Cheap Cheap Entry①道先案内人

突然だが、自分は1人で外出した際に良く話しかけられる事が多い。

7年ほど前に就職のため東北から関東に来た際は、明らかに田舎から来ましたオーラが自分から発せられていたのかキャッチ的なものが多かった。
流石に7年も関東のそこそこの都市に住んでいればそういった類をスルーできるスキルは身についた。そういう話ではない。

ここ数年、道を訊かれる事が良くある。特に男女問わず初老の方が多い。

直近ではとある日の正午付近、桜木町付近を歩いていた時のことだ。
ダイエットも兼ねた目的でみなとみらいにある行きつけの病院から横浜市内の自宅まで片道40分ほどかけてウォーキングする、という習慣をつけはじめた頃だった。

所要を終え、徒歩で自宅への帰路を辿り桜木町駅を通り過ぎた辺りか。
推定50代後半と思しき男性に「横浜駅までの道はどこですか?」と訊かれ、時点で道を説明するには難しい通りにいた事と、自身の帰路も比較的駅に近い為、一緒に行きましょうかと提案し、道中を共にした。
どうやら話を聞くと、用事のため朝から港南台から横浜駅へと徒歩でここまで来たとのことだった。

おじいちゃん、そのルートでは目的の横浜駅は通り過ぎてますよ。と失礼ながらちょっと笑ってしまった。

そんなこんなで20分程かけ無事に横浜駅まで人生の先輩を送り出した。別れ際に何度もお礼を言ってくれ、非常に気持ちのいい御仁だった。

また、自分は音楽ライブ鑑賞が好きだ。
ここ半年ほどはコロナ禍の影響で専ら配信に切り替えているが、ライブハウスやホールなどでロックバンド等の公演を観るのが趣味の一つである。稀に大規模なライブフェスにも一人で行ったりする。

その際、誘われた場合は知人と一緒に楽しむ事もあるが大半は1人で会場に行き、好き勝手に楽しむことが多い。その方が性に合っている。
そんな折にも体感半分以上くらいの確率で誰かしらに声を掛けられる。大体は後者の1人で行った際が多い。

音楽ライブに良く行く方はイメージがつくと思うが、
ライブ会場は開演時間の概ね1時間ほど前に入場開始時間が設定されている。
会場に予め席が用意されているコロナ禍の今は少なくなったが、オールスタンディングのライブハウス等では比較的演者が見やすい前方の鑑賞スペースを確保するために、開場時間より前に自身のチケットの番号通り長蛇の整理列に並ぶケースがある。

自分も経験があるが、会場に到着した際、開場時間には間に合っているが既に整理列ががっつり形成されている場合があり、そこに並び遅れてしまった場合は列にいる誰かしらに声をかけ、自身も番号通りにその形成列に加わるというイベントが発生する。

自分が1人で来ているから、複数人でわちゃちゃしているグループより声を掛けるハードルが下がりやすいというのもあるかもしれないが、特に妙齢の女性に「番号何番ですか?」と確認されることが多い。
自分の他にもそこそこ並んでいるのに何故自分をロックオンした、ってパターンが多い。

指定席(ホール)パターンもよくある。
日本武道館などで開始時間を待ちつつ一人座ってると「すいませんこの席どこですか?」等と恐らく初めてライブに来たのかな、という初々しい10代後半くらいの女子に話しかけられたりというのもあった気が。いや係員に聞いてくれ、知らん。


あとは「写真撮ってくださーいパターン」か。
ライブフェスに行った際、明らかに自分と違う光の世界に住んでいるであろうWANIMAのTシャツを纏ったギャル女子2人組に声をかけられ、
「決して挙動不審になってはいけない…」となんとか陰のオーラを漏れ出ないように…と気を遣いつつ若干上ずった掛け声とともに、彼女等の派手にコーティングされている非常に持ちずらいスマホのシャッターを切った。帰路で恐らくインスタにでも載せるのであろう。撮影者について言及されていない事を祈るばかりである。

九州に一人旅に行った際もそんなことがあった。自撮り棒を持った6人ぐらいの女子大生と思しきグループに写真係を頼まれた。こちらもインスタ案件だろう。

コロナ禍の今は「写真撮ってー」は衛生上もあるのか少なくなったが、駅やその周辺で道を訊かれるイベントは今も度々発生する。ハマの原住民じゃねぇぞ俺は。


ちなみに、自分は写真を撮るときに「はい、チーズ」と言うのが苦手だ。
何故浮つきながら乳製品の名をそこそこの声量で発さなければいけないのか。
自分が概ねそういったシャッターを切る際は「撮りまーす、3・2・1、はい!」といった感じでお茶を濁す。


一応念の為言うと、別にそこから美味しい体験やロマンス展開が待っている訳では決してない。
「声を掛けられる→答えるor写真係」の一瞬の関係性だ。(とあるゲーム実況者グループのイベントに行った際流れでTwitterのFFになった事はあったが)

ただ、自分も年頃の男の子だ。特に妙齢の女性に話しかけられるのは悪い気はしない。むしろ自分で役に立てるのならと声を掛けられる対象は老若男女問わずで嬉しい気持ちはある。
自分にはそういう誰もが話しかけたくなるオーラや雰囲気を放っているのだろうか。だとしたらこの世界で生きていく希望も増える。

「自分だけなんかそんな感じで話しかけられるの多い気がするんだよなぁ、何でだろう?」
2年前くらいか、もう別れたが当時付き合っていた彼女に尋ねてみた。

「○○くん(本名)はさ、ちょうど良いんだよ。別に不細工でもイケメンでもないし、パッと見明らかなコミュ障でもオラついてる訳でもないし、話しかけたらそれなりに答えてくれそうだし、良くも悪くも安牌。」

………なるほど。


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