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国際寝台列車でマレーシアへ、そこで出会ったインド人の話

2023/7/3



人は嘘や後ろめたさ、相手の意に反した気持ちがある時、必ず一瞬怯む。

瞬間に声を詰まらせ、口角や眉、瞼がピクッと震え(もしくは硬直し)或いは発声音に迷いが含まれる。
そのいずれか又は複数の反応が、どんなに隠そうとしても必ず表れる。

喜怒哀楽、全てに行動の機微があるのだ。

私はわりと長い接客と営業経験から、ある程度その察知には長けていると思っている。




そのはずだったのだが…。








寝台列車での一夜は、自分でも驚く程よく眠れた。

いつの間にか夜が明けてる
タイ南部の郡、バーンクラム
そこを過ぎると山々が見え
いよいよマレーシア入国が近づいてくる
車内の売り子から購入した
フライドチキンとカオニャオ(餅米)


列車は午前11:00に国境の街、パダンブサールの駅に到着。
19時間超の乗車時間は、思いの外あっという間に過ぎた。

ちなみにこのパダンブサールという街はタイ側とマレーシア側に分かれており、越境する場合はマレーシア側で降りる。

これはタイ側

つまり、既にマレーシアにいるのに、そこでタイ出国の手続きをするのだ。
当然、入国手続きも。

こんな場所は珍しいと思うのだが、どうなんだろうか。

ともかく、両手続きはあっさりと終え、無事にマレーシア入国。
早速アラウ行きの鉄道チケットを購入し、列車を待つ。

マレーシア側のパダンブサール駅構内


ここでタイとマレーシアに1時間の時差が
ある事を知り(マレーシアの方が進んでいる)列車を1本見逃す


そんなミスもあったが、無事に乗車。

そしてアラウ駅へ。


ここから予約している宿のある街、カンガーへは車で約10分。
節約の為にバスで向かう事に。

駅前のバス停に着くと、インド人女性が既に3人座って待っていた。

「ここからカンガー行きのバスは出ていますか?」

「えぇ、出ているわよ」

「あなたは中国人なの?」

「いえ、私は日本人です」


すると、女性3人はいきなりテンションが上がり始め、ヤパン!ヤパン!と盛り上がり始めた。

何か珍しいものでも見たかの様な、それはもう、箸が落ちても笑う女子高生の如くキャッキャギャハハと大騒ぎだ。

馬鹿にされている風ではない。
ただ単純に、無邪気に楽しんでいる様に見える。

そしてグーグルマップを見ながら、宿へ行くならここで降りた方がいいよ、と親切に教えてくれた。

とても感じが良く、その3人はリラックスしながらヤマハ!スズキ!マサキ!(私の名前)と盛り上がっている。

さながら、修学旅行のノリだ。

なんとなく、その感じの良さから一緒に写真を撮ろうと声を掛けると、ノリノリで快諾してくれた。

そうかと思うと、女性の1人は電話をかけ始め、その相手にヤパン!ヤパン!と大声でキャッキャと話し始める。


『なんなんだ…?』

『そんなに日本人が珍しいのか??』

わからないが、何故か大喜びしている。
そうとしか見えない。



そう思っていると、電話を終えた女性が私に近付き

「私の兄弟が今からここに迎えに来るから、宿まで乗せて行ってあげる」

「バスは来るのが遅すぎるから」

そう言うのだ。




反射的に警戒する私。


「いくらですか?」


「それは兄弟が来てから聞いてみるわ」


当然、高い金額なら乗らない。

いや、値段に関わらず、乗るべきじゃない。

そうは思っていても、騙そうとする気配は感じない。


すぐに兄弟(と言われている男)の古びたミニバンが到着すると

「2リンギット(約62円)で良いよ」
と言われる。

そして一番スペースの広い助手席へと促される。

私は小さいお金は5リンギット紙幣しか持っていなかったが「お釣りは要らないです」とそれを渡して助手席に座った。

すると、その男は
「違う違う」
と言う。


??


よくわからないが、私の財布から50リンギット札(約1,549円)を見つけ

「とりあえずそれをくれ、あとでお釣りを返すから」

もう、この時点で半ば50リンギットは諦めていた。


勿論、金を渡さず車を降りる事は出来たし、それがベスト且つ当然の対応だろう

しかし私は先日
親切なタイのタクシー運転手を疑った末の
失礼な行動に対して
自責の念が残っていた事

そして
面白い事が起こるかもしれないという期待

何より
ミニバンでそれこそ修学旅行並みにはしゃぐ女性3人組から
悪意が一切感じられない事

それらが重なり
シートベルトをカチッと締めたのである


すると、後部座席の女性が
「コレが5リンギット紙幣よ、あなたの紙幣は(金額が)大き過ぎるわ」
と私に見せる。



いやだから
その5リンギット出したじゃんかよ…


もし騙すなら、このタイミングでそんな言動をしないはずだ。


もうここまできたら
この顛末を見てみよう


そんな気持ちになっていた


英語の文字が読めないのか、住所とグーグルマップを見せてもわからないらしく、宿の電話番号を教えてくれと言う運転手の男。

そして宿のオーナーと話し、Uターン。
それでもマップとは違う方向だ。

「ご飯はもう食べたのか?」

「食べました」

「宿代は?」

「もう支払い済みです」


「Oh,s××t!」



何をどうするつもりなんだ…?


「今は小さいお金が無いから、あとで返す。だからお前の電話番号を教えてくれ」


流石にヤバいと思い、電話番号は教えなかった。


そうこうしているうちに、宿に到着。
結局、宿はグーグルマップとは違う場所にあったが、目的通りに送り届けてくれた。

私は50リンギットのお釣りを催促しなかった。
これ以上関わるのは良くないと思ったのだ。

女性3人組は相変わらず楽しそうに
「バーイ♪」
と私に向かって手を振る。



なんと言ったら良いのか…
表現が難しいのだが
本当に悪意を感じないのである


言っている事がコロコロ変わり
それにしては全く語調が変わらず
言い訳や後ろめたさ、開き直りすらも無い

もしかしたら
噓や矛盾、騙してる
自覚も無いのかもしれない


いや、騙してさえいないのかも…

むしろ、そうだと言われた方が納得出来る



インド人の気質なのか…?


わからない…


全然わからない……


そのあまりの無邪気さに
多く金を取られた怒りや悔しさは
不思議と無く
只々、ポカーンと走り去る車を眺めた



人を疑っても裏目に出て
人を信用しても災難に合う


結局のところ
わからないから、なんだと思う


平和で楽しい写真になると思っていたんだけどな…

2023年3月から世界中を旅して周り、その時の出来事や感じた事を極力リアルタイムで綴っています。 なので今後どうなるかは私にもわかりません。 その様子を楽しんで頂けましたら幸いです。 サポートは旅の活動費にありがたく使用させて頂きます。 もし良ければ、宜しくお願いいたします。