつながる活動をしています。

それらの活動はフィジカル(物体と身体)の探索、メンタル(人の心と表現)の探索に分類できそうです。

そのとき、赤ちゃんに探索を促す物語世界ができあがっていると、赤ちゃんの体験(BX)はよりよいものになります。

そして実はそのために、そのような環境を設計する側、つまり親の体験(PX)の設計が重要なのだと思います。

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