物語と(きょうの読書)
さてみなさん、赤川次郎作品でいちばん好きなシリーズって何ですか。
三毛猫ホームズ? 幽霊? 吸血鬼? 三姉妹?
すてきなシリーズやまたノンシリーズがたくさんの赤川ワールド、こどものころからわたしもだいすき。
なかでもいちばん好きだったのが9号棟シリーズです。
はたちになって亡父の莫大な遺産を相続するはずが、親戚の陰謀により精神病院(いまは医療センターとかのほうがいいのかしら、とりあえず本文ママ)に強制的に入院させられた女子が、病院仲間のダルタニャンやナポレオン(なのだと自分をおもいこんでるひとたち)とともに謎を解いたり冒険したりするシリーズ。
いまの時代に読むとそういうのはなかなかという描写もあったりするのですが、物語の登場人物になりきった(でもときどきなりきれないところもある)ひとたちのかっこよさとそこはかとない哀愁がこども心にぐっときたものでした。
また、こどものころ図書館にあって何度もくりかえし読んだのが氷室冴子『シンデレラ迷宮』。
こちらもシンデレラや白雪姫や物語のお姫さまたちのなかに迷いこむ少女の物語。
つい最近知ったんですがこれ続編あるのね…?
読みたい。
そして最近すきなのは大ヒットゲームなのでみなさまご存知であろうFGO。
こちらも物語や歴史上の有名人(の大衆イメージの集合体みたいなものなのかな)、その名もサーヴァントというひと(か知らんけど)たちがたくさん出てきてマスターと呼ばれる少年少女を助けてくれる。
みんなそれぞれ魅力なキャラクターですが、わたしがぐっときたのは水滸伝の燕青が出てきたとこ。
水滸伝といえば一〇八星。百八人の好漢たちの戦いに胸躍らせた方も多いでしょう。わたしも岩波とか北方版とか杉本版とかいろいろ読んだクチ。
そしてFGOの燕青はFGOの世界にひとりで一〇八星(というか天の星かな)を背負ってあらわれるのでした。たぶん。わたしの知識がたしかならば。たしかな自信ぜんぜんないけど。そしてしかもある理由により水滸伝の一〇八星としても燕青としても自我とそのほかの境が曖昧になっているという設定。
物語というバックボーンから切り離された物語の登場人物(らしきもの)のゆらぎ、というものに対するなんともいえないやるせなさと哀愁にわたしは弱いのでありました。
そういえば物語の登場人物に恋した女子高生のお話もある。
すきです。
ということをあれこれと書きつらねてきたのはどうしてかというと、はてさてこのたびこちらの本を読んだからです。
キャクストン私設図書館。
シャーロック・ホームズ、オリバー・ツイスト、ロビンソン・クルーソー、有名な物語の登場人物たちが現実にあらわれたとしたら?
古今東西世に知られた物語の登場人物たちが住むというキャクストン私設図書館。
そこで巻き起こるできごととは。
キャクストン氏からはじまる図書館のなりたちや、図書館を支える組織、登場人物たちに「呼ばれて」やってくる司書など、なるほどこんな仕組みでこの図書館はできているのかと納得でき、しかもまだまだ魅力的な謎は山積みになっているという、細かいところもゆきとどいた物語です。
おもに本にまつわる物語を集めた短編集で、そのうちキャクストン私設図書館のお話はふたつ。
そのうちのひとつ、「ホームズの活躍」はシャーロック・ホームズファンとしても物語好きとしても楽しいうえに深みを感じる一編でした。
ホームズが素敵なのはもちろんとして、ワトソンもモリアーティ教授もかっこいい。
物語の登場人物のゆらぎに惹かれるとさきほど書きましたが、どうしてなのかな、という自分でもはっきりとはわかっていないことがらについて、その答えになりそうなことをワトソン氏がこの物語のなかで提示してくれました。
そういうことかーと納得して、そうしてこれもまた、物語の登場人物とのかかわりだな、とおもいました。
ほかの短編……というか中編かしら、この本のなかに収録された「虚ろな王」も「裂かれた地図書」もよかった。
ところで「裂かれた地図書」はあの、なんとか神話かなんかの系譜なんでしょうか、くわしくないからわからないけど急になんかそれっぽくなってびっくりした。
強烈でした。
とってもおもしろかったです。
読んでよかったなー。楽しかった!
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