雨の奥[二十二]


「そのあと、澄子さんはコウタさんと結婚し、おなかにいた子どもも無事に生まれました。しばらくして、彼と揉めたけれどどうしても『透子』にするって譲らなかったの、と彼女はあなたを抱きながら私に教えてくれました。

それから毎年、あなたの誕生日にはあなたの写真が彼女から送られてきます。一年に一度ですが、その写真を通して私はずっとあなたの成長を見守ってきました。だから私は、今日あなたを見たときもすぐにわかったんです。透子さんだ、って。


…ずいぶんと長くなってしまいましたね。以上が、私と澄子さんの、そしてあなたのお話です。」

男の話が終わる。

畳に最後の音が吸い込まれる。

部屋はすっかり夜の中にあり、今が何時かも、どれほど時間が経ったのかも、もうわからない。

どこか遠くまで行ってきたような、そんな気がして、座っていただけなのに突如疲労が体を覆った。

「ありがとうございました、その…話していただき…。」

「いいえ、来月には話すはずのことでしたから。

けれど、驚いたんじゃないですか、こんなことを急に言われて…。」

「ええ…。」

<つづく>


今ならあなたがよもやまサポーター第1号です!このご恩は忘れません…!