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短編もしも小説 「鳥の顔をした石像の正体 - 最終話 知らないことを、知らない

「トトが本当に昔、奴隷として使うために人間を作ったんだとして。実は働かせるためだけでなく、人間は食料でもあったんだったとしたら。こわくね?」

「こわー。ちょっとやめてよ食事中に。」

「おれさ、こう見えて最近筋トレ始めたんだけど。めっちゃプロテイン飲まなきゃならないんだよ、最近の筋トレ法って。とにかくタンパク質を摂りまくって筋肉を効率よく肥大させようとするのね。」

糖分と脂質の塊を頬張りながらうんうんと空返事なうなずきで答えるナオミ。

「タンパク質取るのに効率良い食べ物の代表例っていうのが鶏のささみなんだけど。鳥人間にとっては、食料でもある人間が"鳥"肉を取り入れてくれた方が好都合なんじゃないかって思ったんだよ。ほら、今順調に人口って増えていってるじゃん?

牛や鶏を家畜化する方法を、元々人間を家畜化していたトトから教わったんだとしたら。
いつかの未来、いずれ来る鳥人間一族による食料の対象として、肉食ってタンパク質を蓄えて丸々太った人類を食うために…」

「ちょっとーぉ、あんたのはハンコックの神話と違って、ただのホラーだから。」

「人間だって機械作る前は、水牛使って田んぼ耕して、いずれ食って…いや、ちがうな」

なにが違うんだ、と思うナオミ。
シュンは声色を変える。

「かつて哺乳類は恐竜の捕食対象だった。その後恐竜は鳥に、そして霊長類の覇者である鳥人間にまで進化した。奴隷として、そして食糧として人類を家畜として生み出した。そして今は、その人類の子孫が鳥を家畜にして、その人口をかつてない程増やしているのだ。もしかしたらそれは鳥人間にとっての全自動畜産が成功していることを意味しているとも知らずに。。」

ヒュン!と、シュンの目の前に生クリームピラミッドの上に乗っかってたさくらんぼのへた、の槍が飛んできた。
それを手に取る所作を見ていたので、焼き鳥の串と違って恐怖はなかったのであえて避けなかった。
案の定痛いもんでもない。

そのへたを手にとり、見つめながらシュンは考察した。大塚明夫の声マネで。
「焼き鳥の串は飛んできたら恐ろしいが、さくらんぼのへたは平気だ。カラスやワシは時として恐怖の対象だが、ハトは逆に平和の象徴でもある。」

「なにそれww。ハトは平和の象徴、、じゃねーよw。」

オシャレなカフェのテラス席で談笑する二人を、一羽のカラスが見つめていた。
その瞳の奥で視覚情報が松果体を通って変換された素粒子信号を受け取る存在がいることなど、そのカラスは知るよしもない。

(終わり)


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