「ウルシ」という名の愛をすりこむ
漆の作業で一番カンタンかつキレイに仕上がるのは「拭き漆」。
「拭き漆」とはその名の通り木に漆を塗りつけてから拭き取る、これをくり返すことにより美しい木目を浮き上がらせる技法。
木工や家具などで仕上げとして使ったりします。
手間もお金もかかる方法ですが、拭き漆ならではの美しい光沢がえられます。
今回はこの「拭き漆」のやってみました。
是非みなさまもお試しください。
用意するもの
・拭き漆をする木製のモノ (箸、皿、器などお好みで)
・漆 (生漆キウルシと呼ばれるモノ 中国産が安価)
・拭き取り用の布 (洗っても絶対に落ちないので不要な綿の布)
・手袋(ビニールかゴム)
・紙やすり(#240〜#1000くらいまで)
・磨き粉 (ピカールなどの金属用の研磨材、歯磨き粉でもOK)
手順
1、木地のキレイに削る
まずは拭き漆をしたい木製品を紙やすりで磨きます。すでにニスなどが塗られている場合はここでしっかり落として下さい。
今回は使いすぎてボロボロになった木のスプーンを使います。ニスもハゲてるし、端も欠けています。
ニスをしっかり落として、欠けも修正します。
削りクズをキレイにしたら次の工程へ
2、やってみよう拭き漆 一回目
いよいよ漆を塗っていきます。
ここで漆を扱うときの注意点。
乾いてない状態の漆がヒフに触れるとかぶれてしまいます。
それを避けるために漆を使うときはできるだけ手袋を着用してください。
万が一ヒフに付いてしまったら、サラダ油かメイク落としでしっかり漆を洗い流してください。
刷毛や筆で塗ってもいいのですが私は手袋をした上で直接指で漆を塗ってしまいます。理由は筆に付く漆がモッタイナイ(漆は高い!)のと、使い終わった後の筆洗いが面倒だから。(サラダ油で筆を洗うのが結構大変なのです)
お好みの方法で漆を木地に塗りつけていきます。
いちばん初めは木地が漆を吸い込むのでタップリと塗り込みます。
塗り込んだら10分ぐらい放置して漆を充分に染み込ませた後、いらない布で漆を拭き取ります。
「せっかく塗った漆を拭き取ってしまうの?それこそモッタイナイ」
たしかにそうなんですが、漆を残してしまうと仕上がりが汚くなってしまいます。美しい光沢にするには心を鬼にしてしっかりと拭き取りましょう。
(もしベットリ残っているならヘラなどで集めて容器に戻しておきましょう)
軽く拭いて布に漆がつかなくなったら一回目は完了です。
室(ムロ)の中に一晩放置しておきましょう。
室(ムロ)とは?
漆が固まるには適度な湿度と温度が必要です。そのための設備を室(ムロ)と呼びます。段ボール箱やプラスチックの箱の中を湿らせることによって簡易ムロを作ることができます。
漆を塗って、拭き取る。この工程を数回繰り返します。
そのうち木地が毛羽立ってきたり、ホコリが付いたりしてきますので、#800ぐらいの紙やすりでキレイにしてあげます。
その後また拭き漆を続けます。
3、ひたすら磨く
通常は大体5〜6回拭き漆をしたら磨いていきます。
#1000以上の紙やすりを軽〜くかけたら、布に磨き粉をつけてひたすら磨いていきます。
漆芸ではツヤツヤに鏡面磨きをすることを「呂色仕上げ」と言います。
最終仕上げは指の腹や手の平の柔らかいところを使って素手で磨きます。
実はこれが最も傷がつかずにキレイに仕上げられる気がしています。
※この段階では漆が完全に硬化していないので漆かぶれが怖い方はオススメしません。
するとあら不思議!ツヤツヤに仕上がります。
このスプーンは10回以上拭き漆をして、これでもか!これでもか!ってくらい磨き倒しました。
みて下さいこのツヤを!!!
時間をかければここまでツヤを出すことができます。
以上が拭き漆の手順になります。
では1回目から仕上げまでをまとめてみましたのでご覧ください。
まとめ
日本の伝統工芸である漆芸。
1万年も前から人類に使われてきているので、もはや人類の伝統工芸とも言えます。その文化を後世に残していくためには漆製品を買っていただくことも大変助けになりますが、「漆を使ってもらう」ことがなにより重要だと思っています。
「漆器ってこうやって作られているんだ」
「意外に簡単にできるんだ」
「こんなに手間がかかるんだ」
いろんな感想を持つことによってより漆を身近に感じてもらえるんじゃないか。そう考えています。
自分の手でモノをつくりだしたり手をかけてあげるとダンゼン愛着が湧きます。
自分が普段使うモノを「愛着のあるモノ」で固めると、日々の生活自体が楽し苦なります。
お気に入りの木製品をお持ちでしたら是非一度「拭き漆」にチャンレンジしてみてください。
他にも「金継ぎ」という漆を使って壊れた器を修理する方法も最近は人気です。
興味がおありでしたら一度調べてみてください。
レッツ、ウルシ!
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