「私と又兵衛桜。」

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Isolation Day6
@奈良県宇陀市

 夜明け前、昨日、人が多くて撮らなかった又兵衛桜に向かった。

 5時前だというのに、20台ぐらいの車が集まっており、三脚を構えたカメラマンたちが思い思いの場所から撮影していた。熱心なものである。それは予想していたので別に良いのだが、それよりも、駐車場の料金を徴収する人も早朝から来ていて驚いた。桜が咲いている一週間ほどの間が稼ぎ時なのだろう。寒いのにご苦労なことである。


 又兵衛桜のように有名な木は、いままで多くの写真家やアマチュアカメラマンの被写体になっており、ストレートにあるがままに撮っては駄目である。なんだかんだして、試行錯誤して、自分なりの又兵衛桜のイメージを模索しなくてはならない。そうでなければ、写真家を名乗るわけにはいかない、とまでは言わないけれど、でもそうでなければ僕が撮る意味がないのは確かである。


 そう思いながら、ああでもない、こうでもないと考えながらいろんな角度から、いろんな撮り方を試してみたけれど、結局、終わってみれば、あるがままの姿が一番きれいだった。

 それはそれだけ、この木が非の打ち所のないぐらいに美しい姿かたちをしているからだろうと思う。

 写真家の未熟な感性でこの木が持つ自然の美を歪曲するのは、正しいことではないような気がする。それこそ、仏像に対する写真の向き合い方にも通づるところがあるような気がする。


 それぐらい、綺麗な桜の木であった(周りをこざっぱりと整備されてしまっているのは残念だけれども。でもこれだけ人が来れば、仕方ないのかもしれない)。


 その後、移動をして大台町へ。

 子供の頃、何回かこの近くにある大台ケ原に行った記憶がある。子供ながらに雄大な景色に何かを感じていたのか、それともこの付近にはデイダラボッチが住んでいると聞かされていたからか、強く印象に残っている。


 今回、行けたらと思っていたけれど、登山道路が4月中旬までクローズになっているのと、昼から雨が振り始めたので諦めた。それでも、大台町付近の景色は、日本の秘境と呼ぶに相応しいものであった。


 いまは深い山を抜け、尾鷲にいる。
 冷たい雨はまだ降り続いている。

 明日の行き先は、まだ決まってない。
 寝て考えます。

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