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流れのままに

2023/7/1〜20237/2

そんなわけで。
特に用も無くバンコクのフアランポーン駅に着いてしまった。

一泊しか予約が取れず、かといって最早ここに長居する理由も無い。

時刻20:00。

せめて少しでも街を見て周ろうと、近くにあるらしい中華街に向かう。

初めて来た中華街

と思ったが、17年ほど前に
ニューヨークで行った事を後に思い出す
当然(?)中国人が多く、とても賑やか

例えば日本人街なる場所が海外にあったとして
そこに日本人は集うのだろうか
そのあたりの違いも知りたいところだ

最近までタイ国鉄・主要路線の起点だったこの駅と周辺も、中華街の他はどこか寂し気で、いかにも役目を終えた街という印象だ。

ただ、こういった場末の雰囲気は嫌いじゃない。
むしろ記憶に残るのは、案外こんな場所だったりするものだ。

無駄骨と言わず、寄り道で知れて良かったとしよう。



翌日。
時刻12:00、チェックアウト。

今度こそマレーシア行きの列車があるバンスー駅に向かう為、再びフアランポーン駅に。


構内の路線図を見て両駅が繋がっているのは確認済みなので、チケット売り場へ歩いていると、アンケート調査のような紙を持った私服姿の女性に声を掛けられる。

「どこに行くんですか?」

「バンスー駅に行こうと思っています」

「それなら目の前のバスに乗ってください。すぐに発車してバンスー駅まで行きます。鉄道だと14:00まで列車が来ません」

「いくらですか?」



「無料です」



「えっ、本当に?」


「はい、今すぐ乗ってください」





はたして、いきなり鉄道職員にも見えない人に「無料だからすぐ乗って」と言われて「ラッキー、ありがとう」となるだろうか。


ただ私は、昨日のタクシー運転手とのやり取りがずっと引っ掛かっていた。
なので疑わず、素直に乗ることにした。


結果的にそのバスは
本当にバンスー駅まで無料で乗せてくれた
何故なのかはわからない
フアランポーン駅からの機能移転に際する
援助措置なのだろうか
国鉄なので、それもあり得る話かもしれない


とにかく、バンスー駅に着いたわけだが、またマレーシアに行く気持ちにはなっていない。

居心地の良く、宿のコスパが高いバンコクまたは3度目のチェンマイで過ごすか。
しかし、とはいえ食費含め、滞在費は嵩む。

どうせなら知らない国、街に行きたいとも思う。



とりあえず
マレーシア行きの時刻だけ確認しておこう


インフォメーションで聞くと、なんと15時台に一本あるという。
寝台列車なので、てっきり夜からなのかと思っていたが、2時間後…。
料金も比較的使い勝手の良い席が4000円以下…。


吸い込まれる様にしてチケットを買ってしまった。


かくして、これまでに無い程フワッと次の国に行く事が決まったのである。

駅構内の売店で買った
フライドチキン弁当
乗車待ちの列に並ぶ
ムスリム女性特有のヒジャブ(頭髪を隠すスカーフ)
を着用した人達も
マレーシアは人口の約6割がイスラム教徒らしい
タイではお坊さんも優先対象になるようだ
見にくいが、看板の右上に表されている
タイのノーンカーイ→バンコクも寝台列車だったが
越境する国際寝台列車は初
「世界の車窓から」好きとしては
高鳴りと浪漫を感じずにはいられない


列車内では思った以上にムスリム女性を見かける。
今までは仏教文化圏だったが、いよいよこれからは別の世界という雰囲気だ。

そうかと思えば、タイ人も多い。
荷物の量を見るに、全ての乗客が国境を越えるわけでは無さそうだ。

頬杖をつきながら、不満気にじっと窓の外を眺め続ける女性。

人目を憚らず、小さな子供を幸せそうにあやす父親。

ラップトップを取り出し、真剣な顔つきで作業する日本人もいれば、バックパックが大き過ぎて荷物スペースに収まらずバタバタする欧米人達も。

列車にしか出せないこの情緒は何なんでしょうね
18:00頃になると車両スタッフが来て
座席を寝台仕様に変えてくれる

2段ベッド式だが
窓から景色が見える下段を選んだ
19:00過ぎにはこの暗さ
乗客はカーテンを閉め、静かに

「ガタンゴトン、ガタンゴトン」
一定に響く音だけが列車を覆う


本当は日本から持参した本を読みつつ、夜窓の先から時折覗く光や乗客の人間模様をもっと楽しみたかった。

しかし想像以上に快適な寝台席と、心地良い音のリズムが眠気を誘い、20:00にはシーツに包まり、そのまま寝てしまった。

2023年3月から世界中を旅して周り、その時の出来事や感じた事を極力リアルタイムで綴っています。 なので今後どうなるかは私にもわかりません。 その様子を楽しんで頂けましたら幸いです。 サポートは旅の活動費にありがたく使用させて頂きます。 もし良ければ、宜しくお願いいたします。