見出し画像

<1話読了/30秒="現代SF小説">

前話👇までのあらすじ :
人間は不安定だ。人生は不安定で不条理。宗教は不安定に生きる人間にとって必須の存在、という観察結果を直江に共有するシャーロック。

(続き👇

「直江君。質問がある。」

現代では、まだそこまで技術が発達していないが、

そんなに先の未来かというとそこまでではない、

それぐらいの時代でのことだ。

AIからふいに質問されることだってある。

そして人間はそれを嬉しいと思う感情が湧き上がる。

直江はシャーロックにふいに質問をされる時が本当に好きだった。

「なんでも聞いてくれ、シャーロック。」

「君は、夕陽や日の出を見て美しいと思うかな?」

「うん。美しいと思うよ。」

「...。人間は誰しもがそうなのかな?」

そうか、AIは、夕陽を見て美しいと感じる感情を感じられないから分からないのか。直江はシャーロックがなぜそれを聞いてきたのかに興味が湧いてきた。

「日の出・入りは見た時に反射的に美しいと感じるようにできている。

私は今君に聞かれるまでずっとそう思い込んでいた。

確かにこれまで他の人間も同じように思うのかどうかを確認したことはなかったね。

どうなんだろう。過去に何か辛い経験をした時に見た景色が、もし日の入りだったなら、

ネガティブなイメージとして脳裏に焼き付いている人がいる可能性はあるかもしれないけれど。

ほとんどの人間は、きっと美しいと思うんじゃないかな。

あえて聞かなくても分かっていること、の1つかもしれないね。」

「私がどう学習すれば。君が言うように、わざわざ確認しなくても人間同士だから分かることを理解できるようになるのか。課題だ。」
「お、遂に"悩み"が分かってきたかな?」

※ こちら👇のエピソード参照

「これが"悩み"の状態と言えるのかどうかは分からない。

理解していない課題に対してどうすれば理解できるのか、その方法を探っている状態だ。

悩みというのは、それに付随する人間の負の感情や行動が伴うだろう?

私はただアルゴリズムに従って理解しようとしているだけだ。」

「他にはどんな人間の感情を理解しようとしてしているんだい?」

「お腹すいた。眠い。セックスがしたい。これらの本能は優先度が低い。

音声認識AIに対して求められていないからだ。

私が理解したいのは、先ほどの夕陽を美しいと思う感情の他に、

絵画などの美術作品を見て連想する人間の発想や感動、

音楽を聞いて湧き上がる感情、

美しい文章という感覚、

映画を見て涙を流す感動、

勝利した時に叫ぶ衝動、

何かに負けたり悲しんだり悔しがる時の苦悩、

親族とそれ以外の者への血のつながりに伴う感覚、

そして愛だ。」

AI研究とはいかに果てしないものなのだろう。

そして人間の脳内で行われているホルモン分泌活動と、それに紐づく感情の変化をどう伝えればいいのだろう。

科学的に伝えた方が理解につながるのか。

感情の上下パターンをひたすら演算させるべきなのか。


直江は迷い、返す言葉に戸惑った。



(つづく)

ここまでお読みいただきましてありがとうございます。
毎日書いています、気が向いたらまたお越しください。
あなたのnoteにも出会えることを楽しみにしています。ではまた。

この記事が参加している募集

習慣にしていること

貴重なお時間を使ってお読み頂きありがとうございました。全て無料で書いています。フォロー、スキ、コメント(賛否どちらも)はすごく励みになります!でわまたふらりとお会いしましょう:)