玉手義朗

エコノミスト 外国為替ディーラーを経て、TBSテレビへ転職。経済部デスクやCS放送キャスターなどを歴任。著書に「円相場の内幕」(集英社)、「経済入門」(ダイヤモンド社)、「あの天才がなぜ転落」、「大恐慌の勝者たち」(日経BP)など

玉手義朗

エコノミスト 外国為替ディーラーを経て、TBSテレビへ転職。経済部デスクやCS放送キャスターなどを歴任。著書に「円相場の内幕」(集英社)、「経済入門」(ダイヤモンド社)、「あの天才がなぜ転落」、「大恐慌の勝者たち」(日経BP)など

マガジン

  • 残念な投資家たち~私はこうして大損しました

    このマガジンは、株式や不動産などの投資に失敗して、莫大な損失を被り、どん底にたたき落とされた人たちのストーリーです。彼らは何を見誤り、どのようなプロセスを経て、地獄に落ちていったのか。彼らの失敗の足跡を辿りながら、投資で大損しないための秘訣を探ってゆきます。

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「競争」こそ発展の原動力~こんな所にレース場があった ②

明治新政府が競馬を推奨した理由  1870(明治3)年、日本人の手による西洋式の競馬が始まった。「招魂社競馬」である。東京・九段の招魂社(後の靖国神社)の境内に造られた競馬場が舞台だった。  競馬場の様子を描いた浮世絵から、大変な賑わいであったことが分かる。招魂社競馬に継ぐ形で、皇居の吹上御苑や、現在は早稲田大学理工学部などがある新宿区大久保付近にあった陸軍戸山学校内の戸山競馬、さらには現在のNEC本社ビルが建つ港区・芝付近に三田育種馬場競馬が造られた。  そして1884

    • 残念な投資家たち ⑧ あっけなく消えた虎大尽~山本唯三郎

      2016年2月、韓国の市民団体が学校法人同志社を訪問し、保有しているチョウセントラの剥製を返還するように求めてきた。 日本の植民地時代に、日本からやってきた「征虎隊」が仕留めたトラだというのだ。 征虎隊を率いていたのが、山本唯三郎(たださぶろう)だった。 立派なひげを生やし、獲物を前にして自慢げな表情の唯三郎。 船舶事業で大成功を収めた「船成金」のひとりだった。 船成金の誕生 1873(明治6)年、岡山県で生まれた山本唯三郎は、同志社や札幌農学校(現北海道大学)で学ん

      • 「ガード利用限度額引き上げ」に四苦八苦~デフォルト危機のアメリカ

        カードが使えなくなるアメリカ連邦政府 アメリカ国債が、デフォルトの危機に陥っている。 連邦政府の債務が上限に到達していて、国債の償還財源が捻出できないというのだ。 この問題を考えていると、苦い思い出が蘇ってきた。 社会人生活を始めて間もない頃、まだまだ給料が少なく、クレジットカードを多用することでしのいでいた。しかし、お金があるわけではなく、カードの決済をするために、カードローンで補って急場をしのぐという、自転車操業状態となってしまったのだ。 そして、ついにはカードが利用

        • 取り付けは、もう走らない。銀行を瞬殺するデジタル・バンク・ラン。

             取り付けの恐怖~信用金庫を潰しかけた女子高生の一言  取り付けは、銀行経営者が最も恐れるもののひとつだ。噂やデマ、小さなニュースなどが突如として不安心理の連鎖を生み、預金の大量流出を引き起こして、銀行を倒産の縁に追い詰める。  その一例として広く知られているのが、「豊川信用金庫事件」だ。    1973年12月、愛知県の豊川信用金庫に、「倒産する」という噂が流れ、大量の預金が流出する事態に陥った。  「5000人、デマに踊る」(朝日新聞)  「デマに踊らされ信金、取

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        「競争」こそ発展の原動力~こんな所にレース場があった ②

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        • 取り付けは、もう走らない。銀行を瞬殺するデジタル・バンク・ラン。

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        • 残念な投資家たち~私はこうして大損しました
          8本

        記事

          クレディスイス破綻の余波~駅伝原監督も巻き込まれたAT1債って何?

           青山学院大学の駅伝部監督、原晋さんが「クレディスイスで大損した」と嘆いてる動画を見た。  原さんはクレディスイスの「AT1債」を、証券会社に勧められるままに購入した。ところが、今回の経営危機に伴って、その債券が紙くずになってしまったというのである。「サラリーマンの年収の数倍」を失ったという原さん、さすがに元気がなかった。  原さんは駅伝一筋で、投資とかにのめり込んでいる感じはしない。ご本人も証券会社の担当者に、「ローリスク・ローリターンでいい。紙きれになることだけは、避けて

          クレディスイス破綻の余波~駅伝原監督も巻き込まれたAT1債って何?

          残念な投資家列伝~私はこれで大損しました ⑦ 世紀の相場師ジェシー・リバモア

          このエッセイは投資に失敗して、大損してしまった人々の記録です。 彼らは何を間違え、どんな末路を辿ったのか・・・。 彼らの「失敗の本質」から、成功への道筋を探ります。 あっけなく散った「世紀の相場師」  ジェシー・リバモア(Jesse Livermore)は「世紀の相場師」として、ウォール街にその名をとどろかせた大物だ。 「黄金の20年代」と呼ばれた1920年代のアメリカでは、株式市場も活況を呈し、リバモアもその波に乗ってり、莫大な資産を築き上げた。  しかし、リバモアが真

          残念な投資家列伝~私はこれで大損しました ⑦ 世紀の相場師ジェシー・リバモア

          残念な投資家列伝~私はこれで大損しました ⑥ 義侠の相場師 岩本栄之助

          このエッセイは投資に失敗して、大損してしまった人々の記録です。 彼らは何を間違え、どんな末路を辿ったのか・・・。 彼らの「失敗の本質」から、成功への道筋を探ります。 大建築の生みの親  大阪の中心部、中之島に建つ「大阪市中央公会堂」。堂々としたレンガ造りの建物は1918年(大正7年)年11月の完成。国の重要文化財にも指定され、大阪のランドマークの一つとなっている。  威厳を放つこの建物は、ある投資家の寄付によって建てられた。その名前は岩本栄之助。株式市場で名を馳せた大投資

          残念な投資家列伝~私はこれで大損しました ⑥ 義侠の相場師 岩本栄之助

          残念な投資家たち~私はこれで大損しました ⑤元祖成金は歩に戻った

          このエッセイは投資に失敗して、大損してしまった人々の記録です。 彼らは何を間違え、どんな末路を辿ったのか・・・。 彼らの「失敗の本質」から、成功への道筋を探ります。 鈴木久五郎~成金と呼ばれた最初の男 その男はカネを持て余していた。株式投資で大成功し、30歳で莫大な資産を築き上げた。その額は現在の貨幣価値で、500億円とも1000億円ともいわれている。  しかし、使い道が分からない。現代でも、彗星のように大金持ちが現れ、「月に行く!」などと、その散財ぶりに注目が集まる。この

          残念な投資家たち~私はこれで大損しました ⑤元祖成金は歩に戻った

          直前情報!住宅ローン金利と金融政策の関係を知る ② ~固定金利型

          固定金利型の住宅ローン金利を決める長期金利  2023年最初となる金融政策決定会合が、1月17、18日に迫ってきました。前回は住宅ローンの変動金利型について、日銀の金融政策との関係を解説しました。  変動金利型の住宅ローンという商品の仕入れ値は、日銀の政策金利を基準にした短期金利で決まります。  これに対して、固定金利型の住宅ローン金利の決まり方は少々複雑です。固定金利型の住宅ローン金利の仕入れ値が長期金利です。こちらも日銀が操作しようとしているのですが、短期金利のように、

          直前情報!住宅ローン金利と金融政策の関係を知る ② ~固定金利型

          直前情報!住宅ローン金利と金融政策の関係を知る①~変動金利編

          迫ってきた日銀の金融政策決定会合  2023年最初となる金融政策決定会合が1月17,18日に迫ってきました。 前回の金融政策決定会合では、金融緩和政策の修正?とも受け取られる決定が行われました。  これを受けて「住宅ローン金利はどうなるの?」という疑問や不安が、一斉に巻き起こりました。  そこで、日銀の金融政策と住宅ローン金利の関係を、基本から解説します。これを読んでおけば、金融政策決定会合の結論を即座に読み解き、対応を考えることができるようになります。 住宅ローン金利は

          直前情報!住宅ローン金利と金融政策の関係を知る①~変動金利編

          「元競馬場」の謎~こんな所にレース場があった ①

          かつて、ここに競馬場があった  東京の幹線道路の一つである目黒通りに、「元競馬場」という場所がある。目黒区下目黒、現在は商店や住宅が密集しているこの地には、その名の通りかつて競馬場があったのだ。「目黒競馬場」である。  目黒競馬場は、1907(明治40)年に開業した。1周1マイル、敷地面積約6万5000坪(21万㎡)という本格的なもの。バス停付近には記念碑も設置されているが、目を留める人はほとんどいない。  こんな場所に、本当に競馬場があったのだろうか?  付近を歩き始

          「元競馬場」の謎~こんな所にレース場があった ①

          投資って何?で、チコちゃんを叱る ②

          「投資って何?で、チコちゃんを叱る」(12月6日投稿)の続編です。 「チコちゃんに叱られる」(12月2日放送)での投資についての解説がこの番組らしからぬものであったことから、私なりのスタイルで解説を試みました。   ポイントは「投資はお金の変身!」でした。お金が仮面ライダーのように、株式や債券、不動産などに変身し、利益を得ようと奮闘する。投資を読み解くとこうなります。今回は投資と老後資金の確保について、深掘りしてみましょう。 老後資金2000万円問題  番組では政府が投資

          投資って何?で、チコちゃんを叱る ②

          「利上げ?!」~黒田日銀のサプライズを分かりやすく解説します

          株価は急落、為替相場は猛烈な円高!  市場関係者は、12月20日の日銀発表に驚愕した。黒田東彦総裁の下、10年近く続けられてきた「大規模な金融緩和策」が、修正されるというのだから当然だ。 「日本銀行は緩和的な金融環境を維持しつつ、長短金利操作の運用を一部見直すことを決定した。」とした日銀。具体的には、長期金利の変動幅を従来の「±0.25%程度」から、「±0.5%程度」に変更するという。 わかりにくい表現だ。これを読み解くと、金融緩和政策は維持するが、「ちょっとだけ見直します

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          残念な投資家たち~私はこれで大損しました ④ 消えた靴磨きの少年の夢

          ウォールストリート・ジャーナルを読みながら・・  1929年夏、その少年はニューヨークの証券取引所の前にいた。名前はパット・ボローニャ、ウォール街で働く人々を相手に、靴磨きをすることで生計を立てていた。  パット少年は客待ちをしている間、ウォールストリート・ジャーナルに目を通していた。靴磨きで得たわずかばかりのお金を株式に投資していたパット少年だったが、その額は瞬く間に膨れ上がっていた。取引所にやってくる証券関係者の靴を磨いている間に、さりげなく「特別な情報」を聞きつけては

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          残念な投資家たち~私はこれで大損しました ③ ノーベル賞受賞者の傲慢

          ノーベル経済学賞受賞者  マイロン・ショールズとロバート・マートン  1997年のノーベル経済学賞は、マイロン・ショールズとロバート・マートンの2人に授けられた。受賞理由は金融派生商品(デリバティブ)の価格決定における新手法「ブラック・ショールズ方程式」の開発と理論的証明。(方程式に名を残すフィッシャー・ブラックは、1995年に死去していたため受賞対象とはならず)  高度な数学とコンピュータを駆使し、投資の世界に新たな地平線を切り開いたとショールズとマートン。しかし、現実は

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          防衛費増額の財源を考える~「戦時国債」という選択肢

           防衛費増額を巡って、その財源確保が大きな議論を呼んでいる。政府・与党が法人税などの増税を軸に検討を進めると、「賃上げや雇用に悪影響が出る」などと異論が噴出、「たばこ税のアップで」、「復興特別税の一部を付け替えられないのか」との意見も出るなど、調整は難航している。  こうした中、「赤字国債を増発すればよい」という、お定まりの意見も出てきているのだ。 赤字国債は法律違反  当たり前になっている赤字国債だが、改めて指摘するまでもなく、本来は「法律違反」だ。  国債は国が借金を

          防衛費増額の財源を考える~「戦時国債」という選択肢