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黎の軌跡発売前考察②~連なる幼馴染たち~

 軌跡シリーズの2021年度最新作、黎の軌跡の発売まで2ヶ月を切りました。
 だいたいの主要人物が紹介されつつあり、現在はサブキャラなどもお披露目されている。
 そんな中、5月末に公開した発売前考察の続きを、語らせていただこうかと思います。
 今回の副題は《連なる幼馴染たち》。人物考察だけでなく、各人物の関係性などにも焦点を当てていきたいです。

 本稿は、黎の軌跡に登場する人物たちを《幼馴染たち》という一つの視点を基に好き勝手に語る考察となります。発売前の考察の一助となれば幸いです。
 ※今までの軌跡シリーズのネタバレを前提としているので、ご注意ください。​


1.進み続けた先に《彼女》が見つけるもの──エレイン・オークレール

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「今さら貴方の道にとやかく言わない。でも、せめて線引きはきちんとしなさい。」
 カルバード遊撃士協会において、最年少の若さでA級入りを果たした遊撃士のエース。
 《剣の乙女》の渾名を持ち、ヘーゼルブロンドの髪をなびかせた流麗かつ可憐、凛とした美貌はたびたび共和国内のニュースでも取り上げられており、モデルや女優のオファーまで来ているようだが本人はすべて断っており、あくまで遊撃士としての道を貫いている。
 名門校卒業後に遊撃士の道を選び、伝統的な剣術をたしなんでいたこともあって国内外で目覚ましい実績を積み上げ、若干23歳という若さでA級の資格をギルド本部から授与された。
 そんな折――かつての幼馴染であり、学生時代をともに過ごしたヴァンが首都イーディスに戻ってきたこと、そして、ギルドと対立しかねないような仕事をはじめたことがエレインの胸をざわつかせるのだが……。(黎の軌跡公式サイトより)

 《創まりの先へ》からおよそ十か月、ついにベールを脱いだ《剣の乙女》。さあ帝国の《氷の乙女》の跡を継いでその渾名にノリツッコミを入れる日は来るのか。そして気になるアニエスとのヒロイン対決は……!?
 彼女について現状自分が思っていることはだいたい「《そして、乙女は剣を手に進み続ける》を心理考察する」で語っていますし、特に特筆すべき追加情報も見られませんが、いくつか予想できる情報もある。

 『学生時代をともにしたヴァン』という文脈からは、エレインとヴァンが別たれたのは幼少期ではなく、思春期頃のような印象を受けます。
 「今さら貴方の道にとやかく言わない」……これは十中八九ヴァンに向けて放ったことだと思いますが、やはり裏解決屋を始めたヴァンのことは、否定しきるでも肯定しきるでもない、複雑な胸中のようで……。
 未だ乙女のままの心。共和国に蔓延る結社をはじめとした実力者たち。まだ、自分の隣に立つべき英雄は見つけられない。メタ的に英雄となるであろうヴァンは、グレーな仕事なのだから、エレインが創造する民を救う英雄とは違うかもしれない。アニエスのヴァンへの依頼から始まる黎の軌跡において、彼女が進んだ先に見えるもの、選ぶものは何なのでしょうか……(個人的にはアニエス推しなのに考察熱はエレインが凄いな)


2.間に立つことこそ一つの極なり──ルネ・キンケイド

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「相変わらずみたいだな──持ち前のしぶとさを最大限に活かすやり方は」
 CID (中央情報省) の統合分析室に所属する補佐官にしてエージェント。
 有能な上司の下、大統領の狙いにより分断が起きている省内で上手く立ち回っており膨大な案件を日々処理しながら、現地での情報収集およびオペレーションを確実にこなす。
 できる男のオーラと眼鏡をかけた怜悧れいりで整ったルックスが印象的で、スーツ姿でスマートに仕事をこなす姿に心ときめかせる同僚女性は多数。
 幼馴染のヴァンが《裏解決屋》の仕事をはじめたことには呆れつつも納得しているらしく、互いの立場を利用することにも躊躇しない。
 一方で、同じく幼馴染のエレインが学生時代にギルド入りを決めた際は唯一の味方として彼女を応援し、CID所属の分析官となってからも遊撃士として活動するエレインのことを認めている。(黎の軌跡公式サイトより)

 ヴァンとエレイン、そしてもう一人の幼馴染であるキンケイド──改めファーストネームでルネと呼びましょう。
 文字通りの《裏》解決屋、正道の遊撃士、そして三人目はCIDエージェント。似た性質の職業を選ぶあたり、さすが幼馴染だなって感じがします。
 人物紹介や彼自身に関わる情報では、今のところ彼の出自に特異そうなものは見当たりません。なので、気になるのは彼が選んだ『情報省という道』とその目的について。
 表向き、共和国の公の組織に属する彼は国に尽くす人間といえます。遊撃士は正義の味方なれど国土を守れず、裏解決屋などはもっての他です。ただエレインの道も、ヴァンの道も温度差はあれど認めている。幼馴染としての関係性が成せるエレインへの応援やヴァンへの諦めでしょうが、ならば彼自身は何のためにCIDの道を選び、何の目的で頭でっかちな立場の壁を乗り越えて、幼馴染たちに協力を仰ぐのでしょうか。
 正道と邪道、二項対立ではだいたいヴァンとエレインの関係性が挙げられます。ただ、ルネはその中において間ではない、CIDという一つの極みを目指している可能性がある。エレインの心の奥底でも、ヴァンの成り行きでもない確固たる意志によって動いているのかもしれません。


3.活と殺のその先へ──ヴァルター・クロン

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「──つれねえことを言うなよ。アークライド先生には前の依頼で世話になってなァ」
 結社《身喰らう蛇》に所属する執行者No.Ⅷで、暴力的な気配をまとう戦闘狂。
 共和国三大拳法のひとつ《泰斗流》の使い手リュウガ・ロウランの一番弟子でありジンやキリカにとっては兄弟子にあたる存在だった。
 門下生の頃からすでに武術の腕は常人の域を超えていたが、それゆえに“力”そのものに魅せられてしまい、師であるリュウガを殺め、人を活かす“活人拳”ではなく人の命を奪う“殺人拳”を磨く道へと進んでしまった。
 現在は共和国内でとある若者を追跡しているらしく、ヴァンたち《裏解決屋》とも接触することになるが……。(黎の軌跡公式サイトより)

 空の軌跡the 3rd以降、十数年ぶりの登場となったヴァルター。王国で見せたその姿は単なる戦闘狂の一言に尽きました。閃の時系列でもエステルたちを邪魔していることに変わりはありませんが、共和国は彼のホーム。以前とは少し違った様子を見せてくれるかもしれません。
 というのも、彼の心を語るのに必要な《泰斗流》の流れは、《リベールの異変》でのジンやキリカとの一幕で、ある程度の決着を見せているからです。
 類まれなる武術の才能を持つが、師の目指す活人ではなく殺人に魅了されたヴァルター。そうして師父リュウガ・ロウランを殺めた彼はやがて結社に行きつき、別たれた弟弟子であるジン・ヴァセックと戦うことになった。
 師父の目指した場所に進んだ活人拳のジンと、殺人拳のヴァルター。さすがに詳細なセリフまでは思い出せないのですが、確かに二人は本気で戦い合い、リベル=アークでジンの勝利と言う決着を見ることとなったのです。
 負けは負け。それでも、ヴァルターにとっては喉に突っかかった魚の骨がとれたような出来事だったかもしれません。何故なら、『優れているのはお前(ヴァルター)ではなくジンだ』という師父の台詞に当時納得できなかったヴァルターにとって、言い訳のしようがない結果をもたらすことになったのですから。言ってみれば、全て出し尽くしてユーシスに負けてしまったルーファスの状況に近いといいますか。


 『ジンが俺より強いはずがねえ』から『師父のいう通りジンは強かった』という答えを得たヴァルター。執行者として活動しているのは変わらなくとも、ヴァンとのスクショを見ても少しは人間臭い振る舞いを見れるようになるのかもしれません。


4.不動が立ち向かう心の激動──ジン・ヴァセック

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「ちょいとは肩の力を抜きな。せっかくの美人が台無しだぞ?」
 《不動》の渾名を持つ、カルバード遊撃士協会を束ねる準S級遊撃士。身の丈2アージュ近くの東方系の巨漢で、東方三大拳法のひとつ《泰斗流》を修める達人でもある。
 「リベールの異変」「D∴G教団事件」など数多くの大事件解決に貢献し、2年前の世界大戦では諸国連合軍の作戦の一翼を担当。早期停戦へと導いたことがS級への推薦に繋がったが、一旦辞退し準S級に留まっている。
 《泰斗流》の年下の姉弟子がCID(中央情報省)の要職にあり、兄弟子が結社《身喰らう蛇》に所属したまま謎の沈黙を続けるなど同門間での緊張関係が続く一方、有望株である遊撃士の後輩・エレインには大きな期待を寄せており、かたくななところもある彼女の成長を見守っている。(黎の軌跡公式サイトより)

 不動が動く。一体、どれだけの軌跡ファンが待ち望んでいたことでしょうか。
 空の軌跡をやっていた当時、自分はここまでジンに思い入れがあったわけでもないのですが(笑)。執筆している二次小説でジンが主人公をよく助けていたので、いつの間にか感情移入していたみたいです。
 彼について思うことは基本的にはヴァルターと同じです。自らの因縁はひとまずの決着を迎えた、しかし共和国は彼のホーム。結局のところ、リュウガ・ロウラン亡き後《泰斗流》を後世に指導する者はいるのかということもあるでしょうし、準S級遊撃士としてのフィー(Ⅶ組)やエレインとの絡みも気になるところ。
 共和国では恐らくトップレベルないし実質トップの遊撃士ですし、それに見合う武術の実力も、数々の事件解決に貢献した実績もある。
 若者たちを見守る所謂『軌跡の大人組』に入ったジンですが、宿敵も後輩も気になる女もいる不動。なによりも初代軌跡の中心人物《8人》の一人。共和国の動乱に際して彼が活躍するのではないかと、期待してしまうものがあるのです。


5.千里眼が見る共和国の網──キリカ・ロウラン

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 CID《中央情報省》に新設された部署、《統合分析室》の責任者を任される妙齢の女性。
 千里眼と称されるほどの卓見を持ち、CIDの前身である《ロックスミス機関》の設立にも携わった他、ゼムリア大陸西部のリベール王国で遊撃士協会受付として務めた経歴もある。
 四年前のクロスベル独立国騒動では自ら現地での活動を行い、帝国‐共和国を中心とした世界大戦《ヨルムンガンド戦役》などでもその辣腕を遺憾なく発揮している。

 未だ公式サイトでは紹介されていないのですが、はやる気持ちもあり紹介させてもらうこととなった最後の幼馴染、キリカ・ロウランです。
 彼女自身、《飛燕紅児》と称され空の軌跡時代のジンとヴァルターをも凌ぐ実力者ですが、まあそれは置いておいて。
 彼女の指針の一端を表しているのは、空の軌跡the 3rdで在リベール共和国大使エリザ・コクランとの間に交わされた言葉。「諜報機関に入っても、あくまで自分の信念の基に働かせてもらいます」といったもの。
 CIDの前身であるロックスミス機関は、傍聴する帝国情報局に対抗するために作られた組織でした。であれば、ロックスミス前大統領の目的はあくまで国防・情報統合・防諜などでしょう。キリカの目的はそこに重なりこそすれ、ロックスミス機関で働くことが目的そのものではないということです。
 空の軌跡時代から遊撃士協会の受付として主人公たちを助けてくれた有能参謀。その心は今も変わってはいないと思います。ただ所属と雰囲気とクレバーな性質なので、特務支援課には緊張を与えたのも確かですが。
 そして、『ロイ・グラムハート新大統領の影響で分断されたCIDにおいて、同じく新大統領の意向で新設された』統合分析室の責任者に立つ。これは、やはりキリカの目的や手段に合致しているものなのでしょう。強権な大統領といえど、キリカが意にそぐわない場所に押し込められて黙っているはずがない。私はそう考えています。
 彼女の信念はどこにあるのか? ルネの上司なので登場機会も多いでしょう、その動向に注目です。


6.連なる幼馴染たち

 本考察で紹介した5人に前回紹介した主人公のヴァンを加え、その関係性について考えていきたいと思います。
 ヴァン、エレイン、ルネ。ヴァルター、ジン、キリカ。前3人と後3人は、言うまでもなく幼馴染みであったり流派の同門であったりします。そして、ある時を境にその関係性が分かたれ、おおよそ健全(仲良しの意)ではない間柄となっていることも含めて。
 年長3人は言わずもがなで殺伐としている。年少(とはいえ彼らも大人ですが)3人は、恐らくヴァンによって引き起こされたいざこざです。
 また、所属する立場もよく似ています。遊撃士、CID、結社と裏解決屋。よくもまあこれだけきれいに分かれていること。
 今シリーズの中核になる可能性もある3人が、前シリーズで描かれた3人の立場を踏襲している。彼らの関係性の行き着く先を予想せずにはいられないのです。

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 特にヴァン。ヴァルターは彼との会話で「アークライド先生には世話になってな」と発言している。彼らの関係が、少なからず縁あるものであること、やはり表よりは裏のコミュニティに属している。最終的にヴァンが結社に……とまでは思いませんが、ヨシュアのような光堕ちになる可能性には疑問を呈している自分がいます。そもそもグレーな立場なのですから、物語の結末までグレーなままでいそうとも思います。
 また自分が過去の考察『《創まりの先へ》を読み解く』でも書いたように、結社がただの悪とは決めつけられなくなってきたとも感じている。
 西ゼムリア編では、ヨシュア、レン、ランディ、シャロンのような一時闇の世界にいた人間は光に戻っていきました。それが彼ら彼女らの成長でした。
 しかし、(あくまで自分の考察予想では)英雄が剣を手に取り先陣を切って活躍する時代ではなくなった。身体や信念は一度成長しきっている、そんなヴァンの次の成長は、善も悪も含んだものではないかと思うのです。


 三竦みの幼馴染みたち。正道や理を貫く四人とは違うヴァン(そしてヴァルター)。物語の行き着く先、彼らはどんな関係を築けているのでしょうか……。

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 お付き合いいただき、ありがとうございました。


記事を最後までお読みいただきありがとうございます。 創作分析や経験談を問わず、何か誰かの糧とできるような「生きた物語」を話せればと思います。これからも、読んでいただけると嬉しいです。