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1話およそ1,000文字。スキマ時間にサクッと読める近未来短編SF小説。

AR彼女ミヤと付き合う未来の青年タケルの視点で、現実と拡張現実のミックスワールドで体験する未来のテクノロジーで、本能までもが拡張される日常を描く。
未来で待っている人々のニーズを先取りするフューチャーマーケティング風SF小説。

29 拡張現実は、君を肯定し続けてくれる からの続き。

膨大な恋愛パターンを学習したARガールフレンドのAIは、
人間の恋愛感情による高揚を引き出すことが出来る。

ラブドールなどを駆使した物理接触が要る恋愛・慈愛・性的な欲求を満たせるようにもなった。

子どもを作るといった明確な目的がない限り、対人関係において、よりストレスの少ない拡張現実から享受できる快感にその身と時間と資本を投じ続けるようになっていくのを止めることはできなかった。

それに止める理由もなかった。
現実と拡張現実のミックスワールドが確固たる経済圏を築いてからは尚更。

現代でも、未来でも、文明と生活の質を維持するためには、多くの人は経済を優先する。

前述したように、現代でも既にその兆候が出ている少子化社会。

未来でも人は人と恋愛し、結婚もする。少なからず子どもも産む。
もし恋愛の先に、子どもをつくるというフェーズがあることが正規路線であるという規定概念があるものと仮定した場合。

現実と拡張現実のミックスワールドでのAR人間との恋愛には、既に人間の幸せを満たすというフィードバックはできていても、
子どもを作ることはできない。

どんなにAIが優秀でも、仮に拡張現実の世界でバーチャルな子どもを作ったとしても、タケルがミヤと手を繋いだ時のようにグローブで感触は感じることはできるかもしれないが、物理的な現実世界に存在しない子どもをプログラムすることは、危険なことであるという共通認識がこの時代にはある。

AR恋愛ゲームの運営企業が運営を停止した瞬間、生きる糧を失い自殺を選ぶ人が出てきた前例が正にARへの依存の負の代償例だ。

それがもし、長年の蓄積によって築くことのできたかけがえのない家族や子どもを拡張現実内に所有したとして。
倒産やハッキングなど、何らかの理由でサービス停止となった場合に、
自分のAR家族を、ある日突然永遠に失うという悲劇に見舞われてしまうことは想像に難くない。
ただでさえ超少子化社会の未来で、そのリスクを負うことはできない。

ところが人間は、本能では子孫を残したいはずなのだが。
実際には経済を優先するようになってしまった。

拡張現実とのミックスワールドでは、現代にはありえない想像を超えた楽しみや幸せが享受できると同時に、
ARありきの経済とAR人間とのストレスのない生活を選り好みするがあまり、少子化を更に助長させてしまうという
諸刃の剣といった様相の社会問題がじわじわと顕在化しつつあった。

、、しかし、タケルのような奥手で恋愛下手な青年にとっては、そんな社会問題は、いつか誰かがその内解決してくれるはずのものでしかない。


(つづく。次回最終話。)


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