本を読むとは
本を読むとはどんな行為なのか。
文字を読んで、世界を想像して、擬似的な体験をする。小説であれ実用書であれ、機能的には同じことだ。
でも本を読むことはフィジカルなことでもある。本を持つ。厚みを感じる。重みで手首が少し疲れる。残りのページ数を感じながら読み進める。紙の質感、香り、表紙の絵柄、字組、余白、フォント。
作られたものを触っているので、その作品を五感で感じとっている。
いろんなものがスムーズに交わるようになると、作家の世界と読者の世界が馴染んでいく。
文体をより客観的に味わえるようになったのは成人した後だったと思う。
読み聞かせをしながら子の表情を見ていると、すぐに視線が離れるページと集中して見ているページがある。絵を触ろうとすることもある。その反応が、作者の意図に反していてもなんの問題もない。見たいものを見て、感じたいものを感じれば良い。
仕掛け絵本は大人も楽しい。私も昔から大好きだった。『パパ、お月さまとって!』は不朽の名作だと思う。現実的で空想的。はしごに登って月をとってくる。小さくなって消えていく。気づくとまた空で光っている。
だるまさんシリーズがお気に入りみたいだ。
まだ理解出来ていないのに何の意味があるのか…という視点もあると思うけれど、体験というのは得てして理解を超えたものである。憧れとか勝手な空想とかなんとなく楽しいとか親の膝が気持ちいいとか、本にまつわる楽しい感覚が刻まれたらそれでいいかなと思っている。
本に触れているといい気分になれる。
本を読みながら、体に刻まれた幸せな思い出がほんのり浮かぶようなことがあれば、そんな素晴らしいことはない。
そういう贈り物。
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