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流星(ながれぼし) 前編

※この物語はフィクションです。私が作詞作曲した楽曲「流星」の舞台を描いた短編小説です。

喧嘩

君は流れ星のように儚く、美しかった。忘れるはずがない。どんなに明るい星よりも、綺麗だった・・・


「私ね、1人が好きなの!あんたといるより何倍もね!」
幼馴染のメイは、こんな酷いことを言う。でもどこかその瞳が、寂しそうに見えた。
「あっそ、好きにしろよ」
ヨウスケはあまり気にしない様子で言った。俺たちは、どんなにひどいことでも気にせず言い合った。この会話が通常運転。

メイとヨウスケは家が近所で、小学校の頃からよく遊んだ。いつも2人の距離が近い為、よく冷やかされからかわれるも、お互い友達以上の認識がなく、「付き合うわけない」と頑なに否定した。
2人が大学を出て、離れ離れになるも、連絡を取り合った。

ある晩、2人は幼馴染の友達ではなくなった。翌朝、まだ横になっているヨウスケと、シャワーへ行こうとするメイ。
「なあ、メイ…」
「ん?何?」
「…このまま、付き合っちゃう?」
「付き合うわけないでしょ!」
メイはいつものノリで返した。
「いや、本気なんだよ。」
振り返るメイ。ヨウスケは上半身をあらわにして、前のめりになる。
「昨日の今日だよ?だって…」
「嫌いになった?俺のこと」
「そういうのじゃなくて…」
「友達のままがよかった?」
「…」
「んだよ!はっきりしろよ!」
メイの目が潤んだ。体は小刻みに震える。
「メイ、そうやってまた言い逃れするんだろ?」
「…ごめん。」
「なんで謝るの?」
逃げるようにシャワー室に向かうメイ。
「おい待てメイ!メイ!!」


(お互いが気まずくなるほどの喧嘩は、俺の人生で初めてだ。そもそもこれは喧嘩か?別れ話か?いやまだ付き合ってもない。とにかくはっきり言ってくれないと困るんだよ。)

スリッパの音が近づく。ヨウスケはメイと目が合わないように足早にシャワーへ向かった。

「帰ってなかったの?」
顔に何かを叩きつけるメイに冷たく言った。
「帰って欲しかった?」
何食わぬ顔でメイは答え、口紅を分厚く塗り重ねた。
「いいや、別に。あぁそれより、俺たちどうするの?」
「だ〜か〜ら!」
先ほどのプチ喧嘩が嘘かのように、2人は軽く言い合った。


帰り道、初めて手を繋いだ。恋人になったわけでもないのに。仲直りしたわけでもないし、喧嘩したわけでもない。昨日の今日でメイが変わるわけがない。100%ではないが、10年以上一緒にいた俺だから言える。
何か言いたいが、隠し通そうとする時、メイは全身で耐えてる。昔からそうだった。メイは、何かを隠している・・・

「私ね、1人が好きなの!あんたといるより何倍もね!」
メイの瞳は、どこか寂しそうに見える。言葉とは裏腹に…
「あっそ、好きにしろよ」
ヨウスケはあまり気にしてないふりをして言った。俺たちは、どんなにひどいことでも気にせず言い合った。

なのに、この時だけは、なんだか、辛かった…

俺はなんてひどいことを言ったんだ…

↓中編↓

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