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短編もしも小説 「鳥の顔をした石像の正体」 - 2 岩壁に掘るということは

1 串に刺される恐竜の子孫 からの続き。

「はいすいませんすいません。ところで意外じゃん。あれ系の番組を見るなんて。いっつもは『愛の不時着』とかあーゆーやつでしょ。」

「日頃のストレスを解消するには、声に萌えたいわけ。分かる?明夫様の声が聞けるんだったら、究極的にゎモノはなんでもいいのよ。DEATH STRANDINGの明夫ボイスのマスクキャラが出てくるトコばっかを早送りで見ちゃったよね昨日。」

Youtubeで躍起になって10秒早送りしながら、そのシーンだけを探しているナオミの姿が目に映るようだ。一見ナオミは、今時女子そのままに見えて、割と男っぽいというか、インドア男子が好きそうなゲームやら映像ものも好きらしく。その守備範囲の広さと、でもキッチリ女子っぽいのも押さえていることから、話題も会話も途切れない。シュンにとってその楽さは貴重だった。

「ところで、この皮、食べないからあげる。」

「あ、そう。じゃ。」

焼き鳥の皮串を手に取り、ずっと気になっていたことを聞いてみた。

「鶏肉って皮こそがうまいと思うんだけどな。ケンタもピークはやっぱ皮じゃね?」

「なんかぶつぶつが気持ち悪いのよね。」

「あー、それ、うちの母親も同じようなことを言っていた気がする。」

コケコッコーと生きている鶏を見たがらない女性が割と一定数いるような気がするのはおれだけなのだろうか?とシュンは心の中でつぶやいた。
、、中には男性でもいるのかな。

「鳥皮って、あのトサカ顔と、感情のない目が浮かんできて、キモいってゆーか。」

そのキモいらしい動物のケツを揚々とほおばりながら、そうのたまるナオミ。

「そういえば昨日のドキュメンタリーで出てきた宇宙人、なんてーんだっけ?」

「アヌンナキ」

「それそれ。アヌ...」

「ンナキ」

「そのアヌちゃんが宇宙人で。金を掘りに地球にやってきて。自分でやんの疲れるからって奴隷として使うために人間を作って。で、どっかいっちゃったんだよね。ま、それはいーとして。」

いやそこが面白いとこなんだけども。と思ったが黙って聞いていた。

「神話とか聖書に出てくる天使って、アヌちゃんたちのことなんじゃないかなーって、思わない?!」

入った。これはいつものナオミの”突然スイッチ”のやつだ。
それが「愛ふじ」の中身になってしまうと、シュンにとってはそこからひたすら無心になる苦行の時間が始まる。今回はありがたいことにシュンの好きな分野でスイッチが入ってくれた。大塚明夫ボイス様々だ。

「いいねー。俺は日本の天狗もそうなんじゃないかと思った。」

「天狗ねー。確かに、天狗も翼があるね。天狗の鼻が長いのは、鼻の低い日本人が外人さんを見たときに、その長い鼻を見てデフォルメされたもんかとか思ってたけど。天狗アヌちゃん説も面白いね。」

「よく考えたら、紙に絵描くんじゃなくて、壁に絵を掘ってた時代に。かったい岩壁にすんごい時間かけて掘るんだったら、本当に描きたいものを掘るよね。あとはモデルが目の前になくても、その辺でよく見かけるから頭の中のイメージを再現しやすい被写体を。スマホでカシャってできないわけじゃん当時ゎ。で出来たアヌちゃんの絵が、人が立ち絵で、羽根が生えてて、しかも顔が鳥(笑)。書きやすっ!覚えやすっ!」


(続く)

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