嘘つきの跡地

どこかの物書き

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最近の記事

ひかりもの

「」女 『』男 女:皆どうやって上手に生きてるんだろう。 (オフィスの音) 「はい、すみません…以後このようなことが無いように気をつけます…」 女:人生何周したら、躓かないで歩けるんだろう。 (電話の音) 「ごめんお母さん、来年は帰るから。いや、仕事忙しくて」 女:仕事も、家族も別に平凡だけど、平凡だから、やり切れないものばかり溜まっていく。 (家の扉を開ける音) 「…ただいま」 「洗い物…しなきゃ」 「あーーダメ、眠い。1回寝る」 (スマホをいじる音) 「…L

    • 傷つける

      「」女 『』男 (文字を書く音) 「口下手ってより、ぶっきらぼう」 (冷蔵庫開ける音) (部屋の生活音) 『うわ、美人』 「んー?」 『今の女優』 「あー、今度のドラマの」 『………(ため息)』 「え、なに?」 『いやこれが俺の彼女かって思って』 「マッジで最悪」 『え、そんな本気で怒る?』 「そういうの面白いと思って許されんの、小学生までだから」 『うわガチ説教じゃん。逃げよ逃げよ』 「もー…(ため息)別にいいけど」 『うわ、めんどくさい女だ』 「そういうとこだっての

      • 名もなきハッピーエンド

        「」女 『』男 <>モブ男 (電車が通り過ぎる音) 男:ドラマや映画だったならって 多分誰でも考えたことがあるセリフを 空想してた。 ハッピーエンドを迎えられるのは ドラマや映画の中だけだって知ってたから。 (人を揺する音) <お客さん、お客さん、終電終わってるよ> 『あ、は、はい』 <なんてとこで寝てんの。風邪引くよ。帰ってもらわないと> 『あ、すみ、ません…』 (外を歩く音) 『……帰るか』 (グラスの音) 『あと1杯〜』 「何言ってんの、明日から仕事でし

        • 本を読んでいるのか、めくるページの音を聞いているのか、どっちだろうって思うときがある

          冷たい言葉を使う人は優しい人なんだと思う。嘘も何も無い。本心だから。純度百の敵意の方が、真綿に包まれた嘘よりマシだ。

          冷たい言葉を使う人は優しい人なんだと思う。嘘も何も無い。本心だから。純度百の敵意の方が、真綿に包まれた嘘よりマシだ。

          しょうもない話

          トラウマという言葉は便利だ。 それでいて逃げだと言われる言葉でもあるから、困ってしまう時がある。 どうしようもない記憶がある。 まだ10代の、高校生の頃の、子どもの頃の記憶。 朝4時に叩き起される。1分でも遅れたら学校に行けなくなる。 冷たい雑巾と、古びた畳のにおい。 あの家の階段は少し狭かった。 ヒステリックな叔母さんと 壁を殴り、唾を吐きながら大声を出す叔父さん ボケて私のことを認識しなくなったおじいちゃんとおばあちゃん あの家は、地獄だった。 母の実家だっ

          しょうもない話

          振り返ったら

          男「」女『』ナレーション --- 最初から多分ズレていた 世間の言葉とか、認識とか そんなのじゃなくて 多分、私たちの歩く速さが 『うわ、雪降りそう』 耳障りのいい言葉が 悲しくなって、寂しくなって それを口に出すのも、寂しかった 優しい言葉じゃなくて 本心が欲しかった その本心が、自分の求める心であるようにと そう思うような日々だった 『コート出せたかな』 『クリーニングのタグは切るんだよって、教えたら良かった』 貴方は少しだけ間抜けな人だった 箸

          振り返ったら

          振り返って

          『』女性 「」ナレーション 男性 -- 今日の君は笑ってた 「いつくらいの夢だろ」 考えない日も 夜に現れない日もない 「付き合いたて、じゃないか」 「指輪つけてたし」 洗濯物をしてる君の横で 覚えたてのギターを弾いて 君が僕に合わせて鼻歌を歌って 「あ、ガスの支払い忘れてた」 「…こういうのも、任せちゃってたんだよな」 もしかしたら笑わなくなった後の君を 上書きしたのかもしれない 都合よく、ちょうどよく 「うわ。雪降りそう。コート出さなきゃ」 「

          アンマー

          母《》 娘「」 弟『』 モブ1 〈〉 モブ2 【】 「やば、遅刻する!」 《ぱれー、お父さんに行ってきますした?》 「あ、忘れてた」 『姉ちゃんひっでえ』 「急いでたの!」 (仏壇のりんの音) 「お父さんおはよ。行ってくるね」 『とーさん、俺も行ってくるー』 「あ、ついでにしたな」 『遅刻するぞ姉ちゃん』 「誤魔化さないの!」 《2人とも落ち着きないなもう》 「それじゃ、行ってきます!」 『行ってきまーす』 《はーい、気をつけてね》 (走る音) 『自転車あったらなあ

          春泥棒

          『』→男 「」→女 “”→女2 (歩く音)(風の音) 「あ、来た来た!もー、ギリギリだなあ!今日には散っちゃいそうだよ!」 『まだ、咲いてるか。今年は来れないかと思った』 「お仕事忙しそうだもんね」 『花見客は…ほとんど居ないな』 「ゆっくり見れていいんじゃない?」 (犬の声) 『あ、こら勝手に走り出すな』 (犬が駆ける音) 「(笑い声)サクラはお転婆だなあ」 『たっくもう…誰に似たんだか』 「あ、今軽く私のことバカにしたでしょ」 『すぐ走る割にすーぐ座る。追いか

          夜永唄

          夜永唄 『』maimai 「」haru -- 『綺麗に、好きだったと言えるのは、多分もう、思い出せないくらい前の話』 「君のことは大切なんだと思う。でもそれだけ」 『私、重いのかな』 「終わらせる方が、早いんだろうけど」 「それすら、めんどくさいと思ってしまうくらい、俺達はずっと一緒にいた」 (外を歩く音) 『はる?』 「ん?」 『さっきから、ボーっとしてるけど、大丈夫?』 「ああ。仕事、疲れてて」 『……ごめん、しばらく会えてなかったから。会いたいなって思って』

          10月無口な君を忘れる

          「おはよ。朝だよ。朝っていうかもう昼だけど。 私もう時間だから行くね。今までありがとう。 バイバイ」 「最後くらいこっち見てよ」 (部屋のインターホン) (扉を開ける音) 「あ、いらっしゃい」 『やっほ、ちょっと寝かせて』 「ん、いいよ」 (部屋を歩く音) 「何時に起こす?」 『4時で』 「お店開けるの8時じゃなかったっけ?」 『まあ仕込みとか色々あるんで』 「店長は大変だ」 『そういうこと』 「お疲れ様」 『ん、ありがと』 「昼夜逆転ね」 『まあ慣れたもんですよ』 「

          10月無口な君を忘れる

          親愛なる

          背の低い人だった。私も大概低いけど、彼女は私より5cmほど低かった。 父も母も平均位はあるのに、私が小さいのは絶対に彼女のせいだ。 杖をついていたから尚更、遠くから見ると子供と大差なかった。 しわしわの顔は、よく日に焼けていた。悪くなった足をものともせず、周りに何を言われようが畑に向かう人だった。トマトもキュウリも、彼女が作ったものが1番美味しいと未だに思う。もう3.4年は食べてないけど。 厳しい人だった。母より父より優しいのに、怒らせたら母より父より容赦がなかった。6歳の時

          ヨルノカタスミ

          ヨルノカタスミ 男:感傷に浸った振りをする時、なんとなく、タバコを吸うと、格好が着く気がしてた。 (ライターの音) 「(咳き込む)……あー、まず」 「…会いたいな」 (缶を置く音) 「……会いたい」 (部屋の生活音) 「小説家?」 『そう、書いたこととかないんだけどさ』 「へーいいんじゃない?」 『適当』 「なんでだよ、応援するよ」 『昔っから好きな本があって』 「なんてやつ?」 『夜のピクニック』 「ふーん」 『興味無さそうだなあ』 「本読まないもん」 『知

          ヨルノカタスミ

          願い

          「好きな人がいるんだよね」 『...... そうなの?』 「うん」 『どんな人?』 「全然、 私のこと見てない人」 『片想い?』 「どうかな。でも、嫌われたりはしてない」 『あー友達以上恋人未満ってやつだ』 「うわ、なんかやだなあその言い方」 『ごめん』 「でもまあそんな感じかな」 『両想いになりたい?』 「うーん......」 『え?違うの?』 「その人の好きな人になりたいかな」 『あー...その人にも好きな人いるんだ』 「うん。 分かりやすいんだよね。 私がその人見て

          はろーぐっばい

          (外を歩く音)(着信音) 『こんばんは』 「ん、どしたの」 『今平気?』 「大丈夫。仕事帰り」 『明日は大晦日だって言うのに、おつかれ』 「ん、ありがとう。それで?なに?」 『……あのさ、今年も行かない?初詣』 「…いいよ。特に予定ない」 女: また負けた。そう思った。 賭けをしている。何年も。くだらない賭け。 君から、年の初めの誘いがなかったら この恋を諦めるという、賭け。 『待ち合わせ場所は?』 「いつものとこでいいよ」 『分かった。じゃあ、1日の朝に』 「りょー

          はろーぐっばい