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カンヌライオンズ2023 速報 - デジタルクラフト、フィルムクラフト部門

2023年6月19日~23日にかけて受賞作品が発表されるカンヌライオンズ2023。昨年に引き続き、各部門のグランプリ受賞作品について、速報的にまとめていきます。

2日目は
・デザイン
・デジタルクラフト
・フィルムクラフト
・インダストリークラフト
・エンターテインメント
・エンターテインメントforゲーミング
・エンターテインメントforミュージック
・エンターテインメントforスポーツ

の8部門の受賞作品が発表されました。

この記事では
・デジタルクラフト
・フィルムクラフト
のグランプリを簡単にまとめます。

デジタルクラフト部門グランプリ
NIKE「NEVER DONE EVOLVING FEAT SERENA」

デジタルクラフト部門でグランプリを受賞したのはNIKEによる機械学習を活用した試み「NEVER DONE EVOLVING FEAT SERENA」です。

この施策は、20年以上に渡り女子テニス界のトッププレーヤーとして君臨し、2022年8月9日に引退したセリーナ・ウィリアムズの進化を研究するというもの。AIに各時代のセリーナの試合映像を学習させることで、進化していくプレイスタイル(決定力、ショット選択、反応性、回復力、敏捷性)をモデル化しました。そして、スタンフォード大学が開発したテニスの試合をリアルに合成する技術Vid2Playerによって、はじめてグランドスラムを成し遂げた17歳のセレーナと23回目のグランドスラムを成し遂げた35歳のセレーナによるバーチャルマッチを実現しました。

5000試合分のシミュレーションの結果から17歳のころよりも35歳のセレーナの方が優れており、彼女が進化し続けていたということが導き出されました。

また、機械学習によって得られたデータは、NIKEの製品技術向上にも活用されているようです。

フィルムクラフト部門グランプリ
PGLANG「WE CRY TOGETHER - A SHORT FILM」

フィルムクラフト部門では、ラッパーのケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)と俳優のテイラー・ペイジ(Taylour Paige)によるラップ曲「WE CRY TOGETHER」のショートフィルム(MV)がグランプリを受賞しました。

「WE CRY TOGETHER」は男女の口論がリリックとなっており、「リズムの良い口喧嘩がちょうどよくラップのように聴こえる」という構造の特殊なラップ曲。その口喧嘩の内容は開始早々「F●ck you」が連呼され、お互いがお互いの粗を探して、責めて、揚げ足をとり、そして再び「F●ck you」とののしり合う超センシティブな内容。次第に口論はエスカレートし、しまいには「女性が社会で活躍できないのは、あんたみたいな男がいるせいだ!」など、社会的な議論にも発展していきます。(曲、映像共に性的な内容が含まれています。)

ショートフィルムの映像は、リビングで繰り広げられるカップルの口喧嘩が5分42秒に渡ってノーカット長回しで映し出されるというもの。二人のリアルな口論がワンカットで臨場感を持って描かれており、ラストには画面がグッと引いて屋内セットの中で撮影が行われていたことがわかります。
ふたりの声も映像撮影の際のものがそのまま使われており、曲を表現するためのMVではなく「ショートフィルムから生まれたラップ曲」という解釈がちかいかもしれません。

カンヌライオンズ2022でフィルムクラフト部門のグランプリに輝いたドイツのスーパーマーケットチェーンPENNYの「THE WISH」もノーカット風の演出が多用されたムービーとなっていました。必ずしもノーカットが強いわけではないですが、世界的な演出のトレンドはあるのかなと感じました。

その他の部門

2日目に発表された残りの部門
・デザイン
・インダストリークラフト
・エンターテインメント
・エンターテインメントforゲーミング
・エンターテインメントforミュージック
・エンターテインメントforスポーツ

のグランプリについてはこちらをご覧ください。

また、下記のマガジンでは2022年からのカンヌライオンズの各部門のグランプリ受賞事例について、速報的にまとめていますので是非ご覧ください。


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