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星と宇宙に税金は必要か?

「宇宙・星をはじめとする自然科学に興味を持つことは良いことだ」みんなそう言ってくれる。ブラックホールのような発見が出てきたら、みんなワクワクするし、称賛する。

でも、多額の税金が投入されていると知ると「地球の外を見てる場合?もっと中の問題があるでしょう?そんなのにお金かけないで!」という声が上がる。

ハワイのマウケアナ山頂に建設予定のTMT望遠鏡。ハワイの先住民にとっての聖地に建設するので、反対派が強く反発している。ただ、先住民にとっての聖地は天文学者にとっても聖地と言っても良いぐらい観測のために適した場所。北半球にこれ以上の場所はないみたい。

だからTMT推進室も丁寧に時間をかけて対話を続けていると聞いています。難しい問題だから、事の行方は静観しています。でも個人的にはTMTが見せてくれる新たな宇宙を見たいなあって思う。

とはいえ、日本の方にもTMT反対派はいるわけで。「先住民にとっての聖地を奪うな!こんなものに日本の税金を無駄遣いして良いのか?」と言う。

ここは切り分けて考えたい。

先住民の方との価値観の相違による問題は、私が語ることではないので置いておきます。ただ、税金投入に関しては日本人として考えておきたいなと思う。

役に立たないけど重要すぎる基礎科学

科学の研究には「基礎研究」「応用研究」「開発研究」の3つがあって、例えば基礎研究をする学部といえば理学部、応用研究だと薬学部みたいな感じと言えばイメージしやすいだろうか。(あくまでイメージ)

星や宇宙を知るという天文学は自然科学であり、研究分野でいうと基礎研究にあたる。

応用や開発は市場に出て経済的な価値を生み出せる。分かりやすく役立つ研究だと思う。
それに比べると基礎研究は「お役立ち」が見えない。直接的には役に立たないのだ。

ブラックホールが見つかったって、宇宙の構造が昔とまるっと変わっていたって実生活に何の影響もない。

でも、私たちは学校で基礎があっての応用だよって教わった。

「こんなん勉強して将来何の役にたつねん?」ってブツブツ言いながら、教科書のないようを勉強していた。でも、結果としてその基礎知識があるからこそ、今の仕事や趣味が成り立っている。基礎は大事だ。

基礎も出来てないのに応用問題を解いていたって、どこかで歪みが出てきて破綻する。基礎って建物でいうと土台で、そこがおろそかな建物はやがて崩れてしまう。

基礎研究を疎かにすれば、実生活に役立つ応用研究も危ういものになる日が必ずくる。それは日本の科学技術の衰退を意味するのかもしれない。科学技術が衰退したら、いくらSDGsを唱えたって達成できない課題がいっぱい出てくる。

ノーベル賞を受賞された先生方がこぞって基礎研究の重要性を訴えるのは、科学技術が衰退してしまう危惧があるからかなと思う。

そして基礎研究は費用対効果が望めないからこそ、国の支援が必要な分野だ。

そんな基礎研究を「役に立たない」からと安易に切り捨ててしまうのは、今の子供たちの未来に影響が出てくるんじゃないかと心配になる。

ワクワクした未来がなくなるよなぁ‥‥

子供の好奇心は基礎科学の分野から始まる

子供たちに宇宙や星を伝える活動をしていて思うのは、子供がまず最初にワクワクするのは基礎科学の分野なんじゃないかな?って事。

最新の望遠鏡から見つかる宇宙の壮大な姿にワクワクする。天文学の進歩は、太陽系の外の世界に宇宙人の住めそうな惑星をいくつも見つけ、宇宙の地図を描いてゆく。ブラックホールを見つけたり、美しい星雲の姿を撮影してくれる。

天文学という基礎科学は、壮大な好奇心の入り口だと思っている。たくさんの発見を見たいし、教科書が書き変わっていく様を見たい。

私が子供のころに読んでいた宇宙図鑑と去年買った宇宙図鑑の情報量の差はあまりにも大きい。それは、地道に研究してきた天文学者たちの成果だし、もちろんその研究のために使われた研究費も税金で賄われている部分も多かっただろう。

それらを入り口に科学への興味を持ち、大人になって研究・仕事にしていった人もきっと多いはずで。そういう人達が科学技術を支えていくんだとも思うのです。

基礎科学はすべての科学の基盤であるとともに、子供たちの未来の基盤を作っているのかもしれないと感じることもある。

TMT望遠鏡は国際プロジェクト。世界中の子供たちが、TMTの成果にワクワクする日が来ると思う。そしてそんな子供たちが科学を学び、未来を作る。

なんか明るい未来だなって思う。

こういうのを未来への投資なんだって思ってる。だから基礎研究のために税金投入されることは必要だと思う。(ちゃんと精査は必要やで)

そして私は子供たちに「宇宙や星はここまで分かってて凄いんだよ」っていう入り口を見せれる役でありたいなぁと思っている。


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