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人生にエールを。おかわり旅ーおでかけがしたい。⑳ー


旅や散歩にまつわるエッセイ+写真のシリーズ『おでかけがしたい。』第20回。今回は、以前行き楽しかった旅先をふたたび訪れてみたらやっぱり最高だったというひたすら平和なお話。



一昨年の冬、友人Rと訪れた三重県のアクアイグニス。
すごく楽しくて、でも同時に「もっとああしていれば…」と心残りも多く、また行きたいなーとずっと考えていた。

人生1度きりだが、同じ旅先に1度しか行けぬわけじゃない。

あの時は宿泊したが、距離的に充分日帰りも行ける。せっかくなら、やり損なったあれこれを詰め込んだ「おかわり旅」をしようじゃないか!ということで、先日ひとりで再訪した。

名古屋駅から近鉄で1時間ちょっと。アクアイグニス最寄の湯の山温泉駅、のひとつ前の、大羽根園駅でいったん下車。
ここには大好きなパラミタミュージアムがある。美術館に寄ってからのアクアイグニス、という至極プランである。ついでに、駅から美術館までの道中(この道の景色が大好き)にあり、ずーっと気になっていた「自然薯」のお店にも初めて入ってみた。

でっかいどんぶり鉢になみなみのとろろ。
実家では安くて手軽な長芋を使っていたが、自然薯は長芋よりしゃびしゃびしている気が。だしですでに味付けされていたからだろうか?
風味がやっぱり、ちょっとクセあるなーと最初は思ったが、すぐに慣れ「おいしいおいしい」とおひつからどんどんご飯がなくなっていく。自然薯の豆腐や、とろろを海苔で巻いて揚げた「とろろ揚げ」もすごくおいしかった。

満腹しあわせマックスで美術館に到着。開催していた町田尚子さんの絵本原画展『隙あらば猫』を観る。ここの2階(企画展示室)はシンプルなつくりなんだけれど、毎回じんわりと心を揺さぶられ、何度も順路を行き来してしまう。学芸員さんマジック。
ちなみに、もうひとつ私がパラミタ・ラブな理由が、年末年始を除き年中無休であるということ。月曜開館、めっちゃ有難い。
町田さんの絵本を1冊とグッズを色々買い込み、時刻表を気にしつつ小走りで駅に戻った。


一目惚れ不可避。


大羽園駅からたった2分で湯の山温泉駅到着。アクアイグニスへは、駅から右方向にまっすぐ歩くと数分で着く。

おさらいすると、アクアイグニスは「癒しと食の総合リゾート」。あまり広すぎず、お店もパン屋1、カフェ1、イタリアン2、和食2、という限られた店数なのが個人的に好きである。宿泊すると結構なお値段になってしまうが、日帰り温泉利用だけだと、たったの600円。お安い。

さてまずはどうするか。

と、迷うことなく一番手前のパン屋「マリアージュ ドゥ ファリーヌ」に入店。なぜならここが一番早く閉まっちゃうからである。
ある意味、前回でいちばんの後悔だったのがこの店。辻口シェフプロデュースのおいしそうなキラキラパンが目白押しで、トング片手にぶるぶる震えるほど「あれもこれも」と爆買いしたかったのだけれど、その後に豪華夕食が予約済だったし、翌日はお伊勢参りで長時間持ち歩くことになる。それゆえほんの少ししか買えずものすごく後ろ髪をひかれたのだ。
あの時の鬱憤を晴らすべく、トレイにパンを山盛り乗せまくる。カウンターから出てきた店員さんがひょい、とさり気なく置いた耳パン(大好物)もめざとく攫い乗せる。耳パンなんと53円。後日談になるが、食べたことないくらい美味の最高級耳パンだった。

見た目最強の苺のデニッシュは、持ち歩いて崩れるのが怖いのでイートイン。コーヒーとともに、先ほど買った絵本を読みながら、極上ティータイムを味わう。

カフェ(ここも辻口シェフ)は前回行ったので今日はお土産だけ買って、いざ温泉へ。
平日の夕方だったがけっこう混んでいた。大学生の卒業旅行とかだろうか、若い子が多め。
熱めの内湯につかり、体をほかほかにしてから露天へ。仰向けに寝そべって入る温泉もあり、皆気持ちよさそうに脱力していたが、私は髪を濡らしたくなかったのでエア枕で腹筋を鍛えている人みたいな状態で楽しむ。それでも充分気持ち良かった。
別の露天へ移動。目の前に竹林があり、それをぼーっと眺めながら、湯船の端っこにあごを預けて、ふう、とぼんやりする。

ああ…ビール飲みたい。


温泉後にビールを我慢できる下戸じゃないおとながいったい何人いるだろう。とろろ+パンで結構おなかはふくれ気味だったのだが、早夕食を食べていくことにした。
有名な「賛否両論」(和食)。ここも前回後悔があり、せっかくおいしいごはんだったのに、当時抱えていた悩みをRに愚痴りながら食べ進めたせいでなんだか消化不良な気分で終わったのだ。
今日は心を空っぽにしてビールを待つ。
座敷席には誰もいなくて、ひとりで夕暮れの空を眺めながら、運ばれてきた伊勢のペールエールの可愛らしい瓶を、傾けてグラスにそそぐ。
ふと、ラベルをみた。

「あなたの人生にエールを!」

と金色の字で書いてある。おいおい…今そんなことビールに言われたら、感動しちゃうよ…。飲むと、グレープフルーツみたいな爽やかな香りがはじける。ああ、おとなになるまで生きてて良かった。

人生はなかなか大変だ。
この春は、今までずっと連載でお世話になってきた人が、同時にふたり、職場を離れることになってしまいちょっと淋しい春である。
漫画を描く時はひとりだけれど、いつも、誰かに支えてもらい、見守ってもらいながら共に作り上げていく(このnoteを除いては)。だから、担当者さんが変わってしまっても自分はこれまで通りのものが描けるのか?と正直ちょっと不安になる。
けれど、やらねば。
だって、描くことも書くことも、私はまだまだずっと続けていたいのだから。

たまには自分にエールを。
そんな気分のとき、3度、またここに来よう。






今週もお読みいただきありがとうございました。
皆さんは、自分だけのエスケープ場所はありますか?

◆次回予告◆
『接客業のまみこ』㊴㊵

それではまた、次の月曜に。


*アクアイグニス、初めての訪問記事はこちら↓

*パラミタミュージアムはこちら↓『隙あらば猫』は3月31日まで!


*行きつ戻りつ、宇佐江旅。その他の回はこちら↓


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