明日はどっちだっていいかもしれない(きょうの本)
なんだかやっぱりまったくよくわからないうちに世相は変わっているのかそれともそうでないのかわからないうちに日々がどんどんとすぎていっているような気がします。
それはきっと、みんなそうなんだろうなともおもいます。
そうなんだろな。たぶん。
でもなんとなく、SNSやなんやかんやで見るひとさまの暮らしにそういう色があるのかないのか、それとは別に全然出かけられてないうちにすきなお店がどうなってしまうのかわからないででもなかなかいけないでとか、あといま自分がコロナにかかったらいろいろ公私ともに倒れるところが多すぎてやばいとか、これから社会はどうなっていってしまうのかとか、いろいろと考えこんでしまっていまいち出口がみつからないままいまにいたっています。
みつからないのでどうしようもなく日々暮らし、そうして日々本を読んでいたらなんとなく救われたよという話をきょうはします。
どれもコロナ禍のまえに書かれたお話。
どれもきっかけはばらばらで、たまたま続けて手にとったというだけなのでほんとうに偶然なのだけれど、どの作品もひとの生きる力というか、挫折とか重荷とか人生みんないろいろあるのだとしても生きることを肯定したくなるような、そんなお話でした。
まずは濱野京子『夏休みに、ぼくが図書館で見つけたもの』。
お嬢様シリーズ以来に手にとる濱野作品。いやアギー以来かな。
なんとなく、手堅い作家さんだなあという印象が今回この作品を読んでいっそう深まりました。
安心して読める。
図書館のそばに住んでいて、みんなから図書館の主みたいに呼ばれていて、自分でもちょっとそれを自慢にしている小学生。いるよね。なんならこどものときのわたしもちょっとそういうところあったよね。職員さんとなかよくなってお話したりするのたのしかったね。
いい子たちでありいい大人たちでありなによりいい図書館だな、とおもいました。
ひととひととのかかわりと成長のお話。
あとこのお話に出てくる作家の「湯浅じゅん」さんに、淺川じゅん『ツンデレラゆうかい事けん』がだいすきなわたしはちょっと反応してしまいましたが関係ないかな。『ツンデレラ〜』もこのお話に出てくる彼の事情にリンクしないこともないかなとおもいました。たとえば中島信子さんや山本悦子さんの物語にも出てくるそうした『事情』について、わたしはいったいなにができるかとおもわないこともないまま、物語の明るさに救われました。
あ、あとマガーク少年探偵団も読みかえしたくなりました。一気読みしたいな。
続いてはクレア・ノース『ホープは突然現れる』。
前回読んだ同作者の『ハリー・オーガスト〜』がすごく面白かったので。
今回もすごくよかった。よかったよーだいすきクレア・ノース!
16歳頃からひとの記憶に残らなくなったホープ。
泥棒として生きる彼女は、富豪からダイヤを盗んだことをきっかけにひとびとを美しく完璧にするアプリ「パーフェクション」に関わることに、ていう。
ネタバレしたくないのであれこれくだくだ言うのは避けますが、いまを生きるすべてのひとに読んでほしいなとおもうくらいよかった。
ホープをずっと、覚えていられますように。
それから川越宗一『熱源』。
いろいろなところで取り上げられているのでここで語るのも、くらいではありますが、こちらもまたすごくよかった。
とはいえこのお話はわかりやすい勧善懲悪説話でもすかっとする成功譚でもありません。
ただ登場人物たちがしっかりと生きている。
だれひとりとして物語のための調整弁ではない。なのにそれがきちんと噛み合って物語をなしている。
小説を読むというのは作者との対話だとよく言います。
物語を読むとき、ちょっとした単語の選ばれ方ひとつで、ちょっとした場面描写で、あ、この作家とはともだちになれないとおもうことってたぶんわりとみんなあるんじゃないかな、どうかな。
すくなくともわたしはある。
だからはじめて読む作家さんの小説では、おそるおそる、密林を歩くようなきもちで、いきなり茂みから竹槍つきだされて致命傷を食らったりしないようにしながら、てことがよくある。致命傷。モラルとかジェンダー観が合わないひとの文章読むとぐさっとくるよねっていう。
今回川越宗一さんの作品をはじめて読みましたが、わりとぶあつい本なのにかすり傷ひとつつくなく終えることができました。
このひとはなんて信頼できる書き手だろうとおもいました。
今後も読み続けたい作家さんです。
ということで最近読んだ3作品。
苦しいとき、ひとは物語によって救われるのだな、とあらためておもいました。
ありがとうございました。
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