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#エッセイ

きみはごめんを言わせてくれない

きみはごめんを言わせてくれない

2人きりで会う約束だったのに段取りミスって3人になっちゃった時とか、お泊まりができなくなっちゃった時とか、きみはよくだまって帰った。

ちょっとコンビニ行って帰ってきたら部屋がもぬけの殻だったりして、ごめんも埋め合わせするねも言わせてくれない。

あとからLINEで「さっきはごめん」って送るんだけど、きみは絶対スルーするよね。
そして何事もなかったように次の会話をはじめてしまう。

でも、わたしは

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オールオーケーになるよ、春だし

オールオーケーになるよ、春だし

あの日の横着や、積み重ねた怠惰によって錆びついてしまっている自分の可動域というものが誰しもあって、他の人たちが苦しみながら何かを獲得していた時期に、しずかに座っていることしかできないような時間が必然的に大きな穴をつくる。

たとえば自転車の乗り方や、国語辞典の引き方、身近な植物や山、道の名前を覚えること。それに、ふたり分のご飯の作り方とか。
人との健康的な距離の保ち方、あるいは、人とまっすぐ真剣に

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どしゃ降りの朝に鳩がいた

どしゃ降りの朝に鳩がいた

今朝、とてもはやい時間に雨の中を歩いていたら鳩がいた。ずぶ濡れの鳩だった。
羽毛はもはや水を弾いてはいなくて、大量の水分を含んだ羽が癖毛のように膨らんで重そうだった。それでも鳩はずっと同じ辺りをむくむくと歩いていた。

激しい雨が降った時、きっと鳥たちには休める場所があって、だから雨の日に鳥を見かけることは少ないわけだが、この子は一体どうしてしまったんだろうと思った。

わざわざ雨の降り注ぐ道端に

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