わんちゃんの肥満に潜む危険と、適正体重を維持するためにできること
◎獣医師執筆◎
コロコロとしたワガママボディで一生懸命歩くわんちゃん…。目に入れても痛くない程に可愛いですよね。しかし、わんちゃんも人と同じように、肥満は身体によくないことが分かっています。わんちゃんの肋骨(ちょうど胴の前部分)を触った時にコリコリと骨が触れるのが理想体型。もし肋骨が触りにくいな…と思ったら、それは肥満のサインかもしれません。
肥満によってなりうる病気とは?
肥満は健康にどのような悪影響を及ぼすのでしょうか?いくつか見ていきましょう。
●関節炎
体重が重くなると関節に慢性的な炎症を引き起こすと言われています。歩くのが辛そう、お散歩に行きたがらない…そんな時は、関節炎を疑いましょう。
小型犬に多い膝蓋骨脱臼(いつがいこつだっきゅう)、通称パテラを生まれつき患っているわんちゃんは、肥満により脱臼がひどくなってしまう可能性もあります。
●椎間板ヘルニア
関節炎と同じように、腰が痛くなってしまう椎間板ヘルニアを起こす可能性も高くなります。ダックスフンド・シーズー・ペキニーズなどの犬種は、椎間板ヘルニアが遺伝的に起こりやすいと言われているので注意が必要です。ヘルニアは進行すると後ろ足が麻痺してしまい歩けなくなり、場合によっては手術が必要となる可能性があります。
●気管虚脱
気管虚脱とは、肥満が原因となり気管が押しつぶされることで起こる呼吸疾患です。激しく吠えたり、運動や興奮した後に“ガーガー”とアヒルの鳴き声のような呼吸をするのが特徴です。小型(ポメラニアン・ヨークシャーテリア・プードル)の中高齢なわんちゃんに多くみられます。重症化すると体温調節が難しくなる、呼吸がしにくくなる、という症状が出ることも…助かる可能性はあるものの、脳や肺に障害が残ってしまうこともある恐ろしい病気です。
●脂肪肝
肝臓の細胞が脂肪細胞に置き換わってしまうことを脂肪肝と言います。栄養過剰の状態が継続的に続いてしまうと、脂肪肝になる恐れがあります。
肝臓は“沈黙の臓器”と言われ、脂肪肝の初期の段階ではほとんどが無症状です。吐き気がする、元気がないといった症状が出てくるときには既に肝臓はかなりのダメージを受けていて、多くのケースで入院治療が必要になります。食事量に気をつけ、症状が出てくる前に血液検査や腹部エコーを受けることで、早期発見ができる病気です。
肥満を防ぐためにできること
ここまで、肥満が原因で起こるさまざまな病気についてお話させていただきました。実は肥満は見た目だけの問題ではなく、場合によっては命に関わることもある“生活習慣病”なのです。わんちゃんの肥満を改善するために何ができるでしょうか?わんちゃんのダイエットを健康的に成功させるために、次の事を実践してみましょう。
●運動
わんちゃんも運動をする事でカロリーを消費します。軽く走ることやプールで泳ぐことは、カロリー消費だけでなくストレス発散にも良いとされています。
しかし、無理な減量プランを立てると挫折してしまう原因になりかねません。まずは電柱1本分長く歩くことから、焦らず始めてみましょう。
●食事管理
わんちゃんがダイエットする時は食事管理がとても重要になってきます。殆どのドッグフードでは裏面に体重あたりの給餌量が記載されています。目標とする体重あたりの給餌量を確認して、それより多く食べることがないように気をつける必要があります。今食べているフードからダイエット用のフードに切り替えていくのも良い選択です。
ついつい愛犬可愛さに飼い主さんの食べ物をおすそ分けするのは良くありません。人の食べているものはカロリーが高いだけでなく、わんちゃんにとっては味付けが濃く、体調を崩したり偏食になってしまう可能性があります。欲しがっているから少しだけ…といった気持ちがわんちゃんの不健康につながってしまうこともあります。
ダイエット中はあげたい気持ちをぐっと抑えて、その代わりにたくさん撫でてあげることで愛情表現をしてあげてください。
わんちゃんは一旦肥満になってしまうとなかなか痩せるのが難しいです。ぜひ肥満に潜む危険を知って、わんちゃんの適正体重の維持をしてあげてください。
ダイエットしてみたけどなかなか痩せられない場合は、ぜひ動物病院でお尋ねください。ダイエットのサポートをしてくれるはずです。
中には、病気が原因で太ってしまうわんちゃんもいます。食べる量が減ったのに太っていく、太るのと同時に毛が抜けるようになった、お水を沢山飲むようになった、などの症状があればホルモンの病気で太ってしまっている可能性があります。その場合は、速やかに獣医師に相談しましょう。
●ライター:いぬかい ゆうみ
獣医師免許を保有
●編集:うしすけチーム
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?