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【読書感想文】曲がりくねった道の先に

一穂ミチ『砂嵐に星屑』を読んだ。

とても心惹かれる作風だった。

小説の舞台は、なにわテレビという大阪にある架空のテレビ局。そこに勤務する、アナウンサー、ディレクター、TK(タイムキーパー)、アシスタントディレクターの4人が、それぞれ主人公になる4つの物語で本は構成されている。

4人それぞれに過去があり、苦しみがあり、悩みがあり、捻れて歪みも無理もある現在がある。

自分の人生だけど、ポジティブに、真っ直ぐに向き合えない事情があって、どこか諦めていたり、疲れていたり、卑屈だったりする。

保身に走る。自分の人生から逃げ出したくなる。最初に頭をよぎるのは、いつも自分ごとの不安。

私はこういう人たちが好きだなあと、思いながら読んだ。

物語の最後は、それぞれにちょっとしたできごとがあって、主人公たちが、人生の主人公を生きようとしている気配を感じさせるラストになっている。

暗闇のトンネルを抜けて、笑っている。

もしくは、笑う予感がする。

もちろん予感というだけあって、私という読者の勝手な想像にすぎないのかもしれないけど。

曲がりくねった道の先に笑顔がある物語って、最高に素敵じゃないか。

4つの物語のなかで、私はどれが一番好きかなぁと考えた。

どれもみんな味わいがあって好きだけど、あえて選ぶなら、4話目の「〈冬〉眠れぬ夜のあなた」を選ぶ。

主人公が自分はこの仕事に向いてない(実際、性格的に無理がある)と、ぐずぐず言いながら、卑屈にしみったれる姿がとてもリアルだ。

「傷つきやすいくせして無神経」

とほかの人物に言われるほど、メンタルは弱弱なのに、吐く言葉だけは立派。自分は運がない、ついてないと言って社会の弱者ぶるけど、考えが足りなくて、無神経な言葉で人を傷つける。口は災いの元を地で行く人。

4話に登場する腹話術の芸人さんと、その主人公との掛け合いが、なんだかほっこりする。

こんな人(芸人さんのこと)いたらいいよな。

こんなふうに人との距離を掴む人素敵だよな。

でもだからこそ、そうじゃない自分と比べてしまって、羨ましくて、妬ましくて、鬱陶しくて、その人を嫌いになるかも。

人間の心は、一通りじゃない。

そこを丁寧に掬い上げて、物語にする小説家が、私は好きだ。

今年はまだ2ヶ月しか経ってないけど、イチオシの作家さんに出逢えた気分だ。

一穂ミチさん。

また違う作品も読んでみたい。

【今日の英作文】
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