【詩】間違えたことのある夜
お月様が死んでしまった日の夜
僕は涙を流しながら台所で玉ねぎをむいていた
どうしてこんなことになってしまったのか
真面目に生きてきたはずなのに
どこでなにを間違えてしまったのだろう
頭の中ではそればかりが溢れて決壊し
後ろ向きな言葉が心の底に流れこみ
呼吸がうまくできず狂ってしまいそうだ
嫌なことばかりが頭をよぎる
くだらないレッテルが気にさわる
遠くで閉まるドアの音がやかましい
人のだらしない仕草が許せない
何度も何度も手を洗いたくなる
手についたヌメヌメが耐えられない
玉ねぎの可食部分が減り続ける
三角コーナーのゴミが増え続ける
めくれどめくれど夜は明けない
お月様は死んだ
死んでしまったんだよ今日の夜に
テレビはいつだってデタラメばかり
それに苛立つ僕の心もデタラメまみれ
面倒臭い涙ばかりがシンクに落ちて
現実はなにひとつ腑に落ちない
真面目に生きてきたつもりだけど
どうして駄目になってしまったのだろう
いったい何がいけなかったのだろう
僕はただ
毎日を精一杯思いやり
嘘をつくようなことはしないで
天真爛漫に
暮らしていけたらそれでいい
いくばくかの
仕合せがあればそれでいいと
そう願っていた
ただそれだけだったのに