宇多田ヒカル「BADモード」感想

遅ればせながら。
1月19日に配信リリースされた宇多田ヒカルの8thアルバム「BADモード」感想文です。同日は彼女の誕生日とのこと。

過去のnoteに書いたか覚えてないですけど、自分割と宇多田リスナーで。本人名義で出した音源は大体持ってる。ただ海外盤は聴いてないし今までの7枚のアルバム全曲を余すことなくガチ語りできるかといったらそうでもない。そんな距離感。

いやこれだけのビックネームの大作、音楽ファンとしてちらっとは言及したいじゃないですか。しかし色々タイミングを逃しすっかり音楽オタクに純度の高いレビューがそこらかしこに溢れて語りつくされた感もあり。変なタイミングで今更自分が書くのもなぁと。

でもフィジカルでのアルバムは発売は2月23日で全然まだだったんですよね。それなら、という感じでnoteの下書きを冬眠から叩き起こしてフラゲ日の本日に上げることにしました。
めちゃ予防線張りますが、完全にフィーリングの感想文です。今作、海外の著名なプロデューサーと連携を取って作ったぽいのでそちらにも触れていますが言うほどそこらへん詳しくないです。備忘録までに自身の感想を残したい感じで書きました。

ちなみに、すごいざっくりとした歴代宇多田アルバムの自分の好き度。
(あくまで相対的な評価であって、凡百のその他アーティストの作品と比べたらほぼ全ての作品☆10に近いです)

1. First Love
好き度:(☆☆☆☆☆☆☆)
2. Distance
好き度:(☆☆☆☆☆☆)
3. DEEP RIVER
好き度:(☆☆☆☆☆☆☆☆)
4. ULTRA BLUE
好き度:(☆☆☆☆☆☆☆☆☆)
5. HEART STATION
好き度:(☆☆☆☆☆☆☆☆)
6. Fantôme
好き度:(☆☆☆☆☆☆☆)
7. 初恋
好き度:(☆☆☆☆☆)

という感じで、自分は「ULTRA BLUE」が彼女の作品の中で一番好きなのです。アルバム曲含めどの曲もぶっ刺さる。シングル曲で言うのであれば「DEEP RIVER」時代含めた2001~2005年の時代辺りが好きです。
この時の楽曲の「R&Bのその先にあるジャンルレスかつどこか近未来感」と言うか。元夫の紀里谷和明は私的なパートナーとしては違える相手だったかもだけど、個人的にではありますがMV含め当時の彼女の楽曲における幻想的かつファンタジックな創作に色を付ける存在としては良きビジネスパートナーだったのではないかと思ってます。
彼女の楽曲全体を振り返っても、さすがに1stアルバムの曲はR&B輸入感というか時代性を感じるけど、2ndアルバム以降の曲は全然今でも通用するんじゃないでしょうか。今聴いても「懐かしい」とはなれど「古い」とはならないよな、と。そこが彼女の音楽の凄い所だと思います。

ちなみに彼女の楽曲では「This Is Love」が一番好きです。この曲をフルで初めて聴いた時の衝撃たるや。シングル曲では「Be My Last」。ビジュアル面では「SAKURAドロップス」のMVがめちゃ好み。楽曲自体も上記2曲の次点ぐらいに好き。


その後、「人間活動」の名目で活動休止期間を経てシーンに帰ってきた彼女。自身のライフステージの変化(母の喪失、実子誕生)も大いに影響しているのか活動再開後は全体的に自身のパーソナルな面を全面に出した作風となった印象。自分が当時好きだった彼女の音楽性とはだいぶ変わったものの、復帰作「Fantôme」は流石のメロディ職人ぶりを見せつけられ、詞世界も日本語の美しさが如実に出た非常に綺麗な作品でした。

そして前作の「初恋」。これが正直not for me感があって。
1stを意識したタイトル含めやりたい事は非常に分かる。自身の今のフェーズでやりたい音楽を追求しつつこれまでの「宇多田ヒカルという存在」を見つめ直し「解体」した作品でもありました。

前々作から続く「日本語で歌うこと」の追求と、同時にトラックにおいて海外の制作陣と連携を強めたハイブリッドな作品。冒頭に「あなた」や「誓い」など強い楽曲を持ってきてこそいるものの、全体的にミニマルで落ち着いたリズムの楽曲が多く玄人受けしそうなアルバム。これこそが宇多田最高傑作というリスナーも少なくないでしょう。
ただ自分的に、彼女の音楽は「大衆性と芸術性が両立したポップスであって欲しい」という感情が心のどこかにあって。その観点から言うとかなり後者に振ってるなぁと感じました。

それを踏まえた今作。
宇多田あるあるではあるのだけどまず先出しの既存曲の多さ。ただ今回はエヴァ以外のアニメ・ゲームタイアップもあったり、ドラマ主題歌もあったりで楽曲それぞれの方向性がなかなかに違っており、「これをどう一つにまとめるんだろう」と思っていた。
そこに発表された予想外のタイトル「BADモード」。アルバムの冠名としては流石に斜め上だった。そして配信開始とともに即購入。

で、結論から言うと「これまでの宇多田ヒカルの中でもめちゃくちゃ好きな作品」でした。

前作で感じた自分のモヤモヤ感が少なくなっており、かつ先述した大衆性と芸術性が両立した音楽を見事に創り上げながらもトレンドを意識した「世界で戦える邦楽」と感じました。


以下、自分の備忘録です。


1.BADモード

好き度:(☆☆☆☆☆☆☆)

「Floating Points」というイギリスの音楽プロデューサーと共に制作した楽曲。(お名前存じ上げませんでした)下記でも書きますがこのアルバム、全体的に彼の作風やカラーがかなり出ていると思います。

楽曲面ではかなり大胆に2ブロックに分かれており、1番→サビ→2番という所までは彼女の王道ポップス。サビで登場するブラスや曲名とは裏腹に多幸感に溢れているサウンド。しかし2サビ終わりでアンビエントなトラックのセクションに入り、そこから徐々にジャズ要素を含んだ踊れるリズムへと移行する過程で音数が徐々に増えていく。ただメロ的にはサビの繰り返しではなく緩やかな流れで終わりに向かって行く。
これを1曲にまとめるその手腕は流石だと思いました。

作詞面ではコロナ禍の現況を踏まえた上で、サビ終わりでの「絶好調でもBADモードでも好き度変わらない」を始めとして、「母となった宇多田ヒカルが周りの大切な人達と共に居れることの幸せ」を良い意味で肩の力を抜いて書いた作品なんだなぁ、と思いました。
また彼女の楽曲に時たま出てくる固有名詞。今回は「ネトフリ」「ウーバーイーツ」。ここには時代性が強く表れている気がします。

2.君に夢中

好き度:(☆☆☆☆☆)

こちらは「A.G. Cook」というプロデューサーとタッグを組んだ作品。
ドラマ「最愛」の主題歌とのことで。すみません。観てないです。ただそれも有り今回のアルバムの中でも一般層に届いている印象。

楽曲自体はこのアルバムで一番古い曲とのことで、ドラマのオファーを受け、作品の資料を読んで詞をつけたとのことだそうです。

全体的にラブソングと思えない程トラックが不穏。ピアノの美しい旋律の裏で鳴ってるどこか焦燥感のあるシンセ。既存曲で言うと「Stay Gold」を更にマニアックな音像にしたという印象を受けました。

そしてこの曲のサビ、見事に母音が「u」で統一されてるのよね。その母音も「u~」とあえて粘っこくすることで、鳴ってるトラックも相まって情念のようなものを非常に感じる楽曲。
フラットに聴いた時、比較的認知度が高いこの曲が一番癖が強い曲だな、と個人的には思いました。タイアップの力って凄い。

3.One Last Kiss

好き度:(☆☆☆☆☆☆☆☆☆)

前述したA.G. Cookと初めてタッグを組んだ曲。

言わずと知れた「シン・エヴァンゲリオン劇場版」のテーマソング。映画のヒットと共に活動再開後の新たな代表曲となったと言っても過言ではないでしょう。何だかんだでこのアルバムで結局一番好き。
配信前の時点で発表された曲目を見て、既存曲の中でも特異な輝きを持ったこの曲が3曲目というアルバムのかなり美味しい所に配置されてるのは驚きました。そして作品全体を聴いてなおこの強い世界観を持った楽曲が1枚の中で馴染んでいることにもさらに驚き。

そしてこの楽曲、A.G. Cookとのやり取りの際、完成されたトラックが本人に送られてきた際、彼がベーストラックを入れるのをうっかり忘れていたとのことで、急遽彼女のバンドメンバーのベーシストに弾いてもらったものを入れたとのことでした。結果的にそれが上手くいったと本人が話しています。
実際この曲、エヴァ感があるSFチックなトラックに厚みのある生のベースが乗っかることで単なるアニソンにならず重厚感が増していますよね。そしてクラブミュージックとしても聴ける土台をリズム隊が作ってると感じます。

詞では「忘れられない人」についての想いを強く歌っており、庵野秀明が監督したMVも、「他者から見た宇多田ヒカル自身が誰かにとっての忘れられない人に映るような作品」にしたいとの彼女自身がオファーをしたとのことです。アルバムの流れでこの曲を聴くと作品全体のテーマに沿っていて違う表情を魅せますね。

あとエヴァ的に言うとこの曲、サビの「Oh…Oh…」がエヴァの例のBGM(「EM20」)のリズムですよね。最初全く気付かなかった。

ちなみにこの曲は原曲とは違い、アウトロがMV版になっています。

4.PINK BLOOD

好き度:(☆☆☆☆☆☆☆)

この楽曲は活動再開後から親交が深いアーティスト「小袋成彬」との共同プロデュース。アニメ「不滅のあなたへ」の主題歌だそうです。
アニメは観てないけどこの外したリズムのメロを持つ楽曲が大衆的なタイアップになる世界線すげぇな。

歌詞が宇多田ソングの中でも特に自身をポジティブに強く鼓舞するようなパンチワードに溢れていますよね。それをミディアムで緩やかな曲調、エレクトロなトラックに乗せることで決して暑苦しくならない出来。
このアルバムで最も尺が短く3分弱で終わるので、そのトラックに心地よく耳を委ねていたらあっという間に終わりが来ます。

タイトルの由来は、友達と宅飲みをしていた際「ピンクシャンパン」と「ブラッドオレンジ」を混ぜたカクテルを飲んだことからその2つを組み合わせた造語とのことです。

5.Time

好き度:(☆☆☆☆☆)

こちらも小袋成彬との楽曲。ドラマ主題歌だったらしい。そうなんだ。

この楽曲は配信リリースされたのが2020年とのことで、比較的前作「初恋」の延長線にあるような気も。「Time」というタイトルも彼女のデビュー曲「time will tell」(Automaticと両A面扱いでした)をあえて意識したのかもと。
全体的に溜めを作り裏拍なビートではあるものの、基本的にはシンプルなR&B。そこに現在の彼女のサウンドを表すようなシンセが入る。

詞においても彼女のノンバイナリー宣言だったり、その背景にある体験や思想が詞に現れているのかもと。

6.気分じゃないの (Not In The Mood)

好き度:(☆☆☆☆☆☆☆☆)

こちらはFloating Pointsとの楽曲。アルバムで初解禁の新曲ですね。詞は本人のみですが、作曲に関しては共作。
アルバムで最後にできた曲とのことで、詞が難航したとのこと。締め切りギリギリで本人がロンドンの街を歩いたり立ち寄ったカフェ等で見た風景をそのまま歌詞に乗せ完成したそうです。

そういった詞をあえて表情を付けない淡々としたストーリーテラーの立場で歌っているような感じからのどこか緊張感のあるトラックが乗り結果いや何が「Not in the mood」だよ、めっちゃムードにまみれてるよ、っていう。

そしてこの楽曲、7分半近くあるのだけど曲としては5分を過ぎた所で一応締まってはいて。圧巻なのがそこからの2分のアウトロ。コーラスと徐々に存在感を増すシンセが1分半ほど続き、ラスト30秒で生のドラムによるオーソドックスなビートにピアノが乗っかりまるで映画のような焦燥感溢れるトラックに。そしてぶつ切りのようなタイミングで幕を閉じ流れるように次曲へ。

7.誰にも言わない

好き度:(☆☆☆☆☆☆☆☆)

この繋ぎはやられた。このアルバム至上最強の仕掛けだと思う。「アルバムという作品」を曲順で聴くことの必然性。
シンエヴァを映画館で観た際「One Last Kiss~Beautiful World (Da Capo Version)」の完璧な曲繋ぎを聴いた時と同じ、いや勝るぐらいの衝撃を受けた。

この曲がそもそも強度の高い曲だけど、前曲の流れでこれが来ると完全にトリップミュージック。まるで異世界転生でもしたような。知らない世界に突如連れていかれた気持ちになります。単曲で聴いた時とは全然違った表情を見せる。宇多田ヒカルに限らずアルバムという作品はこれだから最高。

楽曲自体はバンドサウンドやサビで鳴るブラス、要所で鳴ってるコンガ等生音が本来印象に残る曲だと思うんですが、この流れで聴くと曲そのものが持つアンビエントな雰囲気が最高に発揮されています。是非前曲と合わせて大音量で、良い音で、ヘッドホンで聴いて欲しい。

詞もかなりアダルティックな事を言っているのだけど、このサウンドと「誰にも言わない」というフレーズと曲名によって良い塩梅に調整、作用されてかなり品のある楽曲になっている気がする。

8.Find Love

好き度:(☆☆☆☆☆☆)

こちらも小袋成彬との共同プロデュース。

前曲までの流れを一旦リセットするようなアップテンポでハウス調の明るいポップなトラック。
そして彼女の楽曲では珍しい全英詞曲。あえて英詞曲をここで入れ込むことで「気分じゃないの~誰にも言わない」で残した強いトリップ感を落ち着けつつもこの作品に通ずるクラブミュージックの流れを維持する役目を果たしていると思います。特に3分半過ぎた後でビートが重くなるセクションがその顕著な所かもと。単なるポップソングで終わらない所が一筋縄で行かない。
逆に英語圏の人はこの作品を通してここで全英詞になるセクションに対してどういった雰囲気を感じ取るのか気になるところ。

9.Face My Fears (Japanese Version)

好き度:(☆☆☆☆☆☆☆☆)

ゲーム「キングダム ハーツIII」のテーマソング。音楽プロデューサー「Skrillex」との共作。スクリレックスは洋楽に疎い自分でも名は知ってるぞ。共通の知人を介して2人の親交が深まったことと、Skrillexがキングダムハーツのファンという事もあり、オファーが来た際に一緒に作ろう、という流れだそうで。
本来は前作収録の「誓い」のリミックス版をSkrillexに依頼したが、拍子が6/8(なのかなこれ)の上、メロやキックも裏拍取りまくりの原曲時点でかなりトリッキーな楽曲だったこともあり、Skrillexが「できるかそんなん」となり新曲作成に至ったそうです。
(ちなみに「誓い」もゲーム内の主題歌として使われています、自分もキンハはナンバリングのみ既プレイ済。)

結果宇多田楽曲ではほぼ初めての共同制作という形で、宇多田本人、Skrillexとその盟友である「Poo Bear(Jason Boyd)」の3人で詞曲両方を作成したとのこと。ちなみに場所はロンドンのアビー・ロードスタジオだそうな。勿論先にできたものは英語版で、それを宇多田自身が和訳したものが本作。

いや、この曲大好きなんですよ自分。自分がゲームユーザーな事を差し置いてもなんか世間の評価が不当に低い気がしないでもない。確かにシングルカットした2019年時点では邦楽リスナーにとってはトリッキーな楽曲であったし、現在2022年では世界的に見てこの系統のサウンドは旬を過ぎた感があるかもだけど。

ピアノを軸にしたバラード風の導入、サビに入りエレクトロサウンドが徐々に入り、フューチャーベースのドロップに入る。このドロップがかなりトラックを細かく刻むトリップ感が強いEDMで、初聴ではかなりの衝撃だったし今改めて聴いても好みなんだけどなぁ。

そしてこの楽曲、One Last Kiss以上に既存曲の中でサウンドが浮いているので「これどうするんだ」感が一番懸念されていた曲ですが、確かに入れるならアルバムのここだよなぁ、と。
ボーカルも再録したようで、原曲と比べた時に他楽曲とテンションを合わせたようなやや力を抜いたような歌唱で、全体がスタジオレコーディング感が強い音像とすることでかなりギリギリなバランスで作品の枠として落とし込んだ印象。ここは人によって評価の分かれ所かも。

下記のボートラA.G. Cook版をここに入れるという選択肢もあったと思うけどもそうするとアルバム全体を見た時にバランスが悪くなる、というのもあったのかな。

余談ですが記事を書くに当たり色々情報調べたんですがこの楽曲、キングダムハーツⅡの「Passion」と同じキーで、同タイトル曲の「Dearly Beloved」とコードが一緒とのこと。全く気に留めてなかったけども、それを踏まえて聴くとあっ!!!ってなりました。

10.Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー

好き度:(☆☆☆☆☆☆☆☆☆)

本編最後はFloating Pointsとの共同作曲(詞は宇多田本人)。

なんとこの曲単体で12分近くという大作。
最初のデモ時点では4分程度とのことだったが、2人でトラックを色々試行錯誤するうちにこの長さになったとのこと。

自分はこの楽曲を初めて聴いた時に「色んな意味で宇多田ヒカルが遠くの高みに行ってしまった」感を覚えて嬉しくなったり寂しくなったり。とんでもない楽曲です。
プログレ的な曲展開の多さがあるわけでなく、ひたすらシンプルなメロディにミニマルなビートとハウスミュージックが乗り文字通り延々と12分続くのですが、これがびっくりするほどマンネリにならない。
「気分じゃないの~誰にも言わない」のある種焦燥感や緊張感も含んだトリップ感とはまた別の、ひたすら無のフラットな境地で流れる音に体を任せていたら「あっ気付いたら12分経ってた」という。そんな種類の違うトリップ感。

詞も本当に最低限というか、「マルセイユ辺りで落ち合って良い景色見て遊ぼうよ」くらいの事しか言ってない。それがこの12分のトラックへの最適解かつ「BADモード」という彼女の等身大な世界を描いた作品としてのテーマに沿った締めなのかも知れない。

11.Beautiful World (Da Capo Version)

好き度:(☆☆☆☆☆☆☆☆☆)

ボートラにも言及しときますか。
このBWのバージョン違いも映画館やEPで聴いた時のOne Last Kissからの流れ、良かったですよね。エヴァというコンテンツを追ってきた自分としては改めてこの曲の詞を見た時に「シンエヴァ」という作品とのシンクロ率が高すぎて驚嘆。原曲15年前の曲だぞこれ。
「序」ではシンジ目線の曲かと思いきや、「シン」では…という。

アレンジも最高ですよね。シリアスなアコギから始まり最低限の音数で徐々に踊れるリズムに変わっていく曲展開。


12.キレイな人 (Find Love)

好き度:(☆☆☆☆☆☆)

本編8曲目の日本語ver。こちらは英詞の原曲が出来た後せっかくだから作ってみたけど、実際に日本語に乗せて歌った本人の感覚では原曲とノリが違う印象を強く感じたとのことで、ボーナストラックとして収録したとのことだそうです。
ボートラで聴くと単曲で聴いた時の気持ちになって確かに印象違いますね。曲調変わる前まで聴くと何となく2ndアルバムの後半とかに入ってそうな雰囲気も。この楽曲はあえて英詞verを本編で採用したのは本編の世界観的に英断だと思います。


13.Face My Fears (English Version)

好き度:(☆☆☆☆☆☆☆☆)

同曲の英語詞ver。これも英詞のこっちが原曲。
こちらはボートラという事もあり原曲そのままのミックス。
確かにこれをそのままアルバム本編に持ってきたら浮きますね。BADモードを構成する上での再録は大正解。

何かで見たサイトで日本のみならず海外でもこの曲だけ若干評価低かったけど、自分はこの曲大好きです。

14.Face My Fears (A.G. Cook Remix)

好き度:(☆☆☆☆☆☆☆☆)

同曲をA.G. Cookに託したリミックスver。
なんか凄いことになってますねこれ。導入は原曲をリスペクトしつつ、徐々にドラムンビーツのリズムに移行してドロップ部分からは盛大に暴れてます。音像がかなり立体的になっており、原曲の持つ情報量はそのままに、エッジな部分を和らげつつ非常に食べやすい形になってます。確かにこれは2022年に即したアップデートだわ。


総合:(☆☆☆☆☆☆☆☆)

宇多田ヒカルの歴代作品でも三本の指に入る好き度です。(といっても全8作中だけど)
エヴァやキングダムハーツのタイアップが入ったこともあり、自分が好きだったSFチックの雰囲気を纏った楽曲と、現在の宇多田ヒカルのライフステージを踏まえた等身大の作風の双方を現代のトレンドに合わせたクラブ・ミュージックで纏めるというとんでもない芸当してます。

上記にも書いた通りコロナ禍の今だからこそのメッセージが詞に現れている時代性も含んだ「現在の」宇多田ヒカルの最高傑作を作り上げたのだと。自分のように「初恋」が肌に合わなかった人間でも再度沼にハマれる作品なんじゃないかなぁ。

一方で、これは今作に限らずだけど「かつての宇多田ヒカルの歌謡曲」を求めている層には「やっぱ違う」となるのもしゃーないかなぁと。それは本人のライフステージが子を持つ親になり変わったこともあり、当時の作風を求めるのはまた違うのかなと。
それと同時に本編最後が特に顕著だけど「あっ宇多田とんでもない所行ってもうた」感があるのでそれをどう受け取るか、というのも一つの評価軸になるのかなと。

実際、本人はこのアルバム制作期間でクラブ、ダンスミュージックを好んで聴いていたとのことで本人の今の好みがそれなのかも知れません。逆に考えると次作は全く違った方向に振ってくる可能性もありますよね。

とにもかくにも、「BADモード」大傑作でした。
早くも2022年ベストアルバム候補です。

ここまで読んで頂き有難うございました。
最後に紹介するのはちょい卑怯かも知れませんが上記楽曲レビューで書いた本人情報的なものはこちらからの引用です。ご本人が各楽曲を解説しているのでこの「BADモード」が刺さった方はこれ聴けばいいと思います。

ちなみに自分の宇多田favリスト。

全く語られてないけど
シングル「FINAL DISTANCE」収録の「DISTANCE-m-flo remix」版は秀逸だと思ってます。

それでは、また次の記事で。

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