産後本を読めなくなった私が文章を仕事にするまで⑦

私って社会から取り残されてるんじゃないのか。

そんな不安は、案外すぐに消えた。

3人目を妊娠したのだ。

3人目は男の子だった。

これまでにないくらいの悪阻

迫りくる切迫早産

そして妊娠8か月で先天性疾患が見つかる。

社会どころではなかった。

私は、ただ家族を守っている。

それだけで満足だった。

息子は帝王切開で生まれ、すぐに処置がなされた。

状態は医者の想定よりも悪く

毎晩毎晩、生きるか死ぬかの治療が続いた。

NICUと搾乳室をゾンビのように駆けずり回る。

何もしていない時間は気が狂いそうだった。

たくさんの管に繋がれ

何度も手術をして

生まれてから一度も意識を取り戻していない息子。

治療のための同意書にサインするときは手が震えた。

もし。

この子がこのまま死んでしまったら

痛くて苦しくて母のぬくもりも何の楽しみも知らずに

このまま死んでしまったら

あるいは生き残っても重い障害が残ったら

この子は一度でも幸せを得られるのだろうか

全ての管を外して、少しの間だけでも抱きしめてあげたい。

安らかな死を与えた方が幸せなのではないか。

一瞬そんな考えが頭に浮かんだ。

いやそれは親のエゴだ。

この子に少しでも生きる可能性があるのなら

治療を受けさせないと。


本当に?


考えても考えても結論がでない。


ふと、病棟の本棚が目に入った。

考えるのも眠るのも息子に会うのも怖い。

つらい現実から逃げるにはあまりにも魅力的だった。


息子が生死をさまよった3日間で

私は8冊もの本を読んだ。


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