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運動失調は小脳病変以外でも生じるのか?②~血管領域の確認~

こんにちは、URA太郎です。

前回は運動失調が生じる部位について論文を参考に記事を書かせていただきました。

実際に障害部位と運動失調の各症状について記載している論文の内容をシェアさせていただく前に、運動失調が生じる、小脳、脳幹、視床の血管領域についてまずは確認していきたいと思います。

前回の記事では、脳卒中後の運動失調は脳幹、視床、小脳にて生じるということでした。論文によってはこれらの障害部位を血管領域としてまとめ、研究の対象者として記載している論文が多いです。

 表現として、【椎骨脳底動脈領域】・【後方循環】・【テント下脳卒中、病変】などがあります。これらは、おもには【椎骨動脈(VA)】・【脳底動脈(BA)】とそこから分岐する左右の上【上小脳動脈(SCA)】、【前下小脳動脈(AICA)】、【後下小脳動脈(PICA)】を指しており、小脳、脳幹、視床(後大脳動脈)に分布する動脈となっています。

【椎骨動脈(VA)】はPICAに分岐した後に延髄、橋移行部レベルで左右が合流してBAを形成します。また、VAからは、前脊髄動脈や後脊髄動脈が分岐し、それぞれ、延髄の栄養血管となります。
【後下小脳動脈(PICA)】は延髄、中小脳脚レベル、橋上部レベルで延髄、小脳の栄養血管となります。
【脳底動脈(BA)】はさらに上行することで、左右の後大脳動脈に分かれます。また、脳幹への穿通枝を出すと共に、AICAやSCAを分岐します。
【前下小脳動脈(AICA)】はBAの近位から分岐し、中小脳脚および小脳前下面の分布と上下半月小葉へと分岐します。
【上小脳動脈(SCA)】はBA末端部より起始し、小脳半球前面、上面に分布します。

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脳血管障害としては、【後下小脳動脈(PICA)】の方がSCAと比べて変異、破綻が多いといわれています。小脳梗塞などの限局した病変であれば、血管支配領域の障害となるため小脳の中でもどの部位が障害されるかというイメージが一致していると臨床症状との整合性が付きやすいのではないかと思います。

また、小脳だけでなく脳幹との連絡部位も異なるためひとえに、【椎骨脳底動脈領域の脳卒中】と表現する際にも運動失調以外の症状が出る可能性も十分にありますし、運度失調が主症状となる対象者の方もいるかと思います。
脳画像も確認しながら、対象者の現象を臨床推論していくことが必要かと思います。

今回もご覧いただきありがとうございました。

URA太郎は毎週土曜日にupしております。ぜひまたご覧ください。

それでは、よい週末を。

参考・引用文献
水澤英洋(編集):小脳の最新知見-基礎研究と臨床の最前線(小脳の血管解剖と血管分布 13-17).医歯薬出版株式会社

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