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流星(ながれぼし)中編

※上記オリジナル曲を題材にした短編小説です。

↓前編↓

告白

「私ね、1人が好きなの!あんたといるより何倍もね!」
「あっそ、好きにしろよ」
俺たちは、どんなにひどいことでも気にせず言い合った。
なのに、この時だけは、なんだか、辛かった…

俺はなんてひどいことを言ったんだ…

ヨウスケとメイは初めての後悔をした。幼馴染で、なんでも隠さず本音で話し合える2人のすれ違い。
その日の夜、ヨウスケはメイから信じられないことを耳にする・・・


「好きになってくれて、ありがとう!」
メイは海の見える岬のベンチに腰掛け、唐突に口を開いた。コンクリートの岬は、街灯が反射するほど艶めいた。
ヨウスケが後に続く。
「なんだよ、胡散臭いなぁ。」
「もう、終わりにしない?」
「まだ付き合ってもないのに?」
「…」
「昨日と今日はごめん、だから、このまま友達でいよう!」
「ヨウスケは何も悪くない!」
「…は?」
うつむいたままのメイのつむじを、ヨウスケはただ眺めた。空は暗くなり、時間だけが過ぎる…

「俺にさ、何か隠してんなら、隠さずに言えよ。友達だろ?」
「友達って言わないで…」
冗談で「じゃあ恋人」とか言いたかったのだが、ただならぬ空気に圧倒され、ヨウスケはふざけることができない。
「メイ、あと少ししか生きられないの。」
体を小刻みに振るわせつぶやいた。
「…」
あまりの暗さに絶句するヨウスケ。
「昨日と今日で、そんなに別れたくなった?」
「…」
ああ、もうだめだ。絶句するメイに、耐えられるはずがない。
「…本当なのか?いつまでなんだ?」
「わからない。」
何に対しての「わからない」なのか?またもやはっきりしないメイの言葉。


「気づいたら病気が悪化してて、もう生きられない。」
大人になったメイは、体調が悪くなり、一人で病院に行った。病気が見つかり、すでに悪化していた。メイは、最期まで一人で生きると決めた。
「誰にも迷惑かけたくないから、メイのことは忘れなさい!ヨウスケさん!」
「お嬢様口調は相変わらずだな!ただし、俺様にさん付けとか、らしくないな!」
「…」
「なんか言えよ!」
メイが空を仰ぎ、ヨウスケと目が合う。ヨウスケが目をそらし、空を見上げた。

「流星(ながれぼし)…」

メイがつぶやき、ヨウスケはメイとの再交際を願った。一方で、メイは違った。

「流星、何色だった?」
ヨウスケは考えたが、メイとの再交際以外何も考えられなかった。
「そんなの覚えてないよ」
「すぐにいなくなる流星のことなんて、誰も覚えてられない。ほら、夜空にはたくさんの星がある。」
メイは両手の人差し指で、ヨウスケとこれから出会う運命の人をイメージした星を差した。
「ヨウスケは今から、この大空の星からいくらでも奥さんを選べる!これとかめっちゃ明るいし、これはピンクがかっててめっちゃ可愛いじゃん!こういう人と付き合えばいいのに。」
「…」
言葉を失ったヨウスケと違い、メイは話し続けた。
「そのうち忘れるよ、メイのことは。ヨウスケ、楽しみだね!これからどんな奥さんに巡り合うかな?」
「やめろよ」
涙でいっぱいの瞳を、空を見て誤魔化すメイ。ヨウスケはメイの方を見つめていた。

「流星をバカにするな。」

ヨウスケが珍しくメイの話に乗ったため、メイは驚きを隠せなかった・・・

↓後編↓

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