見出し画像

ADOX CMS20Ⅱ (作例なし)

ADOX CMS20Ⅱ
マイクロフィルムを元に作られた800Lp/mmもの解像力を持ち合わせる超低感度・高解像フィルムです。

基本的に超硬調なフィルムだと言えます。

専用現像液Adox Adotech Developerが用意されており、超硬調なフィルムと言えど、確かに十分なトーンが得られるという実感はあります。

しかし、この現像液は配給が安定しておらず、且つ高価であり、その上専用現像液以外での現像データはインターネット上に少ないのが難点です。

海外の写真家により、Rodinalや自家調合での超軟調現像液、「シュテックラー2浴現像」処方や「POTA」等での現像結果を公表している方も見られます。

個人的な印象でいえばシュテックラー2浴現像以外は成功していないように見受けられます。

Rodinalでの現像で通常のコントラストを得る為には撮影感度がISO6程になるようで、とても使えたものではありません。

以上の理由により現状では専用現像液を使うことが一番安定しているように思えます。
ただでさえ超低感度での撮影を強いられる為、現像までこの状況ですと、とても常用向きのフィルムとは言えないでしょう。

ただ私は2014年からこのフィルムを度々使っています。
当時はまだ120mmのCMS20が手に入り、Planar CF 80mmf2.8のレンズで645のフォーマットで撮影し印画紙にプリントした時の凄まじい解像力を目の当たりにして、このフィルムに惚れ込んでしまったので、後戻りはできません。
そう、一度経験すると後戻りできないという魔性さがあることも事実です。

コスト、撮影時のストレスを踏まえても現状で135mmから得られる最高画質で作品が作れる事に価値を見出せるか否かでしょう。

120mmを使用すればISO100程度でも十分精細なプリントが作れる事を考えると、このフィルムを使う意義は135mmを拡大して得られる画質の限界を見てみたいといったロマンであり、映像の世紀とされた20世紀を経て成熟しきった銀塩技術の最高峰を垣間見る喜びにこそあるのかも知れません。

勿論、このフィルムの特殊な性格を生かした作品のコンセプトを考える方も出てくることは否定できませんが…。

フィルム現像液:Adox Adotech IV(軟調ISO8-通常ISO12-硬調ISO20)

●撮影時の注意点
超低感度の高解像度のフィルムなので、手ブレに細心の注意が必要です。
良い結果をお望みならば、三脚とレリーズは必須となります。

例えばKodak Tri-X400等の高感度フィルムでは多少ライティングに無理のある撮影でもプリント時の工夫次第でなんとかなるものですが、このフィルムはそうはいきません。
しっかり露出の計れるカメラ、露出計を使用しましょう。

このフィルムの魅力を十分に感じる為には、解像力をしっかりと引き出せる高性能なレンズを使用しましょう。(※解像度の高いオールドレンズ…例えばSummicron 50mm/f2 1stや、Summar 5cm/f2ではレンズの持ち合わせる柔らかい描写が、フィルムの硬調さとマッチすれば正常な現像処理の下、良好な結果をもたらすかも知れません…)

仕上がったネガフィルムからは粒状感を殆ど感じません、高性能なデジタルカメラに近い画作りになります。
人によっては被写体の立体感に欠け、平面的に見える場合もあります。
そういった点が気になる方は、必要に応じてライティングや、絞り等で立体的に見えるように工夫する必要もあるかも知れません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?