29歳ファザコン、実家を出るまであと二日
父と離れることが辛すぎて、昨日泣きじゃくって鼻がつまりとても寝苦しい夜だった。
涙としゃっくりとあくびと鼻づまりで忙しかったが眠気は全てに勝るようで、気がついたら朝のアラームで目が覚めた。
あと今日と、明日。
この二日が実家生活の最後になる。
私は昔からパパっ子だった。
母は母の機嫌によって母だったり母じゃなかったりしたが、父はいつでも父だった。
父が大事にしているのは、矢沢永吉、バイク、猫、高倉健。
頑固で素直さに欠けているが、腕の良い職人で信頼が厚い。何より底抜けに優しい、優しすぎる。
私は、苦手とする母がいる実家に居心地の悪さを感じつつ、この歳になるまで家を出なかった。
それは紛れもなくそんな父のおかげというか、私が甘えすぎたからか。
私は父を健康に長生きさせようと、肉や野菜をたっぷり使い晩ごはんを作る。
本当はお弁当も作ってあげたいが母がおもしろくなさそうにする。(母は父の前では女ぶる。私を敵視する。)
心配だ。心配すぎる。
私が晩ごはんを作らないと栄養が偏るのではないか。
私が出ていって急に杖をつくようになったとか、手が震えるとか、急に老いが加速しないだろうか。
元はといえば母が日曜日仕事が休みになると言い出したのがきっかけだった。
私も日曜日が休みで、母が一日丸々いないその日は心置きなく羽を伸ばすことのできる貴重な一日だ。
それがなくなると思ったら吐き気のようなものを催し、アパートをさっさと決め、今日に至る。
はじめての一人暮らしだ。
私は父で自分のバランスを保っている。
外で猫を被るために父の前で虎をむき出しにする。
(父に言わせると虎でなくチワワらしいが)
今も涙がにじむ。
ジムでエクササイズバイクをこぎながら何度も涙を拭った。
ラットプルダウンをしても、スミスでローイングをしても涙が何度もにじんだ。
テストステロンは涙を止めないのか。
続く
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